近年、最も注目されているアニメジャンルといえば何でしょうか?おそらくこの質問をされた時にアニメファンのほとんどは異世界転生ものこそが現在最も注目を浴びているジャンルであると答えるでしょう。事実として昨今のアニメ作品の多くは現実世界でうまくいかなかった主人公がひょんなことがきっかけとなり、異世界に転生してしまうという冒頭から始まる作品ですよね。このような作品を一般的に異世界転生系と行ったり転生もの作品というのですが、どうしてここまで近年のアニメ作品は異世界転生系作品ばかりになってしまったのでしょうか?今回の記事では今年アニメ化される異世界転生系作品の『転生したら剣でした』をベースに異世界転生もの作品の特徴と歴史についてまとめていきたいと思います。日本の長いアニメ史の中でも特に注目していきたいジャンルの作品ですので、ぜひチェックしてみてくださいね!
転生もののルーツって?
それでは早速、転生ものと呼ばれる作品群のルーツについて深掘りをしていきたいと思います。現在我々が目にする数多くの異世界転生ものの作品群がどのような過程を経て現在のような姿になったのか?ジャンルとしての魅力を知るためにも役に立つものであると思いますので、詳しく調べてみましょう。
そもそも異世界へ行くストーリーは古くからある
そもそも「異世界を訪れて、日常とは異なる場所で生活をしたり、冒険をする」という物語は古来より存在しています。特に日本の昔話からは日常から離れたところに竜宮城があったり、鬼ヶ島があったりと、人間が生活をしている世界から少し離れたところに異世界が存在しているという思想が見受けられます。
古代は現実世界すら未解明だった
というのも、日本に限らず近代以前の世界では街を一歩踏み出すことさえ危険がつきまとう大冒険でした。そのため、普段人間が住んでいない場所は一切解明されておらず、通常では考えられないような世界が広がっていると考えられていたのです。『海底2万マイル』などの作品はその典型例だと言えるでしょう。
現実世界に未解明なものがなくなってきた
しかし、近代になって現実の世界で人類が辿り着いていない場所はほとんどなくなってしまいました。これまでは雲の中には「ラピュタ」があると言われても人類は信じる事ができましたし、世界のどこかには小人族がいると言われれば、疑うことはできなかったのですが、近代以降はそのような作品を描きにくくなってしまったのです。
21世紀から現在の形へ
そこで、現代では通常のこれまでの『浦島太郎』や『ガリバー旅行記』などの異世界ものを描くのではなく、現代流に新たなアレンジを加えた作品を描かざるおえなくなったのです。
電脳世界という新たな未解明世界
そこで次に注目されたのがこれまで人類が経験したことのない新たなフロンティアの「電脳世界」です。現代になって驚異的なスピードで発展していったインターネットのさらなる進化の形として電脳世界の存在が語られるようになっていきました。まだ、この時は異世界は現実のどこかに存在するという古来からのルールに徹したジャンルだったのです。
未解明世界って面白い!!
しかし、これらの電脳世界を描いた作品が多く世に出ることによって、読者は非日常の世界での人々の関わりや物語進行に魅了されていきました。そこにかつての人類が感じた「まだ見ぬフロンティアへのロマン」という魅力を徐々に失われていったのです。
未解明世界での活躍やドラマに注目した作品が出てきた
人々の興味がキャラクター同士のドラマに向くようになったことで、これまでのように異世界そのもののリアルさは必要なくなってしまったのです。そのため、重要なのは異世界に転生した結果であって、その異世界そのものの魅力よりも異世界の中でのキャラクターたちの魅力がより重要であるという流れになっているのです。
アマチュア作家中心に展開される
このように、現代になり異世界転生ものの作品群は世界のどこかにあるかもしれない理想郷を描くのでなく、その中でのドラマが重要視されるようになりました。その結果として、アマチュアであっても簡単に描くことができるようなジャンルへと変貌したのです。
膨大な資料集めの必要がない
というのも、通常作品を描くときには異国を舞台に描くなら、その国についての下調べを多くしないといけないし、剣士について描くなら中世の騎士を対象に多くの分析をする時間が必要だったのですが、現実世界とは関わりのない異世界が舞台ならば、史実に忠実である必要は一切ないからです。
作品を作る上で最も労力を使う作業とは?
そのため、小説や漫画、アニメを作る上で最も時間と労力要する作業である下調べをする必要がなくなり、普段は仕事や学業で時間が割かれているアマチュア作家が気軽に描くことができる作品群となったのです。多少史実と異なることがあっても、異世界の話なのだから気にすることはないですからね。
アマチュアが参入しやすいジャンル
このように、いつしか異世界転生ものの作品はアマチュア作家が最も参入しやすいジャンルの作品となりました。例えば、将棋棋士をモチーフとした小説を描くよりも、異世界での将棋棋士を描いた作品にしたほうが、より現実の将棋界を調べることなく、気軽に将棋を題材として作品を描くことができるのです。
競争率が高いから良い作品が残りやすい
それに、気軽に参入できるというのは悪いことではありません。結果としてアマチュア作家が参入しやすくなったからこそ、競争率が高まり、より面白い作品が生き残る戦国時代へと異世界転生ジャンルは加熱することができたのです。読者からしてみれば、よりクオリティーの高い作品を楽しむことができるようになったと考えることもできます。
広大な「異世界転生帝国」の分裂
しかし、良い面もあれば悪い面もあるというのが世の常です。異世界転生ものの作品が急激に増えたことによって、現在は隆盛を極めている本ジャンルも滅亡への道を辿っていると考えることができます。
広大化した国は分裂する
異世界転生ものを一つの大きな国家だと考えていてください。国家というのはより大きくなるために人口を増やし、他国を侵略して成長していきますが、最終的には強大になりすぎたが故に民族間の分裂が起こり空中分解していってしまうのです。異世界転生ものもその強大さが故に同じような運命を辿ってしまうのではないでしょうか?
個性豊かな異世界転生もの作品たち
現在の異世界転生ものは他の作品と差別化するためにとにかく工夫して、より個性豊かな作品となるために進化しています。例えば異世界に転生した後に、何度でも死ぬことできるようになっていたら?などのように常に設定にプラスアルファが求められるようになってしまったのです。
やがて新しいジャンルへと変貌していく
『転生したら剣でした』もただの異世界転生ものとしてではなく、転生したら人間ではなく「剣」だったという斬新な設定を武器としています。このように異世界転生ものでありながらも、他の作品にはないような細かい設定を追い求めていくうちに、やがて異世界転生ものではない別のジャンルへと変化いしていく可能性は十分あり得るでしょう。
異世界転生ものはなくなってしまうのか?
それでは、異世界転生ものそのものがなくなってしまうのか?という考えも浮かぶと思いますが、私はそうではないと思います。かつて異世界転生ものの作品も舞台が現実の辺境の世界だったように、常に時代時代のニーズに合わせてジャンルも変化していくものです。現在我々が目の前にしている異世界転生ものの多様化と分裂というのは、異世界転生もののこれまで行われてきた変化の延長線上にあるものに過ぎないのです。
本作の立ち位置
このように、異世界転生ものの歴史の流れと特徴を見てみると今年放送される『転生したら剣でした』の異世界転生ものとしての立ち位置とその存在意義についてわかるのではないでしょうか?
異世界転生作品群の最先端
本作は多様化を極める近年の異世界転生ものの最先端の作品であり、同時に史上初めての剣そのものが主役の作品となっています。作品としての多様性を最も生かした作品となっているのです。
これからの異世界転生作品を映す
もしかしたら、本作のような剣や道具などの無機物を主人公にした作品が本作の影響で増えていくかもしれません。そうしたら、異世界転生ものから独立した新たなジャンルが生まれるかもしれませんね。本作のテーマが残るかは置いておいても、近年の異世界転生ものの作品では本作のようなこれまでになかった斬新な設定が登場していますので、いつかそれらの作品を基準として新たなジャンルの作品が生まれて来るかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?今回は異世界転生ものの作品の歴史とその未来について、本作『転生したら剣でした』を例にとりながら簡単に解説していきました。似たような作品が乱立しているように見える異世界転生ものですが、一つ一つ見てみると決して単調な作品群ではないということがわかると思いますので、ぜひ本作をはじめとした様々な異世界転生作品に触れてみてくださいね!