アニメの第2シーズンがまもなく始まる「不滅のあなたへ」。主人公・フシが悠久の時間の中で出会う人々と織りなす数奇な運命の物語に、感情をぐしゃぐしゃにかき乱されて作品の虜になった方も少なくないでしょう。この作品の作者である「大今良時」先生とはどんな人物なのか、独自の考察も織り込みつつ、がっつり深掘りしてみたいと思います!
目次
大今良時先生の基本データ:生年月日、出身地、性別など
大今良時先生は岐阜県大垣市の出身で、1989年(昭和64年/平成元年)3月15日生まれの現在33歳です。ペンネームは男性名ですが女性の漫画家さんです。お兄さんとお姉さんがいるとのことで、お姉さんは時々アシスタントとして作品を手伝うことがあるそうです。編集さん曰くお姉さんはとても美人なのだそうで(笑)。ちなみにこの似顔絵はあの「金色のガッシュ!」の雷句誠先生の作です。ルポ漫画での作者近影としてわざわざ指定されているほどなので、この絵はきっとお気に入りなのだと思われます。
ぱっと見た感じは小動物系のかわいらしいお姉さん
「不滅のあなたへ」連載開始時にお笑いのロバート秋山さんと対談している動画や記事が公開されていますが、そこで顔出しされている際の大今良時先生の見た目は、小柄でボブヘアの似合うキュートなお嬢さん、といった外見でした。以前のインタビュー時にはもっと髪が長かったご様子ですが、こんな一見無害そうな女性から、あんなにも読者の感情を翻弄する物語が紡ぎ出されるのですから、人間の創作力というものはなんとも底知れなく恐ろしいものです。
初恋の相手は「3×3EYES」の主人公・八雲?
控えめに言ってもかなり絵が上手い大今良時先生ですが、小学4年生の頃、お兄さんが買った週刊ヤングマガジンに連載されていた高田裕三先生の「3×3EYES」が、最初にハマった漫画なのだそうです。『高田裕三ノート』を作り、ひたすら高田先生のキャラを模写していたそうで、現在の超絶画力の原点は、そんなところにあるのかも知れません。
初投稿は高3、その後も投稿を繰り返す
小・中学生まではコピー用紙を使っており、ちゃんとした原稿用紙に漫画を描くようになったのは高校生の頃だそうです。家族旅行で上京した際に週刊少年マガジンに初持ち込みしたそうで、その際の作品は『シリアスなギャグマンガ』とのことです。ちょっと内容の想像がつきませんが「魁!!クロマティ高校」みたいなのでしょうか(たぶん違う)。投稿した作品の中には「不滅のあなたへ」の元になった「13人の灰剣」というタイトルの作品もあったそうです。残念ながらその作品は入選はせずに奨励賞止まりだったそうですが、その後きちんと昇華して世に送り出すあたりは流石です。
2008年「聲の形」が初入選。そして翌年デビューへ
高校卒業後に投稿した「聲の形」が週刊少年マガジン新人漫画賞に入選したことがデビューのきっかけとなりました。当初は「マガジンSPECIAL」へ掲載予定でしたが、内容が編集部内で問題となったため掲載はいったん見送りとなり、翌2009年、別冊少年マガジンにて作家・冲方丁先生の小説を原作にした「マルドゥック・スクランブル」の連載で、漫画家としてデビューしました。
「マルドゥック・スクランブル」~サイバーパンクSFアクション
デビュー作「マルドゥック・スクランブル」は、殺されかけて声を奪われた少女娼婦バロットと、様々なものに自在に変身できるネズミ型の万能兵器ウフコックとが繰り広げる冒険譚で、アニメ「PSHYCHO-PASS2」や「蒼穹のファフナー」などのシリーズ構成でも知られる、小説家・冲方丁先生の代表作のコミカライズです。「声を奪われた」という点が「聲の形」と、「様々なものに変身できる」という点が「不滅のあなたへ」と、それぞれつながっているのが興味深いです。ちなみに、フシのアイデアがウフコックに似てることは、冲方丁先生に「なるべく喧伝しろ」と言われているそうです(笑)
「聲の形」~センセーションを巻き起こした大問題作
「マルドゥック・スクランブル」の連載と並行して、まず2011年に入選作であるオリジナルの「聲の形」が別冊少年マガジンに掲載され、さらに入選作をリメイクしたものが2013年、読み切りとして週刊少年マガジンに掲載されました。SNSを中心とした反響の大きさから、その後「聲の形」は週刊連載されることとなりました。聴覚障害の少女、西宮硝子と、彼女をいじめた過去を悔いる石田翔也との交流から、人生における希望や絶望、孤独や友情などが描かれる、少年漫画としては非常に重いテーマを持った作品です。京都アニメーションによってアニメ映画化もされました。
「不滅のあなたへ」~初のファンタジー作品
「聲の形」の連載終了からおよそ2年の充電期間を経て、2016年に連載が開始されたのが「不滅のあなたへ」です。オリジナル長編としては2作品目となる本作は、現在も週刊少年マガジンで連載中です。2022年7月現在、単行本の既刊は17巻まで発売されており、大今良時先生の作品中、もっとも長編の物語となります。
単行本の表紙に描かれた光景には、ある『秘密』が・・・
作品中にもいろいろな仕掛けが施されている「不滅のあなたへ」ですが、第一部(1巻~12巻)までの単行本の表紙はいずれもが「登場人物たちの叶えられなかった夢」が描かれています。例えば2巻の表紙は「大人になったマーチ」、4巻の表紙は「潰れる前の顔でリーンを守る青年グーグー」といった具合です。意味がわかった状態で改めて表紙を見直してみると、なんとも切なくなるのと同時に、自らが生み出した物語のキャラクターから凡庸な『甘さ』を排除しつつも、同時に『愛』も感じさせるという、大今良時先生のなんともアンビバレンツなスタンスが見てとれます。
『不滅文字』は50音。焼きそばや「しまむら」のある世界線
「不滅のあなたへ」の作中にたびたび登場する独自の文字、いわゆる『不滅文字』ですが、「音を形にしたらこんな感じかな」と考えて創作されたそうです。日本語の50音に対応しており、母音と子音の組み合わせから構成されています。ネットの世界には読み解いている方がいっぱいいらっしゃいますが、アニメ第1シーズン13話でフシとピオランが途中で立ち寄った街の食堂の看板には「やきそば」と書かれているそうです。「久々の麺じゃ。うまいのう」とピオランが言いながら食していたのは焼きそばだったのですね。他にも単行本では「しまむら」のレシートが確認されています(笑)。
作画はアナログで、ガンガンにBGMをかけて執筆
「マルドゥック・スクランブル」連載開始時に撮影された執筆の様子がYouTubeに公開されているのですが、作画はアナログで行われている模様です。使用しているペン先は日本字ペンと丸ペンだそうで、筆圧が強いのでGペンは合わないそうです。しかし下書きもペン入れも、原稿と顔の距離がとにかく近いのに驚きます。その距離おおよそ10~15cmくらいなので、なんだか棟方志功の版画制作風景を彷彿とさせられましたが、間違いなく目を悪くするし腕や肩などにも負担がかかると思いますので、読者としては健康にはくれぐれも気をつけていただきたいものだと切に願う次第です。
作品世界の創造神だが、キャラは作者の分身
哀しいシーンや辛い描写が多いので、作品を俯瞰して描いていると思われがちですが、インタビューでのご本人の言によると「キャラにがっつり憑依して描く」タイプとのことです。キャラクターを生み出して物語を紡ぐタイプのクリエイターには少なくないタイプですが、これまでの著作を考えると、相当にメンタル削りながら執筆してるのであろうことは想像に難くありません。魂をごりごりすり下ろしながら物語を送り出しているのですから、これからは拝読する側も居住まいを正して読むようにしなくてはですね。
まとめ
粒ぞろいの2022年秋アニメの中でも、ひときわ異彩を放つ「不滅のあなたへ」。第2シーズンもまた、視聴者を驚かせる展開が待っていることでしょう。こんな素晴らしい作品を漫画とアニメの同時並行で楽しめるのが、ひとえに大今良時先生のクリエイティブに端を発しているのだと思えば、もはや感謝の念しか湧いてきません。某・博打マンガのキャラではありませんが「感謝・・・っ! 圧倒的感謝っ・・・!」というやつです。この超絶クリエイターと同時代に生きている幸運を、心ゆくまで味わい、目一杯噛みしめようではありませんか。