現実世界の欧州を彷彿とさせる、幼女戦記の舞台。20世紀初頭の欧州の大戦に照らし合わせてみると、数々の類似点があります。元ネタを知っておくと幼女戦記をより深く理解できるようになるかもしれません。今回はアニメで行われた戦闘を紹介していきます!あくまで筆者の憶測であることを御了承下さい。(ネタバレ有り)
ライン戦線の膠着と魔道大隊は第一次世界対戦のドイツ帝国とフランス共和国の戦い似てる
幼女戦記第1話でも描かれたライン戦線。ターニャがピンポイントで敵を撃破していきますが、現実ではそう上手くいくわけでもなく・・・。 憶測ですが、第1次世界大戦でのドイツ帝国とフランス共和国の国境での塹壕戦を元にしていると考えています。
第一次世界大戦 犠牲者数
(1914年7月28日~1918年11月11日戦闘員及び民間人
総計:約3700万人ドイツ :177万人
オーストリア:120万人
イギリス :91万人
フランス :136万人
ロシア :170万人
イタリア :65万人
セルビア :37万人
アメリカ :13万人 pic.twitter.com/hl4JtloQsN— JS.Kenta (@isokaze1937) November 11, 2017
1914年から戦争終結の1918年までこの戦線は大きな変化がありませんでした。この間に塹壕を突破するために戦車、戦闘機、毒ガスなど様々な新兵器が生まれました。幼女戦記の世界に存在する魔道部隊をもってしても、戦線は膠着状態でした。
協商連合との闘いは第2次世界大戦の冬戦争を彷彿とさせる
幼女戦記2話や中盤でも描かれた北方ノルデンでの戦闘はアニメ12話を通してライン戦線と共に物語の中心でした。アンソンは強敵でしたね。存在Xに蘇生された後はラスボスとなって、ターニャの前に立ちはだかりました。
ネルソン級戦艦「ロドニー」(その2)
第二次世界大戦開戦当時、本艦は本国艦隊および大西洋艦隊に所属。1940年、ノルウェーにてドイツ軍機の攻撃を受けるが、すぐに回復。その後はイギリス~カナダ間の輸送船団の護衛任務に従事した。 pic.twitter.com/O3tma6kEAL— オミーズの辞典 (@ioujimma1945) October 29, 2015
そんな北方ノルデンですが、筆者は第2次世界大戦におけるノルウェー侵攻やフィンランドでの冬戦争を元にしていると考えます。
QF 3インチ 20cwt高射砲(その3)
本砲は改修し、性能向上型のタイプが第二次世界大戦で使われ、潜水艦の備砲や、本土防空任務についた。また、フィンランドに供与された本砲は1941年から1944年かけてソ連との継続戦争で活躍した pic.twitter.com/Iz3rWJPYGk— オミーズの辞典 (@ioujimma1945) January 30, 2016
大西洋進出のために侵攻したドイツ軍とそれを阻止するために上陸したイギリス軍。ですが、現実ではこの戦闘は2か月で終結してしまいます。幼女戦記では協商連合は共和国ほどではないにせよ、脅威でした。そこで、フィンランドでソビエト連邦との間に起きた冬戦争です。
冬戦争
第二次世界大戦中の1939年にソ連がフィンランドに侵攻した戦争。ソ連の侵攻目的はフィンランド湾を制圧し、対ドイツ戦の軍事拠点にするためであった。しかし、圧倒的な劣勢のなかフィンランドは根強く抵抗し、ソ連軍も多大な損害を被った。 pic.twitter.com/uZIEH8WVIl— オミーズの辞典 (@ioujimma1945) May 13, 2015
ソビエト連邦の侵攻に対し、フィンランド軍は抵抗を続け、国を維持することに成功しています。そのような歴史をふまえ、幼女戦記での協商連合との闘いは中立のスウェーデン。
実際に領土内で戦闘の行われたノルウェー。冬戦争でゾビエト連邦に対して善戦をした3ヶ国をミックスした設定になっているのではないかと考えます。
ダキア大公国での帝国軍の勝利は第2次世界大戦でもよく見られた傾向
アニメ5話でダキアとの闘いで圧勝したターニャ率いる大隊。帝国とダキアの格の違いを見せつけられた回でした。
今日は第二次世界大戦が始まった日。ドイツ軍がポーランドに3方向から侵攻。航空機と戦車の空陸一体となった機動戦を展開、それに呼応しソ連も参戦、10月にはドイツ軍とソ連軍が全域を占領。ちなみにこの時はまだ電撃戦ではなく殲滅包囲戦のばず。 pic.twitter.com/W7W07HFFIQ
— Hound (@Hound_7) September 1, 2015
ダキアは時代錯誤の装備と戦術で負けていましたが、それは、第2次世界大戦初期の各国も例外ではありませんでした。ドイツが周辺国を侵攻するなか、ポーランドやフランスは第2次世界大戦で新戦術の電撃戦に敗北しました。
アレーヌ市への砲撃とパルチザン排除はワルシャワ蜂起に似ている
アニメ8話「火の試練」で市外への砲撃がなされました。第1次世界大戦の塹壕戦での前線付近の村や町は瓦礫の山と化しました。
https://t.co/Vismm0fxHS
ワルシャワ蜂起の着色写真がうpされています
ピアットやステンなどのかっこいい鉄砲が写っています pic.twitter.com/Mgy92pyAsD— Southwood (@Southwood_) August 1, 2017
元ネタとして考えられるのは、第1次世界大戦での砲撃で破壊された町や村でしょうか。第2次世界大戦では空襲や市街戦でしょうか。大戦後期のポーランドで起きたワルシャワ蜂起なども考えられます。
幼女戦記に登場する戦略も元ネタがありそう
ここからは幼女戦記で登場した、いろいろな戦術や戦略の元ネタを考察していきます。
目次
大規模後退の敵主力部隊の誘因する戦略の元ネタはフランスのプラン17
幼女戦記9~10話では北部戦線にて帝国は主力部隊を意図的に撤退させ、敵国を誘引させることに成功していました。攻め込んでいたと思っていた共和国が混乱は兵士の言葉に表されます。
俺たちは攻めていたんじゃなかったのか!?
1916年の今日は、第一次世界大戦におけるソンムの戦いが終結した日。連合国軍がドイツ軍への大攻勢として開始し、最終的に両軍合わせて百万人以上の損害を出したが、連合国軍は僅かな土地を獲得したにとどまり、ドイツ軍は後退を最少におさえた。https://t.co/QY78ErF89H pic.twitter.com/Zj2VXxssgN
— OCU世界史同好会 (@OCUWorldHistory) November 18, 2016
この戦術に似ているのが、第1次世界大戦で近いものは初期のフランスのプラン17という作戦です。この作戦はフランス軍がドイツ領土を奪取するというものですが、ドイツ軍の計画的な後退により失敗に終わっています。
ターニャの魔道部隊による敵司令部撃滅はドイツのV1ロケットに似てる
幼女戦記の世界では存在Xの影響か、戦争が進むにつれ、いろいろな技術がすさまじく進歩していきます。ターニャが率いる部隊が搭乗するロケットもその一つです。
おやすみゲルマン
今日はV1ロケット
巡航ミサイルの祖。ジャイロスコープと高度計により方向と高度を設定し先端のプロペラで距離を計算、設定距離まで飛ぶとエンジンを止めて落下する。エンジンはパルスジェットなのでバスバスと音がする。良兵器だったが飛行速度が遅いので戦闘機で撃墜できた pic.twitter.com/0i3vqaTmXL— 苺カステラ提督 (@itigoCastilla) October 13, 2017
これは第2次世界大戦時のドイツが開発したV1ロケットに見えます。実際にV1ロケットはイギリスへと発射されているので、幼女戦記での作戦はこれを考慮しているのではないかと考えます。
解錠作戦は第1次世界大戦でのパッシェンデールの戦いを彷彿とさせる
物語後半の共和国の戦いにて敵右翼をトンネル内に設置した地雷によって壊滅させる解錠作戦。
速報◆26日、ベルギーのパッシェンデールの戦いで、連合軍が3度目の突撃。数メートルの前進と引き換えに、泥の中、1万2000人の兵士を失う。すでに十数万人が死傷。ヘイグ司令官は、感覚が麻痺しているのか、軽微な損害と判断し、攻撃続行。 =百年前新聞社 (1917/10/26) pic.twitter.com/H8oEwO4GUe
— 百年前新聞 (@100nen_) October 26, 2017
塹壕から掘り進めたトンネルから地雷を設置するという方法は第1次世界大戦でのパッシェンデールの戦いで連合軍が行った作戦と思われます。連合軍はドイツ軍陣地の地下に爆薬を仕掛け、爆発させ1万人の兵士が一瞬のうちに壊滅しました。これは、核兵器以外で人間が行った爆破としては最大規模であるとのことです。
回転ドア作戦は第1次世界大戦ドイツに類似する戦略がある
いきなり出てくる機甲戦力がⅢ号戦車って帝国色々とヤバい(白目)
初出の砲はパッと見だと8.8cmKw FlaK?
回転ドア作戦ってシュリーフェンプランの位置逆バージョンなのね。見事に決まってたけど、11話どうなるやら( ˘ω˘ )
原作見てないと先知らんから楽しみにできる(笑) pic.twitter.com/xVMAhhMdpd— ??寝落ちのユグノー?? (@t7s_Huguenot) March 17, 2017
解錠作戦の後に登場した作戦は北部に集中している敵主力部隊を南部から突破した部隊が背後から挟み撃ちするというものでした。これは第1次世界大戦のドイツ帝国に似たような計画があります。シェリーフェンプランです。これは、回転ドア作戦と違って北部から突破して南部の部隊を挟み撃ちにするというものです。回転ドア作戦は逆シェリーフェンプランともいえます。実際は、ベルギーがドイツの予想を上回る抵抗をし、短期間に包囲することができず、フランスに立て直す余裕を作ってしまいました。手こずっている間に帝政ロシアの攻撃の準備が整い、兵力を東西に分ける結果へと繋がります。幼女戦記のように、複数の戦線を抱えることとなってしまいます。この後に御存知の通り、何年にも渡る塹壕戦へと突入していきました。
まとめ
一通りアニメで行われた戦闘をまとめてみましたが、どうだったでしょうか?幼女戦記は色々な初心者から戦史に精通した玄人までが楽しめる軍事ネタが散りばめられていると考えています。詳しい人ならもう知っているとか、それは違うだろというものがあると思いますが、これを機に幼女戦記の元ネタにも興味をもってくれると嬉しいです。