「るろうに剣心」といえば、幕末期から文明開花の明治期を主人公の緋村剣心が活躍する時代活劇ですが、果たしてこの緋村剣心が活躍した幕末から明治期というのはどのような時代だったのでしょうか？今回は緋村剣心が活躍したこれらの時代について、簡単に解説していきたいと思います。その作品の時代背景を把握しておくことで、これまで気づかなかった作品テーマや設定に気づくことができるかもしれません。ぜひぜひ日本史が嫌いな人もるろうに剣心のためだと思って読んでいただけると幸いです。
戊辰戦争
作中で過去の緋村抜刀斎らが、血を血で洗う戦いを繰り広げていた戦争は「戊辰戦争」と呼ばれていたものです。幕末期になってから江戸幕府は外国との貿易などを始め、日本の産業は急激な衰退を強いられていました。そのような不満から外国人を排するべきという「攘夷運動」が活発化し、やがてそれが戊辰戦争へと発展することとなります。
薩長同盟と戊辰戦争
戊辰戦争で江戸幕府と戦ったのは薩摩藩と長州藩の連合軍でした。薩摩と長州は薩長同盟の下、江戸幕府を倒すべく江戸幕府に対して戦いを挑んだのです。
数々の維新志士が活躍
この戊辰戦争では、現在の様々なアニメや漫画のキャラクターのモデルとなっている維新志士たちが活躍しました。長州藩では木戸孝允や桂太郎、緋村抜刀斎（るろうに剣心のオリジナル）、薩摩藩では西郷隆盛や大久保利通などの維新志士がいました。
幕府側にも強者が！！
もちろん魅力的なのは薩長同盟側の維新志士だけではありません。るろうに剣心でも登場した新選組など数々の兵たちが幕府側として参戦していました。
なぜ、剣心は京都にいたのか？
実はこれらの戊辰戦争が始まる前から長州藩と幕府は衝突しており、主にこれらの長州藩士による幕府要人への攻撃は京都で行われていました。やはり当時は都があったということもあり、幕末期の京都は幕府要人の暗殺が絶えない街だったのです。だからこそ、緋村抜刀斎は京都で活動していたのですね。
幕府は崩壊
薩長同盟の強固な連携もあり、江戸幕府は戊辰戦争の途中で将軍徳川慶喜が天皇に政権を返還する「大政奉還」を行うことで滅亡しました（戊辰戦争自体は残党軍の抗戦もあり、その後も続いた）。
新たな時代
この戊辰戦争という悲惨な戦争を経て、日本は維新政府という新たな政治体制のもと纏まることとなりました。それでは新しく維新政府になったことによって日本はどのように変化したのでしょうか？またその変化は「るろうに剣心」にどのように描かれているのでしょうか？
文明開化と学問
江戸幕府の崩壊はそれすなわち武家による統治の終了を意味していました。つまりこれまでは武術によって収められていた日本から解き放たれ学問の時代が始まったのです。「四民平等」が発せられ、誰でも勉強すれば自身が望む職業に就くことができるようになりました。
廃れる剣術文化
そのような背景もあり、武士が担っていた剣術文化は明治初頭急激に衰退していくこととなります。作中での神谷道場賑わいの無さには、このような背景があったのです。
失われる日本の技術
急速にこれまでの風習や文化を否定する流れが生まれてしまったため、上記で説明したように剣術文化だけではなく仏教文化など様々なこれまで日本で培われていた文化が失われていくこととなります。作中でも剣心が自らの剣を作る刀匠を探すことに苦労していたことからも、日本の剣術技術の衰退がうかがえますね。
新たな時代の剣術
しかしそのような状況の中でも、剣術を日本の文化として残すべく模索する動きが生まれました。そのような模索の中で「人を殺す術を教えるのではなく、人の心を育てていく事にシフトしていく」という考え方が生まれたのです。この考え方こそが今日の剣道へつながっているのですね。
神谷活心流は剣道の走り！？
このようなことから神谷活心流は現代に続く剣道の思想を明治初頭に既に掲げており、まさに剣道の走り的な存在であったのではないかと推測できます。
新たな領土
さらに明治政府はこれまでは領土でなかった北海道や沖縄を明確に日本の領土としました。このことにより現在の日本の領土が固定化されることとなります。新しく日本に編入された北海道を舞台としたるろうに剣心北海道編も現在進行中ですので、そちらの方でも北海道について調べてみてください。
楽観主義的な高揚
それではこの明治時代というのはどのような時代だったのかさらに詳しく解説していきたいと思います。歴史小説の第一人者司馬遼太郎は「明治の時代を一言で表すとすればそれは楽観主義の時代である」としています。これまでは武士が主体であった日本で、新たに近代国家が生まれ人々が自由に自身の職業を選ぶことができるようになったことによって、明治の日本人には何とも言えない楽観主義的な高揚があった様です。
廃刀令
武士の時代が終わった一つの象徴として「廃刀令」が挙げられるでしょう。これまでの支配階級である武士の象徴でもある刀を所持することを禁止したこの法律は、まさに明治の世の象徴的なものでした。剣心も作中で何度も警官に追い回されていましたね。
赤べこに見る食文化の変化
さらに近代国家となったことによってこれまでは仏教的にタブーであった牛肉を食べるという習慣も許されることとなります。まさに牛鍋こそがこれまでは食べることができなかったもので、文明開花の象徴的な食べ物なのです。
一方で士族は
しかし、大衆からしてみればいいこと尽くしの文明開花でしたが、ひっくり返してみれば、それは士族の没落以外の何ものでもありませんでした。
政府への不満
このように文明開花の裏側で士族の不満はピークに達しており、明治初期は武士による殺傷事件や暗殺が多い物騒な時期でもありました。るろうに剣心でもこのような事件が何度か描かれています。
藩閥政治への不満
士族の不満は文明開花へ向けられたものだけではありませんでした。維新政府の要人たちは戊辰戦争で活躍した薩長土肥の志士達で固められており、大政奉還によって職を失った他の士族たちが活躍する場所は用意されていませんでした。このような自身が政治に参画できないということに対する不満が士族達の中で広まっていったのです。
大久保利通の暗殺
そのような維新政府に対する士族たちの不満はピークに達し、当時の維新政府の権力者であった大久保利通の暗殺（紀尾井坂の変）へと繋がってしまいました。紀尾井坂の変はるろうに剣心でも描かれていましたね。
自由民権運動
さらに、政治に参画できないということに対する士族たちの不満は大久保利通の暗殺だけではなく、日本に議会を作り広く国民の意見を聞くべきであるという自由民権運動にもつながりました。自由民権運動を志す士族はるろうに剣心でも登場していましたね。
その後の日本
それではこの明治という時代の後日本はどのような歴史を歩んでいくのでしょうか？
西南戦争を最後に武士の時代は終わる
明治期ではあちこちで流血事件があったのですが、薩摩の維新志士西郷隆盛によって起こされた西南戦争を最後に、武士の内乱は日本の歴史から消えることとなります。るろうに剣心では西南戦争が起こったのは作中の少し前らしく、剣心が西郷隆盛と西南戦争について言及しているシーンが描かれているのみです。
剣術も剣道の道を歩む
そして柔術を筆頭として、剣術や空手などもそれぞれ柔道・剣道・空手道として殺人術を学ぶものではなく自らの心を鍛えるための手段として定着していくようになります。剣心が戯言として切り捨てながらも、「やがてそのような戯言が真実になることを願う」といった発言が現実のものとなっていくのです。
戦争へ向かう
しかし文明開花によって大衆主体の文化となった事で、日本はさらに戦争する国へとなっていきました。まだまだ「反戦意識」という言葉さえなかった時代人々はさらなる戦争を求めて暴動を起こすということも多々起こるようになってしまったのです。武士が戦争する時代から大衆が戦争をする時代へ、これが幕末から明治の時代の変換なのです。
まとめ
いかがでしたか?今回は「るろうに剣心」の舞台となっている幕末から明治の日本の時代と、それぞれの時代の特色がよく見える、るろうに剣心の様子を説明してきました。ただ純粋に作品を楽しむのもいいものですが、事前に舞台となっている時代について調べてから作品を楽しんでみるのもまた面白いかもしれません。
