異世界転生系作品の金字塔として人気を博している「リゼロ」ですが、その設定の難解さに舌を巻いているファンも多いのではないでしょうか?今回は、そんな難解なリゼロについて、ありとあらゆる角度からマニアックに語り尽くしていきたいと思います。表現技法に着目してみたり、近代哲学の観点から切り込んでみたり、とにかく色々と盛りだくさんな記事となっていますので、ぜひ一読いただければと思います。
タブーに挑む!!
リゼロが魅力的である最大の要素は、ありとあらゆるタブーに挑んでいることでしょう。通常のアニメーション作品では到底踏み込むことのない、数々の複雑なタブーに対して臆することなく表現しようというその姿勢が我々を惹きつけているのかもしれません。
自殺という究極のタブー!!
リゼロが挑んでいるタブーの中でも最も大きなタブーと言えるのが、主人公スバルの「自殺」という行為でしょう。通常の異世界転生では一度主人公が死んでしまって、転生するという流れはよくみられますが、主人公が自ら進んで自殺をするというストーリー展開を広げる作品は皆無に等しいのではないでしょうか?
なぜ自殺は描きづらいのか?
なぜこれほどまでに「自殺」は他のアニメーションで描かれる事がなかったのでしょうか?その理由の1つとして主人公が率先して自殺を行なってしまうことで自殺という行為そのものの肯定となってしまう可能性があるからです。
作者の熱意!
逆に言ってしまえば「自殺」という行動に対して作者が何らかの意図を絡ませる事がないと作品として描くことができないのです。だからこそリゼロの凄いところはあえて描きづらい「自殺」という行動をスバルに行なわせて、その中で自身の主張を絡めている点でしょう。
極端にした方がわかりやすい
なぜそこまでして作者が「自殺」という行動にこだわったのかということについてはまだ物語が完結していないため何とも言えませんが、1つの要素として極端な表現をしたほうがわかりやすくなるということがあるのではないでしょうか?自殺というかなりショッキングな描写を入れることによって、我々の心により引っかかりやすくすることができるのだと思います。
作者の強い意志
いずれにせよ「死の肯定」というテーマを孕んでしまいかねない自殺描写に対して、臆することなく飛び込む物語構成からは、「なんとしても伝えたいことがある!」という作者の強い意志が感じられます。これらの問題に対してラストでどのような答えを作者が提示してくるのか?今から楽しみですね。
カントの哲学とスバルの苦悩
そして何よりも、スバル同様に多くの読者を悩ませることになるリゼロ界最大のトラウマが「自身が自殺した後の世界では悲惨な光景が続いているのかもしれない」というスバルの懸念です。
「スバルの死後の世界」について考える!!
これはアニメ2期で聖域での試練を通してスバルが感じた懸念なのですが、多くの読者もこのスバルの苦悩にスバルと同じように頭を悩ませたでしょう。しかし、実はこのスバルの苦悩は近代哲学のカントの思想から簡単に解決することができます。ここでは、スバルの悩みを近代哲学の観点から解決するという試みをしてみようと思います。
カントの哲学でスバルの悩みは解決する
一言にカントの哲学と言っても様々なものがあるのですが、その中でもスバルの悩みを解決するものは「コペルニクス的転換」という考え方です。
コペルニクス的転換って?
コペルニクス的転換というのは「我々の世界は世界が先に形成され、その上で人間が認識してその世界を読み取っている」という考え方から「まず我々の認識が存在して、その認識を元として世界が構築される」という考え方に反転させることを言います。
もっとわかりやすく!!
簡単に説明すると、我々は目や耳を通して外の世界を認識しています。外の世界を直接読み取っているわけではありません。だからこそ外の世界について考えても無駄であり、本当に考えるべきは「人間が認識できる程度の世界について考えるべき」であるという考え方です。
コペルニクス的転換はスバルの悩みにどの様に当てはまるのか?
この「コペルニクス的転換」という考え方がどの様にスバルの悩みに当てはまるのか?という話ですが、スバルの悩みは「もしかしたら自分が死んだ後の世界がそのまんま存在していて、エミリアたちが悲しんでるかもしれない!」というものでした。しかしこれを「コペルニクス的転換」の考え方に当てはめると、あくまでスバルが死んだ後の世界はスバルが二度と認識することができない世界ですので、考えても無駄(実質存在しない)ものであると言えます。
スバルの悩みはこれで解決!!
つまり、スバルが認識できる世界ではない時点でスバルが死んだ後の世界というのは証明のしようがないし、仮にあったとしても、スバルの認識している世界の中の話ではないので、その世界は無いものとして扱うべきだということになります。このように考えることができれば、もしかしたらスバルもこの悩みをもっと早くに克服することができたかもしれませんね。以上が「コペルニクス的転換」から考えるスバルの悩みの解決法でした。
レールの引かれたスバルの苦悩
このように、スバルの苦悩というのは近代哲学として遥か昔に答えが提示されているものです。なぜこのように答えが出ている苦悩を作者が引っ張り出してきたのか?ということに関しては様々な理由があると思いますが、1つ大きな理由を上げるとすれば、レールの敷かれた苦悩を提示することによって、我々により深い疑問提起をすることができると考えたからということなのではないでしょうか?
数々の魅力的なキャラクター達
さらに、リゼロの人気の秘訣は作品のテーマだけではありません。数々の魅力的なキャラクターたちが登場することもリゼロが不動の人気を得ていることの大きな秘訣なのではないでしょうか?
マイナスイメージの主人公が引き立てる
特に主人公スバルがあえてヘイトを集めやすい性格をしていることも、作者の工夫であると考えられます。ヘイトを集めやすい主人公を配置することによって、周りのキャラクターたちがより優れた存在のように感じさせることができるようになるのです。多くの人気キャラクターが存在するというリゼロのキャラクター達の影には、したたかな作者の工夫と少しかわいそうな主人公の存在があるのかもしれません。
複雑な心理描写
さらに、これらの人気キャラクターの心理描写も細かく描ききることで、さらにキャラクターに内面的な奥深さを加えているのではないでしょうか?ロズワールとラムの怪しいのだか怪しくないんだかよくわからない関係など、それぞれのキャラクターの交流が複雑に描かれているからこそ、よりキャラクターが魅力的に見えるのかもしれません。
双極ではなく延長線上のキャラクター心理
今回は2nd seasonにピックアップした記事ですので、特に2nd seasonでわかりやすいリゼロの工夫について解説していきたいと思います。通常相反する考え方をする2人がぶつかるというのがアニメの王道の流れなのですが、リゼロでは考え方の方向性は同じだけど、その考え方に費やしてきた時間の違う2人が対立するという面白い構造が用いられているのです。
ロズワールとスバル
この面白い構造は2nd seasonのロズワールとスバルの対立から読み取ることができます。
なり得たかもしれないスバルの姿
見ているときに気づいた方もいるかと思いますが、ロズワールというのは「スバルがなり得るかもしれない一つの姿」なのです。ローズワール自身が「君はいずれ私のようになる」というように発言していることからも、スバルとローズワールのスタンスは、本当に大切なものが1つあって、それをなんとしても守り抜きたいという点で一致しており、決して対立していないことがわかります。
成長とは未来を選択すること
このロズワールとスバルという特殊な対立構造からリゼロのテーマを汲み取ることができます。それは、「成長とは未来を選択すること」ということです。スバルが何度死ぬことになっても、自身の望む未来を選択しなおしてきたように、人間の成長というものは常に選択の連続です。
リゼロのテーマ
その選択によってはロズワールのようになってしまうこともあるという事なのではないでしょうか?ありとあらゆる可能性が存在し、その中から自分の道を選び取る勇気こそリゼロが作品を通して私たちに伝えたいことなのかもしれません。
では、スバルは正しいのか?
しかし、ロズワールの姿が正しくないにしてもスバルの行動も正しいとは限りません。なぜならスバルは今までもこれからも間違い続け、死を繰り返すことが確定しているからです。通常のアニメでは「失敗=死」によって物語が終了してしまいますが、リゼロでは死に戻りという特殊な設定を用いることによって、他のアニメでは表現することができない「主人公は何度も失敗を繰り返す(正しくない方向に進み死ぬ)」という表現ができるのです。
誰も欠けさせないという究極の強欲
「誰かを削ぎ落とさなくてはならない」というロズワールの意思が極端で間違っているものならば、スバルが現在抱えている「誰も欠けさせない」という選択肢も十分に間違っている可能性があります。作中を通して作者がどのような答えを我々に提示してくるのか今から楽しみですね。
キーは仲間たち
いずれにせよ、これらの答えを探すために最も重要な要素はスバルの仲間たちなのではないでしょうか?「スバルの誰も欠けせない」という意思に彼の仲間たちはどのように答えていくのか?しっかりと追ってみる必要がありそうですね。
まとめ
いかがでしたか?今回は他の記事とは少し趣向を変えて様々な角度からリゼロについて考察していきました。異世界転生系作品の金字塔ということもあって、かなり綿密に設定が組まれていることがわかりましたね。リゼロについてはまだまだ語りきれてないところがあると思うので、アニメミルの別記事でも調べてみてくださいね。