2021年に突如としてSNSを中心として人気を集めたストップモーションアニメーションの『PUI PUI モルカー』ですが、本作の魅力に取り憑かれて『PUI PUI モルカー』を視聴していたという読者の方も多いのではないでしょうか?あれからしばらくの時間が経ちましたが、未だに手軽に視聴することができるということもあり、本作を今でも楽しんでいる方も多いはずです!本作は純粋なアニメーション作品としても注目してみると、長いアニメーションの歴史の中でも特に興味深い作品であるということがわかるのです!今回はそんな本作のアニメーションの歴史の中での立ち位置について紹介していきたいと思います。作品としての内容は非常に淡白な本作ですが、近年のアニメ事情などを併せて考えてみると非常に奥深い作品となっていますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
ストップモーションアニメーションとは
さて、本作のアニメーションとしての立ち位置を紹介する前に、本作の最大の特徴である「ストップモーションアニメーション」と呼ばれているアニメーション技法について紹介していきたいと思います。ストップモーションアニメーションを理解しなければ本作の本当の魅力を理解することができませんので、ぜひともここは丁寧に抑えておきましょう。
伝統的な手法
ストップモーションアニメーションとは静止した撮影画像を何枚も重ねて動かすことにより、目の錯覚を利用して動いているかのように描くことができるという手法です。
アニメーションに基礎中の基礎
アニメーション技法の基礎中の基礎であり、極めて伝統的な手法であるといえるでしょう。『PUI PUI モルカー』だけでなく、さまざまな作品で目にすることが多い技法ですね。
近年改めて注目
非常に古典的な技法ではあるのですが、実はストップモーションアニメーションは近年再度注目を集めているのです。ここからは本作をはじめとするストップモーションアニメーションがなぜ近年脚光を浴びているのか?これまでのアニメーションの歴史を丁寧に振り返りながら、考察していきたいと思います。
アニメ制作の歴史を振り返ってみよう!!
さて、本作がなぜ近年注目されているのか?という謎を解き明かすために日本のアニメーション作品の歴史を振り返ってみましょう。本作『PUI PUI モルカー』以外にも数多くのアニメーションを考察する上で非常に役に立つ内容のまとめになっていると思いますので、本作以外の作品を検討される際にもぜひ活用してみてくださいね!
初期のアニメ作品は高クオリティ
そもそも、現在のアニメーションの大元はアメリカのディズニー社をはじめとするアメリカであると言えます。ディズニー社が初期に制作した『白雪姫』など世界各国に語り継がれているおとぎ話を映像化しようというコンセプトの作品としてアニメーション技術が使われることとなったのです。
膨大な予算、、
ディズニー社から少し遅れて日本でもアニメーションが制作されるようになったのですが、当時は日本でもアメリカでもアニメ制作というのは非常に膨大な予算が必要なものであったようです。
この時代のアニメは評価も高い
当時はアニメ技術も開拓されておらず、一つ一つの画を全て手書きで描いていたため、この時代よりも後のアニメ作品よりも絵としてみた時に優れている作品が多いものが多いというのがこの時代のアニメ作品の特徴なのです。
トレスマシンの登場で低予算化に成功
そんな、高予算のゴリ押しで発展していたアニメ業界ですが、とある機材の登場でアニメ業界の歴史は大きく変わることとなります。トレスマシンと呼ばれるキャラクターや物の境界線を描いてくれる機材が登場したのです。このトレス線を引いてくれるトレスマシーンの登場で一気にアニメーション制作は低予算化したのです(それでも決して安い予算ではないですが)。
トレスマシンを駆使してさらに複雑な描写へ
トレスマシンの登場で一気に低予算化したアニメ制作ですが、一昔前の作品に比べてトレス線を機械が書いているということもあり、絵としては美しくなくなってしまったという欠点もありました。そこで、アニメ業界はトレス線を活用しながらも、背景美術に力を入れたりと様々な方法でより複雑な絵を描くことができるように進化していきました。
CGの登場で低予算化に成功
このように、トレスマシーンと手作業の相乗効果でより美しい作品を追求してきたアニメ業界ですが、1990年代から2000年代に入ると新たな技術としてCGアニメーションの波が押し寄せてくることとなります。
さらにアニメ制作が簡単になった!
CGはトレスマシンよりもさらにアニメ表現を広げ、低予算化することに成功しました。これまでは絵で描くことが難しかった描写を簡単に描く頃ができるという技術革新を起こしたのです。
手書きのアニメが再注目
CGの影響は恐ろしく、2000年代のアニメーションでCGを活用しない作品はほとんど存在しないとも言われたほどでした。そんな状況の中でCGでは描き切ることのできない、温かみのあるアニメーションを求める声も強まっていき、手書きアニメが注目されることとなったのです。CGと手書きをうまく両立した作品もこの時期で多く出てきましたね。
さらなる高予算化の波
そのような時代の流れの中で、当然ですがアニメ制作の高予算化が加速することとなりました。これまでの国内市場向けでの作品では予算を回収することが難しくなり海外市場にも積極的に挑むことで、予算を回収しようとする動きも進んでいます。(全て手書きの高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』が制作費約50億に対して興行収入が20億だったという話があまりにも有名ですが、、)
低予算のストップモーションに注目が!?
このような肥大化するアニメ制作業界の中で、比較的低予算で作品を作れることができる古典的な映像表現技法の「ストップモーションアニメーション」に注目が集まっているのです。
そんな中での『PUI PUI モルカー』のヒット!!
本作『PUI PUI モルカー』のヒットもあり、ストップモーションアニメーションであっても高予算アニメを戦える!ということが明確に示されることになりました。
現代と相性の良いストップモーション
このようにアニメーションの歴史を振り返ってみると、急激に進んだ高予算化がアニメ業界を苦しめ、低予算のストップモーションアニメーションに注目が集まっているという時代背景があるということがご理解いただけたと思います。しかし、ストップモーションアニメーションが注目されている理由はアニメの高予算化だけでもなく、現代社会とストップモーションアニメーションが非常にマッチしていることも挙げられるのではないでしょうか?
ショート動画が人気の時代
というのも現代社会ではテレビよりもYouTubeやTikTokなどのやや尺の短い動画作品が人気を集めています。そのため、現代社会ではこれまでの長編アニメーションよりも『PUI PUI モルカー』のような3分ほどの尺のアニメーションの方が人々の生活にあっているのではないでしょうか?短い尺の動画としてはストップモーションアニメーションの方が向いており、そういった意味でもストップモーションアニメーションが注目されているのかもしれませんね。
30分の尺は長い??
このように現代社会ではより早く、より簡潔な作品を求められやすいという傾向があるようです。そのように考えると通常のアニメーションの尺である30分という長さは現代人からしてみると少し長くて、退屈なものなのかもしれませんね。事実、テレビアニメーションをアマゾンプライムなどで視聴する時に倍速機能を使う人が多くいるようです。
SNSでの拡散に向いている
さらに本作ほどの尺の少なさであればSNSでの拡散も用意であり、SNSを通してトレンドをチェックをすることが多い現代において、拡散をしやすいショート動画作品というのは非常に相性が良く、2021年の本作のSNS上でのバズりは必然だったとも言えるのではないではないでしょうか?
現代にあった作品
このように本作『PUI PUI モルカー』をはじめとするストップモーションアニメーションは極めて現代にあった技法であると言えるでしょう。アニメ制作技法の中でも特に古典的な手法であるストップモーションアニメーションが一周回って現代にマッチしたというのは非常に感慨深いですね。
まとめ
いかがでしたか?今回は本作『PUI PUI モルカー』がどうしてヒットしたのか?という点についてアニメーション作品の歴史を通して紹介していきました。ストップモーションアニメーションは歴史ある表現技法でありながらも、現代でさらに進化を続けている面白い技法なのでぜひご自身でもチェックしてみてくださいね!