1999年の連載開始から約20年に渡り人気を博し続けるHUNTER×HUNTERですが、数多くある長編の中でも一番評価が高いのは「キメラアント編」で間違いないでしょう。数多くの人気キャラクターの登場やこれまでの規模では考えられなかった壮大な戦闘シーン。そして最後のとんでもないラストの締め、などなどこの「キメラアント編」を語るだけでも、多くの時間がかかってしまいます。今回はそんな「キメラアント編」がいかに面白い長編なのかという事について徹底考察をしていきたいと思います!!
目次
キメラアント編ってどんな話?
まずは基礎知識として「キメラアント編」の大まかなあらすじを紹介したいと思います。
突如見つかる巨大な女王蟻の足
キメラアント編はまず、突如巨大なキメラアントの女王の足が発見されたことから始まります。
これまでとは桁違いの敵!!
見つかったキメラアントの女王の足は、これまで確認されてきたキメラアントのサイズと比べると、信じられないほど大きいものでした。ゴン、キルア、カイトはこのキメラアントの危険性に気づき、カイトがキメラアントに捕まった後もハンター協会に所属する歴戦の猛者達とキメラアントを打ち滅ぼすべく活躍します。
王直属護衛軍
強敵ぞろいのキメラアントたちですが、その中でも王直直属護衛軍のプフ、ピトー、ユピーの3人にゴンやキルアを含むキメラアント討伐隊は苦戦することとなります。
王の誕生
キメラアントにより着実に被害が広がる中、多くの人間を食し、栄養蓄えていた女王からついに、最強の敵と名高いキメラアントの王メルエムが誕生します。果たしてこの圧倒的なパワーを持つ敵に人類は打ち勝つことができるのでしょうか?
主役はキメラアント!?
「キメラアント編」では作者冨樫義博先生の数多くの工夫を垣間見ることができますが、数多くある工夫の中でも最も特出している点は敵役である「キメラアント達」を主役のように描いている点でしょう。
キメラアント側の成長
「キメラアント編」を観ているとよくわかると思うのですが、「キメラアント編」では主人公のゴンやキルアよりも、人間と触れ合うことで成長し、さらなる強敵へと進化し続けるキメラアント達がメインで描かれています。
汚い人間のオンパレード
そして、本来は正義の側でなくてはならない人間側の登場人物は汚い人間が多く、「本当に人間側が正義なのだろうか?」と考えさせられる構図にもなっています。
メルエムの成長
これらの人間側と敵側の立ち位置のねじれ現象を最も顕著に表しているのが、「メルエムの成長」でしょう。コムギと触れ合うことで、王としての風格や良識を身につけていく反面、ハンター協会側の攻撃により、キメラアントとは無関係のコムギが重症を負ってしまうなど、「あれ、やってること逆なんじゃないの?」と思ってしまうような要素となっています。
キメラアントの方が魅力的!?
そして、冨樫義博先生が「キメラアント」のデザインに凝っている点も挙げられます。作中で登場する「キメラアント達」はどれも魅力的なキャラクターばかりですので特段人気が高く、今でも「キメラアント編」が人気な理由の1つでもあります。
数々の人気キャラ達
特にキメラアントたちには、上司にしたい「キメラアントナンバー1」ことメルエムやHUNTER×HUNTER最強ヒロインとも呼ばれるネフェルピトーなど数々の人気キャラクターが存在しています。
キメラアントと心理描写
「キメラアント編」ではハンター協会側のキャラクターよりも、キメラアント側のキャラクターたちの心理描写が描かれており、読者側がキメラアント側に感情移入するように仕組まれています。
果たして悪はどちらなのか?
では、なぜ作者冨樫義博先生はここまで読者に「キメラアント」に感情移入するように仕組んだのでしょうか?
ねじれの構図
当たり前ですが、キメラアントは本来は敵側であり、正義は人間側でなくてはならないのですが、あえてその立ち位置を反対にすることにより、従来の少年漫画では味わえなかった、深いテーマを提示することができるようになったのではないでしょうか?
悪役としてのゴン
そのような思惑もあり、キメラアント編ではゴンは悪役として描かれています。キメラアントとはなんら関係のないコムギの命を脅かす存在として、描かれており、これまでの少年漫画ではありえなかった「悪役としての主人公」として描かれています。
ヒーロメルエムとヒロインコムギ
「キメラアント編」ではこれまでの純粋な主人公ゴンではなく、優しき王メルエムとそのヒロインコムギという構成で描かれています。これまでにはなかった独特のアプローチに多くの読者が驚かされたのではないでしょうか?
「核爆弾」という「少年マンガのタブー」
そして「キメラアント編」で最も衝撃的な要素といえば、それは間違いなく、キメラアントの王メルエムが核爆弾という「少年漫画のタブー」で殺されていることでしょう。
作中最強キャラが通用しない
キメラアントの王メルエムはその圧倒的な、実力差を前に作中でも屈指の実力を誇るネテロをも寄せ付けず。多くの読者に絶望を与えました。
人間の限界
「キメラアント編」ではハンター会屈指の実力を持つ、ネテロであっても「キメラアント」には歯も立たず、人間の単体戦闘力での限界を思い知らされる結果となりました。
冨樫先生の壮絶な疑問提起
しかし、人間がこの世界の生態系の頂点に立ったのは、そもそも、決して単体戦闘力が高かったからではありません。他の生物よりも優れた頭脳を持ち、スイッチひとつ押してしまえば、世界地図を書き換えてしまうこともたやすい兵器を生み出してしまうほどの、「底知れぬ悪意」こそが人類の最大の武器である。という、壮大な問題提起を「週刊少年ジャンプ」で行ってしまったのです!!これが冨樫先生の恐ろしいところであり、他の漫画家では到底できない、唯一無二の彼の構成力でもあると言えます。
バラの毒と放射能障害
作中ではやんわりと「バラの毒」と表現していますが、この「バラの毒」というのはどう考えても「核爆弾による放射能障害」のことです。唯一の被爆国である日本でこのキーワードを使うわけにはいかなかったものの、どうしても伝えたいメッセージが「放射能障害」を使うことでしか表現できなかったという冨樫先生の強い決意が感じられる設定となっています。
「HUNTER×HUNTER」で最も熱いエピソード!!
まだまだ「キメラアント編」のすごい所について語り足りないのですが、そろそろ今回の記事で紹介した「キメラアント編の凄い所」についてまとめていきたいと思います。
構成、描写どれも超一流!!
「キメラアント編」ではいつの間にか主人公サイドとキメラアントサイドの感情移入の対象が入れ替わっているという、とてつもない構成や、異形のモンスター1人1人に人間味を持たせる描写術、そのどれもがHUNTER×HUNTERの長編エピソードと比べても突出していると言えるでしょう。
HUNTER×HUNTERでしか観れない結末!!
そして「小型核爆弾で敵を倒す」というとんでもないラストを行った唯一の長編でもあり、まさに「キメラアント編」でしか見れない唯一無二の、結末であると言えるでしょう。
観て損はない!!
一言で言うと「キメラアント編は絶対に観て損はないから絶対に観ておくべき」です!!HUNTER×HUNTERでしか味わうことのできない、究極のラストを観ることができるだけでも、一読の価値があるエピソードです。
暗黒大陸編も楽しみでしょうがない!!
壮絶な締めくくりを飾った「キメラアント編」ですが、現在は「暗黒大陸編」が進行中です。こちらも「キメラアント編」に負けず劣らず、傑作となること間違いなしですね!!今から暗黒大陸編が楽しみです!!
まとめ
これまで解説してきたように「キメラアント編」が最も熱いエピソードということに、一度HUNTER×HUNTERを観た方なら、間違いなく同意してくださることでしょう。富樫先生の卓越した「構成力」や少年漫画のタブーに恐れずに突っ込んでいく「大胆さ」などなど、多くの神要素が垣間見えるエピソードでもあり、まさにHUNTER×HUNTERで最高のエピソードというにふさわしいものなのではないでしょうか?