少年漫画ならではのバトルや仲間との友情など様々な王道展開を描きながらも、科学についての知識を蓄えることができる本作『Dr.STONE』ですが、本作のように何かを学びながらストーリーを楽しむことができるといった構図の漫画作品は珍しいですよね。同じようなジャンルの作品に料理について学ぶことができる料理漫画というものもありますが、本作は料理の知識を蓄えながら楽しむことができるという、勉強とアクションの両立科学で行なっている点が魅力であると言えるでしょう。特に科学を題材にしたことで、より戦闘描写を描きやすくなったというメリットがあります。料理漫画作品のように、派手なアクションを描けない料理対決に帰着してしまうという弱点を「科学」を題材にすることで見事に改善した作品なのですね。今回はそんな、数々の工夫あふれる本作『Dr.STONE』最大の工夫である科学×アクションの組み合わせについてそのメリットを紹介していきたいと思います!
楽しみながら科学を学べる教養漫画作品!
まずは本作の基本的な構成について紹介をしていきたいと思います。本作は突如として人類のほぼ全てが石化してしまった世界から、科学の知識に優れる主人公石神千空が文明を再興させるために奮闘するといった趣旨の内容となっています。
科学×バトル
主な目標は科学の発展ですが、その過程で科学の発展を阻止しようとする組織と対峙したり、人類が石化してからの数千年間で発生した新たな種族との戦いも描かれており、科学とバトルの両方楽しむことができる作品となっています。
航海士、鍛治家、格闘家などなど多種多様なキャラが登場
さらに本作では科学の知識に特化した千空の他にも、石化以前の世界での様々なジャンルのエキスパートが登場し、何もない状態からそれぞれの分野のプロが集まったらどのようなことが起きるか?という思考実験を行なっている作品でもあるのです。ストーリーの進行とともにこれらのキャラも増えていくので、この辺りもジャンプの王道に乗っ取っているのがすごいですよね。
ダークファンタジーが増えているからこそ読んでほしい!
昨今ではジャンプ作品であっても過激な描写が多い作品が目立つようになっており、このような作品に注目が集まりやすい状況になっていると思います。そのような状況の中で、本来の子供向け漫画という役割を忘れることなく、真摯に少年漫画としてためになる作品を作っているというのも本作の評価ポイントですよね。
イラストで科学がわかりやすい!
特に本作の科学についての描写は子供でも簡単に理解できる図解となっており、このページを眺めるだけでも十分ためになる作品となっています。子供たちが多く読んでいるジャンプ作品であるからこそ、このようなわかりやすい図解で描く意義があると言えるでしょう。
科学の進歩とともに転用先も増える
さらに科学を描いているからこそ面白く感じられる点もあります。それが「科学は進歩とともに転用先が増える」という点です。自らの体を鍛え次第に戦闘力がインフレしていくバトル漫画と異なり、本作では文明の進歩が目標となっていますので、修行というものがなくトントン描写で進歩していきますし、進歩とともにその技術の転用先も増えるので、あれよあれよのうちに文明が進歩してきます。そのため、非常にテンポのいいストーリーを楽しめるようになっているのです。
実際に理科の授業で扱う範囲も多数!
さらに本作は、誰でも試してみようと思えば簡単にできてしまうようなものも初期では多く登場しています。そのため、学校の理科の授業などでも漫画で読んだ後実際に扱うことができるようなものも多くあるのです。漫画の中で起こったことが実際に自分たちの世界でも学校で再現されるという、現実と漫画の世界が非常にリンクしやすい作品となっているのです。
科学の面白さがわかる
そして何よりも子供たちが科学の面白さである「課題をアイデアで解決していく」という楽しみ方を学ぶことができる点が素晴らしいです。学校で教科書に書いてある内容を暗記するよりも、「なぜ科学を学ぶ意義があるのか?」「もし、この世から科学がなくなるとどうなるのか?」「科学はどのように発展してきたのか?」という点を本作を通して学んでいく方が、楽しんで科学を学ぶことができるといえます。
1から文明を作る面白さ
このように本作は純粋な科学漫画ではなく、少年漫画ならではの読んでいて面白いという要素がしっかりとあるのが素晴らしい点ですよね。特に本作において非常に力が入れられている点が、「一から文明を創る面白さを描く」という点ではないでしょうか?
漫画版マインクラフト
「一から文明を創る面白さを描く」という点ではマインクラフトというゲームも同じように担っているということができますね。マインクラフトのようにゲームとして自分が一から考えて創るというものであれば比較的楽しみやすいのですが、これを読者はただみているだけの漫画作品で面白さを損なうことなく描く必要があるというのが、漫画として描く難しさですよね。
コミカルなキャラクターとわかりやすい図解で解決
このように一から文明を創るという点では漫画として描くときに様々な苦難がありますが、本作ではコミカルなキャラクターを登場させることや、科学に関する説明をなるべく図解を使ってわかりやすくするなどの工夫を凝らして見事に解決しています。
唯一無二の作品
このように本来は漫画で描くことが難しい一から文明を創る面白さを、様々な工夫を凝らして描き切っているからこそ、本作は面白いならず唯一無二の作品であると評価されているのだと思います。他の作品を見てみてもここまで科学についてわかりやすくコミカルに描いている作品というのは少ないので、科学好きのみならず漫画好きも注目したい作品となっているのです。
身体能力vs科学という対比のうまさ
そして、本作において科学を面白く描写するためにされている工夫の中でも特に注目したいのが「身体能力vs科学」という対比のうまさです。ここからは本作のバトル漫画としての秀逸さを生み出している、本作上での「身体能力vs科学」という構図について紹介をしていきたいと思います。
究極の身体能力vs究極の科学知識
本作では究極の身体能力を有している獅子王司率いる司帝国と究極の科学知識を有している石神千空率いる科学帝国の抗争が描かれています。このふたグループは現代でいうと理系と体育会系であり、現代社会でもある対立構造となっているのです。そのため、読者としても気持ちをどちらかの勢力に置くことができ、非常に感情移入しやすいものとなっているのです。
究極の身体能力にも知能が必要
さらに面白いのが司帝国側が究極の脳筋組織ではないということです。彼らは身体能力の高さという自らの強みを把握しながらも頭脳戦にも長けているのです。一流のスポーツ選手は頭がいいという話を聞いたことがある読者の方も多いと思いますが、本作でも身体能力が高いキャラほど頭のいいキャラクターとなっているのです。
勝つのは身体能力か?科学知識か?
このように本作では科学知識を楽しく学べるという面白さの他にも、身体能力と科学知識のどちらが文明が0の状況下で優位なのかというバトル漫画としての面白さがあるのです。
多様な人材が必要な科学社会
また本作の後半ではかつて敵対していた身体能力がわのキャラクターも千空らと協力をするようになります。ここも非常に面白い点で、本作では科学の発展では身体能力が優れたキャラクターも必要不可欠であるということを描いているのです。
必要な材料の調達や組み立てなど
どんなに理系が素晴らしい図面を描いたとしてもそれを組み立てる力のある人物がいなければ、それを実現することはできませんし、組み立てのための貴重な資源を集める力のある人物も必要なのです。
多様性と科学
このように科学の発展のためにはどの分野に特化している人物であっても偏ってしまえば全身ができなくなってしまうのです。現代社会でもそうであるように多様性がなぜ大事なのかという点も教えてくれる作品となっているのです。
社会科の勉強にも
このように本作は科学について学ぶのみならず、例えばたくさんの人が共同生活をするにはどのようなルールが必要なのかという点なども含めて教えてくれているのです。
まとめ
いかがでしたか?今回は本作『Dr.STONE』にて描かれる科学vs身体という対比構造について紹介をしてきました。本作のように科学をテーマとして作品は多くありますが、ここまで少年向けに面白く描いている作品は少ないですよね。アニメ作品も好調な作品ですし、今後も様々な展開が描かれると思いますので、是非とも注目しましょう。