アニメ第3シリーズでは、合従軍編とのことで、戦国七雄の秦以外、韓、魏、趙、燕、斉、楚の6国が手を組み、函谷関での熾烈な攻防戦を繰り広げました。この戦いでは、各将軍の台頭や信の成長、そして何といっても、政の王としての素質が試されたお話でしたね。さらにアニメ最終話では、羌廆(きょうかい)が復讐を終え、飛信隊へと復帰したところで、アニメは終了しました。そこで今回は、2022年4月放送予定のアニメ第4シリーズの内容を解説していきたいと思います。(ネタバレを含みます!)
内乱期へ
合従連合軍との戦いから1年と少しが経ち、戦国は内乱期へと移っていきました。各国も国内をまとめる時期に入ったことにより、秦でもいよいよ秦王・嬴政(えいせい)対、相国(しょうこく)・呂不韋(りょふい)の勢力争いが佳境を迎えます。先の大戦で蕞(さい)を奮起させ、李牧(りぼく)を退けた嬴政の求心力により、大王側の勢力が増大していました。加え、かつての敵である政の弟、成蟜(せいきょう)も兄の出陣する姿を見た影響からか、心を入れ替え、部下からも信頼されるような人間へと成長し、打倒、呂不韋を掲げ、多くの貴族を大王陣営へ引き入れる手助けをします。
王弟、成蟜の乱
大王陣営が優勢の中、成蟜の第一夫人、瑠衣(るい)が帰省していた「屯留(とんりゅう)」という街へ、趙軍襲撃という事件が起きました。昨年の政の出陣の影響と妻を助けるため、今度は弟、成蟜が趙軍討伐のため、屯留へと出陣します。到着後、わずか半日で趙軍を退け、勝利した成蟜軍でしたが、そこには大きな罠が仕掛けられていたのでした。奪還した屯留では、呂不韋とつながっていた蒲鶮(ほかく)という人物が城主をしており、すでにこの蒲鶮により、妻、瑠衣は捕らえられてしまっていたのです。
壁、信の成長
すでに屯留は、蒲鶮の兵で埋め尽くされており、なすすべなく成蟜は捕縛され、王都咸陽(かんよう)には成蟜が屯留で裏切り、民と共に反乱を起こしたという嘘の一報のみが届きました。この呂不韋の仕掛けた罠に、一早く気がついた政は、最も信頼の置ける壁と信の2軍での成蟜救出作戦を企てます。あの合従軍から2年が経ち、壁は3万を率いる将軍に、飛信隊も規模は5千人になり、羌廆も千人将まで成長していました。
成蟜という人物①
成長した飛信隊と壁が率いる正規軍は、その圧倒的な力で屯留を攻め、簡単に入城に成功します。一方、捕縛されていた成蟜も何とか単独で脱出し、地下に幽閉されている瑠衣の元へ走ります。道中、伏兵と慣れぬ戦闘をし、傷を負いながらも成蟜は瑠衣を牢から助け出すことに成功します。しかし、あと少しで出口というところで、後ろから追いかけてきた蒲鶮とその兵たちに追いつかれてしまいます。迫る足跡を聞いた重傷の成蟜は、妻を先に出口へ逃げさせ、部下と2人で決死の戦いに臨むのでした。
成蟜という人物②
助けを呼びにいった瑠衣によって駆けつけた信たちの眼前に映るのは、成蟜が討ち取ったであろう蒲鶮の死体と共に倒れた成蟜の姿でした。成蟜は側に駆け寄る瑠衣へ、最後の声を振り絞り、政の元へ自分の勢力を集めること、そして信へは、政の大業、中華統一を成し遂げる矛になれと言い残します。4年前の成蟜の反乱、あの時は圧政を敷くだけで、1人も身を挺して守ってくれる人間のいなかった、傲慢な彼の姿はもうそこにはありませんでした。この成蟜の死を聞いた王弟の忠臣たちは泣き崩れ、同時に呂不韋への怒りと共に、大王陣営に加わることとなります。
対魏戦
さて、内乱期から少し経ち、戦国はまた、合戦の日々へと戻っていきます。李牧が詰みの一手と呼んだ山陽(さんよう)に対抗すべく、魏は国境を書きかえ、山陽の北に著雍(ちょよう)という新たな砦を築きました。秦の次なる戦地は、その著雍、相手は呉鳳明(ごほうめい)率いる魏軍です。元々、魏へ侵攻していた謄(とう)、録鳴未(ろくおみ)、隆国(りゅうこく)に加え、増援として飛信隊、玉鳳隊が呼ばれました。
王賁の策
敵軍の数は6万、さらにこの著雍は山と川に囲まれており、呉鳳明の最奥まで行くのは激戦が予想されました。そこで王賁が提案した策は、中央の謄軍を囮とし、飛信隊、玉鳳隊、録鳴未軍の3軍が同日同刻に、敵の第1陣を突破し、三方向から攻め入るといったものでした。初日、2日目は敵戦力を削り、3日目の正午には魏軍の本陣へ集合するという半ば強引な作戦でしたが、秦軍はこの王賁の策で、魏と戦うことになります。
魏火龍七師(ぎかりゅうしちし)について
趙の三大天、秦の六大将軍に匹敵するともいわれていた魏の名将たちのこと。先代王の安釐王(あんりおう)の時代に活躍した7人を指す。信の初陣で、麃公(ひょうこう)将軍に討たれた呉慶(ごけい)もその一人。後に、他6人の太呂慈(たいろじ)・晶仙(しょうせん)・馬統(ばとう)の3人と霊凰(れいおう)・凱孟(がいもう)・紫迫(しはく)の3人とが対立し、紫伯が太呂慈たちを殺す同士討ちの事件が起こり、この戦いまでの14年もの間、彼らは魏で幽閉されていた。
霊凰・凱孟・紫迫
王賁の策を成功させるためには、まずは敵の第1陣の撃破が必至でした。しかし、ここで魏は隠していた大将軍、魏火龍(ぎかりゅう)の3人を出してきたのです。飛信隊は、魏火龍の1人、巨漢の剛将、凱孟(がいもう)と対峙し、玉鳳隊も魏火龍の1人、最強の槍使い、紫迫(しはく)と対峙、という大きな敵と相対することになります。奮戦する2人でしたが、1日目は信が凱孟と、2日目は王賁が紫迫と、それぞれ一騎討ちの形になり2人とも重傷を負ってしまいます。
超える若き将たち①
信と王賁が苦戦する中、とうとう作戦の当日、3日目が訪れました。玉鳳隊は余力ある部隊に主攻をさせ、紫伯が出てきたところを王賁が迎え討つ戦い方をとります。他の魏火龍を惨殺したという紫伯の槍は、王賁のような正確性ではなく、ただ敵を貫く力だけを求めたもので、昨日同様、劣勢に陥ってしまいます。圧倒的な力の差を前にしても一歩も退かないこの玉砕覚悟の戦い方には、何としてもこの戦いを制し、中華に名を刻む大将軍になるための足掛かりにするという王賁の想いがありました。
超える若き将たち②
王家の跡取りとして、そして槍のみをひたすら極めた己がまた一歩成長するために、王賁にとってこの戦いは絶対に退いてはならないものだったのです。そんな王賁は次第に紫伯の槍を見切りはじめます。それは生真面目な王賁が、ひたすら練習した槍の型で、紫伯を捉え始めたからでした。幼き頃、父、王翦(おうせん)に教えてもらった基本の型、右半身中段。この型から繰り出した王賁の渾身の一突きは、紫伯の心臓を見事貫き、勝利したのでした。
超える若き将たち③
一方、もう1人の魏火龍、凱孟軍を突破するために、河了貂が仕掛けた策は、信を中央に孤立させ、羌廆軍、2千人で魏本陣へと向かうというものでした。中央の死地へ信と2千の兵を残したため、敵は信へ向かって全軍を投じます。包囲された窮地へ、突然、山を挟んで隣にいた隆国軍が馳せ参じます。無警戒の陣営の外から万を超える隆国軍が突入し、戦況はひっくり返ります。事前に河了貂はここまでを計算して、この奇抜な作戦を組んでいたのでした。
3日目の正午
3日目、太陽がちょうど真上に昇った時、呉鳳明軍本陣へ、北からは紫伯を破った王賁、西からは録鳴未、その間から少し遅れて羌廆がほぼ同時に到着します。予期せぬ襲撃と、3方向からの包囲に呉鳳明は兵を置いて、寡兵と共に逃げるしかありませんでした。さらに隆国軍のおかげで、凱孟を退けた信は幸運なことに、この敗走する呉鳳明軍を横から捉え、鳳明は取り逃がしますが最後の魏火龍、霊凰を討ち取ることに成功します。これにて魏軍撤退、そして秦の勝利が決定づけられたのでした。
戦果
この戦いにおける呉鳳明の失敗は、謄軍を主攻だと見誤ったことと魏火龍を抜いてくるほどの若い将の台頭を見抜けなかったことでした。それだけにこの一戦での王賁や信の活躍は広く中華に知れ渡ったのでした。加えて、この著雍を獲ったことは本格的な魏侵攻が可能になったことを意味しており、とうとう国を亡ぼす段階まで、中華が成熟したことを告げるものでした。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回はアニメ第4シリーズで描かれる序盤のお話を解説しました。成蟜の死は政陣営の力となり、著雍侵攻では信や王賁の台頭、そして本格的な魏侵攻が目の前まで迫ってきました。とうとう戦国七雄が崩壊し、世はさらに戦乱へと向かっていくことになります。ぜひ、この激闘をアニメや漫画で楽しんでみてください!