【Dr.STONE】若き者だけで自然と共に生きる、司帝国の歩み

本作「Dr.STONE」は2017年より『週刊少年ジャンプ』にて連載が開始されたSFサバイバル漫画で、原作は稲垣理一郎、作画はBoichiとなっています。2019年7月～12月までアニメ第1期が放送され、2021年1月よりアニメ第2期が放送予定となっています。科学に没頭する主人公の千空は高校でも毎日のように実験を繰り返していました。ある日、千空の友達である大樹は杠をクスノキに呼び出し告白しようとします。その時、突如地球は謎の光に包まれ、人類は全員石化してしまいます。大樹が目を覚ますと、そこは人類の文明が滅亡したストーンワールドでした。そんな世界にただ一人生き残った大樹。その大樹を蘇らせたのは化学を探究する少年千空だったのです。千空と大樹はすべてを失ったこのストーンワールドで全人類を救い出し、0から文明を築くことを決意するのでした。今回は物語の敵である司帝国がどのように創られ、衰退していったのかをご紹介したいと思います。

全てはここから始まった

ライオンに襲われた千空と大樹は、やむを得ず霊長類最強の高校生・獅子王司を復活させます。司のおかげでピンチを乗り越えた千空たち。強く優しい司に大樹は大喜びでしたが、千空は司の圧倒的な武力に危機感を抱いていました。司の本性が明らかになったのは、大樹が貝集めに夢中になっていて、千空と司が二人っきりになった時でした。既得権益を主張する大人を嫌う司は、突然の石化現象は人類を浄化するチャンスだと考えていました。司は千空の科学の力を認めると同時に恐れており、千空を説得し仲間に引き入れようとします。しかし、テクノロジー大好き少年の千空は、科学の力で人類全員を助けると言い、二人の意見は真っ向から対立します。

千空は闘うことを予想していた？！

炭酸カルシウムの重要な使い道は4つと言っていた千空でしたが、司の詮索に違和感を感じた千空は4つ目の使い道を誤魔化しました。4つ目の使い道は「火薬」。この石器時代に火薬を持っていれば戦力で圧倒的アドバンテージを取ることが出来ます。この時すでに千空は司と争う未来を予想していたのです。

それぞれの道へ

司の本性に気付いた千空は、司が奇跡の洞窟に行っているうちに、杠を復活させて逃げ去ろうとします。しかし、その前に司は戻ってきてしまいました。新世界に不必要な人間を殺していく司を止めようと大樹は体を張ります。大樹が助ける為に千空はクロスボウを放ちますが、司はそれを素手で受け止め、大樹に蹴りを入れます。もはや武力で司に勝つ術はありません。攻撃の意思がない大樹の謎の取引に司は戸惑いますが、大樹が倒れたことでその場は引いてくれます。司にとって不必要な人間とは既得権益を主張する大人たちであって、大樹や杠はどちらかといえば救いたい側の人間なのです。こうして千空は司を止める為に近代文明を目指す科学王国を、司は自然と共に生きる既得権益のない司帝国を築いていくことになるのでした。

司帝国にとって最大の敵・千空を討つ

司に恐れ慌てて逃げ出したかのように見せた千空たちでしたが、司は千空が逃げ出すような男ではないことを理解していました。なぜそのようなことをしたのか？それは司との闘いに備えるため。司は千空が炭酸カルシウムの4つ目の使い道を言わなかったことに違和感を覚えていました。科学の武器・火薬を作ろうといている予想した司は急いで千空たちを追いかけます。いくら司でも火薬には太刀打ち出来ないからです。狼煙を目印に千空たちに追いついた司は杠を人質として、千空に復活液のレシピを聞きます。仲間を見捨てることの出来ない千空は、レシピを教えることに。復活液の作り方を知った司には千空を生かしておく理由がありません。千空を生かしておけば必ず科学文明を発展させ、司が嫌っていた近代文明に戻ってしまうからです。出来ることなら千空を殺したくない司は、千空に科学を捨てるように説得します。しかし、千空にとって科学を捨てることは死ぬことと同じです。司は科学を捨てることを拒否した千空を殺してしまうのでした。司が千空を殺した理由は科学の力を持っていたからの一点です。それ以外は千空のことを気に入っていました。出会った時代が違えば二人は友達になれたのかもしれませんね。

朝霧幻に千空の追跡を頼む司帝国

千空を殺し復活液のレシピも手に入れた司は、優秀な人材から復活させ、司帝国の基盤を作り上げていました。大樹が倒れた千空を連れて行ったため、司は千空の亡骸を見ていません。万が一生存していた場合、科学文明は発展し、司帝国の脅威となると考えた司は、マジシャン兼メンタリストの幻を偵察部隊として送り込むのでした。司の失敗は、幻は忠誠心など持ち合わせておらず、自分が生き残るためなら状況次第で平気に裏切るということを理解していなかったことです。

武力による村の制圧

科学王国についた幻は、千空は死んでいて村だけがあったと嘘の報告をしていました。しかし、千空の死体を見ていない幻の報告は司にとって信憑性が高くありませんでした。仮に千空が生きていた場合、いつか村を見つけ科学王国を創ることが予想されます。最悪のシナリオを想定する司は、戦闘員を揃え武力で村を制圧しようとしたのです。この頃にはかなりの人数を復活させており、No.2に氷月、No.3に羽京を置き、司をトップとする帝国の序列が出来上がっています。武力による制圧は失敗に終わりますが、氷月に従うほむらが科学王国の監視役としてしばらく科学王国に残ることになります。

ハイペースで戦力を強化する司帝国

司帝国は優秀な人材の石像を沢山集めており、その石像には復活させる順番を表す番号が書かれていました。クロムたち突撃部隊が司帝国に侵入したときには、幻がいた時からさらに33人以上復活させており、予想しているよりもかなり早いペースで復活させています。マグマは復活させる前に壊せば良いと言いますが、壊す＝殺すであり、実際に自分が手にかけるとなると人間誰しも躊躇してしまうものです。それを平然と行う司はかなりヤバイ存在ということなのです。

内部からの崩壊

科学王国は幻のリリアンモノマネ作戦で大樹たちの監視役ニッキーを味方に引き入れ、それを皮切りに次々と司帝国の人間を引き入れていきます。科学王国が気になっていたNo.3の羽京は、クロムに電池を差し入れたり、司に嘘の報告をしたりと千空が死なないように動いていました。千空と対面した羽京は、誰も死なせないことを条件に科学王国につくことを約束します。こうして司帝国は司の知らないうちに内部から崩壊し始めていました。

千空の作戦を見抜き、誘導する司帝国

千空は必ず戦車でクロムを助けに来ると踏んだ司は、クロムを見つけやすい場所に幽閉し、千空たちを誘導しようとします。この作戦はクロムが自力で脱出したことにより失敗に終わりますが、羽京がクロムに電池を差し入れていなければ、科学王国は全滅していたでしょう。

科学王国VS司帝国、最終局面

仲間の弔いをしていた司は、ケータイの存在に気が付きます。事態を把握した司と氷月は奇跡の洞窟へ。すでに奇跡の洞窟を制圧していた科学王国ですが、二人の到着により一気に戦況はひっくり返ります。たった二人ですが、それほどまでに二人の武力は群を抜いていたのです。千空一人の命と引き換えに全員の安全を保障するという司帝国。以前の千空であればこの取引を受けていたかもしれませんが、今は信頼出来る多くの仲間がいます。パワーチームが時間を稼ぎ、科学チームが窮地を打開する武器を作る作戦に出ました。科学王国がダイナマイトを作り出したことで両陣営は動けなくなり、膠着状態となります。

停戦、そして司帝国の崩壊

膠着状態に持ち込んだ千空は司に取引を求めます。司はこの要求を飲み、停戦という形で科学王国VS司帝国の戦争は終わりを迎えました。司の妹の未来は無事に復活を遂げ、司は千空に感謝します。ところが常々司の命を狙っていた氷月が司を殺そうとします。新たな敵が生まれたことで共闘することになる千空と司。見事な連携で氷月を捕獲しますが、司の負った傷は深く、司を助けるため、千空は司をコールドスリープさせます。司は眠りにつき、司帝国の人間は科学王国に入ることになりました。こうして司帝国は科学王国に吸収される形で崩壊したのです。

若き者だけで自然と共に生きる、司帝国の歩み

いかがだったでしょうか？平気で石像を壊し、武力で制圧しようとする司は恐ろしいですが、それも全て妹を助けられなかった自分や大人への憎しみからだったのです。千空の科学を恐れていた司でしたが、千空の科学によって司は身も心も救われました。目覚めた時には、きっと千空と本当の友達になれるでしょう。