憂国のモリアーティはコナン・ドイル原作の伝説的な推理小説『シャーロック・ホームズ』シリーズのパスティーシュ（二次創作）であり、ホームズの史上最大のライバルとも言えるジェームズ・モリアーティにスポットを当てた作品です。犯罪によって貴族社会の闇を根絶しようとする黒幕として暗躍するモリアーティと様々な事件を解決する伝説的な名探偵シャーロック・ホームズが交差するクライムサスペンスとなっています。そんな本作の二人の主人公、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティとシャーロック・ホームズを紹介していきたいと思います！
目次
犯罪で世界を変えようとする愛国者『ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ』
シャーロック・ホームズの舞台となるパクス・ブリタニカの時代のロンドンでは上流階級の貴族たちが社会を牛耳り、労働者階級との差別が肥大化した時代でした。そんな時代のダラム市の貴族で大学教授のウィリアム・ジェームズ・モリアーティにはもう一つの顔がありました。それは、貴族たちの不正によって犠牲になったものたちの相談役となり、不正をぶちまけるかけじめを付けさせる犯罪相談役であり、完全犯罪によって悪徳貴族を粛清していました。
表の顔は大学教授な『ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ』
モリアーティ家の次男であり、表の顔は大学教授です。16歳で大学に入学し、二項定理の論文を発表し21歳で大学教授となるほどの天才であり、表の顔はダラム大学の数学教授です。犯罪が絡まない程度の相談事も受け付けており、それらの殆どを綺麗に解決してきました。それらの相談事は幼少の頃からで、犯罪が絡む相談もあったようです。『地下にトンネルを掘って銀行強盗』を提案し成功させたのも恐らく彼。ついでにこの事件は元ネタの元ネタとなった実在の人物、アダム・ワースのエピソード。
本当は孤児だった！？成り代わった『ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ』
実はウィリアムは元々、孤児でした。しかし、孤児でありながらその卓越した頭脳と思想に目を付けたモリアーティ家の長男、アルバートに見初められて弟のルイスと共にモリアーティ家の養子となります。屋敷では使用人や次男のウィリアムや義母に手酷い扱いを受け、無実の罪を着せられそうになりますが、貴族特有の差別主義に嫌悪感を抱いていたアルバートの計画により、義母とウィリアムを殺害し屋敷に火を放ち、脱出の際に次男のウィリアムと成り代わります。つまり、一応本名があるはずですが現時点では不明です。
『ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ』の完璧な犯罪計画
ウィリアムの犯罪は基本的に、ターゲットとなる人物にボロを出させて破滅に導いたり、ターゲットを殺したいほど憎んでいる人物を調べ、犯罪計画を授けて実行に移すまさに黒幕としての動きが基本です。他の作品でいえば、サイコパスの槙島聖護や金田一少年の事件簿の高遠遙一に似たキャラクターです。でも、この二人の元ネタ的存在になるのかもしれません。
宿命のライバル・シャーロック・ホームズとの出会い
宿命のライバルとも言えるシャーロック・ホームズとは豪華客船ノアティック号で出会います。計画のため、労働者階級の人間たちを人間狩りと称して殺害し続けてきたブリッツ・エンダース伯爵をターゲットにし、彼を破滅させます。その過程で出会ったのが、後の名探偵シャーロック・ホームズであり、数学者という自分の職業を一瞬にして見抜き、完全犯罪であるはずの事件に黒幕がいることに唯一気付いた人物でした。それはウィリアムにとって不安要素でしたが、貴族たちの腐敗を暴く探偵役として利用しようと考えます。
世界で一番有名な探偵『シャーロック・ホームズ』
言わずとしれた世界的に有名な推理小説の主人公にして、本作のもう一人の主役。頭脳においてはウィリアムに比肩する数少ない人物であり、卓越した頭脳のほか、法医学や科学捜査などにも齧っている天才。『あり得ないことを一つ一つ潰していけば真実にたどり着く』と言う論理的思考により真実を明らかにします。ベーカー街B221のアパートに住み、後に助手役であり、コナン・ドイルでもあるジョン・H・ワトソンとルームシェアすることになります。
変人探偵『シャーロック・ホームズ』
推理の分野においては紛れもない天才であると同時に変人でもあります。自分の興味のあること以外はあまり頓着せず、地位や名誉と言ったものにも興味を示しません。真実を突き止めるためなら多少の違法行為は厭わないところがありますが、殺人までも厭わないという訳ではなくきちんと手段を選ぶ正義感を持っています。その正義感を持っていることからウィリアム・ジェームズ・モリアーティに目を付けられ、貴族たちの犯罪を暴く探偵役となります。また原作通り薬物常習者であり、精神的に不安定に見えるようなこともあります。
犯罪卿を追い続ける『シャーロック・ホームズ』
自分の関わる事件の裏側に黒幕がいることに気が付いており、ノアティック号での事件、ドレッパー伯爵殺害事件の裏で糸を引いていた人物を犯罪卿と名付け追い続けることになます。探偵という事件が起こってからしか行動できない立場から、ウィリアムの掌で踊らされることが殆どですが、その犯罪卿の正体となりえる人物はウィリアム・ジェームズ・モリアーティでしかありえないことを早い段階で感づいていました。
犯罪が得意な『シャーロック・ホームズ』
犯罪を暴き、真実を突き止めることが得意なホームズですが、実はやろうと思えば計画的な犯罪を企て実行するだけの能力を持っています。ただ、そうだとしても滅多なことが無ければ犯罪はしません。彼が犯罪を犯すときにはそれ相応の理由があると言う事です。もっと言えば、本作のホームズは進んで殺人を犯す人物ではありませんが、そうしなければいけない場合には引き金を引くホームズでもあるということです。
【憂国のモリアーティ】二人の主人公まとめ
コナンドイルのシャーロック・ホームズに登場するモリアーティ教授にスポットを当て、貴族社会の階級制度を犯罪によって変えようとする政治犯として描かれるのがこの作品です。その中でも、実在の出来事や当時を舞台としたフィクションを上手いこと織り交ぜ、様々な登場人物に独自の解釈を重ねているのが特徴です。ホームズを知らない人でも、少し調べるとここがこうなっているのかと思う展開がたくさんあるので、色々調べていく面白さもあります。そんな憂国のモリアーティのアニメは2020年10月から放送開始です。
