2015年からWeb漫画サイト『クラゲバンチ』にて連載されている漫画作品『山と食欲と私』。“山ガール”といわれることを嫌う自称単独登山家の主人公・日々野鮎美の登山と山頂で食べる食事を描いた作品で、読むと山に登りたくなり、お腹もすくというアウトドア・グルメ作品です。公式レシピ本が発売されるほどの本格的な料理が描かれており、さらに作者自身の趣味が登山ということもあり、実体験を活かした登山の描写が話題となっています。今回は『山と食欲と私』に登場する名言だと感じた言葉を独自にランク付けし、紹介します。
目次
第10位 「きょうはやまには、はいらねほうがい」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
3月にとある里山に登ったときのこと。濃霧の中で道を進む日々野鮎美は、こんな日はキツネにでもバカされるのではないか?と内心ヒヤヒヤしながらも、実は心のどこかで1度騙されてみたいとワクワクしながら歩いていました。そこへ、濃霧の中から突如現れたのは、地元の人らしきおばあさん。そのおばあさんから「きょうはやまには、はいらねほうがい(今日は山には入らない方がいい)」と忠告を受けます。さらに「ふりかえらねこと(振り返らないこと)。さそわれてもだまってまつこと(誘われても黙って待つこと)。」と言い、去っていくのでした。こんなこともあり、わずかに恐怖を感じながらも先へ進んだ鮎美は途中で見つけたソファーベンチに腰かけ、コンビニで買った桜もちを食べることに。この桜もちを食べ終えたら今日は下山しようと決め、さっそく桜もちを食べ始めるのですが、4つある桜もちは1つ食べると1つ消え、さらにもう1つ食べるとまた1つ消えていくのでした。この奇妙な出来事に冷や汗をかきながら、もう下山しようと決めて立ち上がり、歩き始める鮎美ですが、急に後ろから何者かにザックを掴まれます。そこでおばあさんの言っていた“振り返らないこと、誘われても黙って待つこと”を守り、立ち止まる鮎美。どれくらい立ち止まっていたのかわかりませんが、ある程度時間が経つと、ザックから手が離れたのでした。足早に立ち去る鮎美。帰宅してみると、ザックの中につぶれた桜もちが2つ入っていたとのことでした。何者かわからないおばあさんに出会い、不思議な体験をしたときの名言です。
第9位 「命あってこそのクサウマでございます」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
とある山に登っていたところ、山頂までのルートにはないはずの沢に出くわした日々野鮎美。遭難しかけている状況に対して焦りを感じ始めた鮎美は、一度落ち着くためにと食事を取ります。そして食事が終わり落ち着いた鮎美は、“山で迷ったら尾根を目指せ”という知識をもとに、地図を見ながらどうにか登山道へ戻ってくることに成功したのでした。しかし、その次の日曜日。遭難しかけたことが想像以上にショックであった鮎美は、山へ行く気にもなれずに部屋にこもっているのでした。気を紛らわすためにも!と登山道具の整理を始めたところで、残り少なくなったガスと非常食として入れっぱなしになっていたカシューナッツを見つけます。そこで鮎美は、近所の川辺まで出て、外で料理を始めることに。作ったのは、香りが鼻につく食材とカシューナッツで作った“絶品クサウマカシューナッツ炒め”。それをビールと共にいただきながら、鮎美が言った言葉が「命あってこそのクサウマでございます」でした。山での油断と不勉強を反省しつつ、今命があるのことに感謝し、再び登山することへの意欲を取り戻した、そんな日の名言です。
第8位 「登頂を喜べる仲間がいると嬉しいよね!」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
ある日、日々野鮎美は2泊3日で南アルプスの甲斐駒ヶ丘と仙岳ヶ丘に挑戦することに。そこで甲斐駒ヶ丘と仙岳ヶ丘の間にある北沢峠の長衛小屋キャンプ場を利用することにします。そこで会ったのは、同じく“単独登山家”である香山栄螺。2人とも1日目は前泊し、2日目から甲斐駒ヶ丘に登る予定とのことで、一緒に登山することにするのでした。さっそく甲斐駒ヶ丘に登り始めた2人ですが、何か喋った方がいいのか、歩調を合わせた方がいいのかなど考えながらも、途中で見える絶景を共有したり、山頂に到達したときには喜びを分かち合ったりと楽しそうなようす。下山中もだらだらと話しながら、誰かと一緒に山に望むことの楽しさを共有しているのでした。3日目の仙岳ヶ丘には別ルートで登ることにした2人。そこで鮎美は単独登山の気楽さも再認識しながらも、誰かと登山することの楽しさも知ったからか、少し寂し気。そして山頂で再び栄螺と会い、一緒に食事を取ることに。そこで栄螺が「また一緒に登ろうね!やっぱり登頂を喜べる仲間がいると嬉しいよね!」と笑顔で言います。それに対し鮎美も「うん!また一緒に登ろう!」と言うのでした。“単独登山家”を自称しながらも、誰かと登ることの楽しさを知った名言です。
第7位 「大事な人にプロポーズする時は、こんな夕焼けが見える場所で・・・」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
日々野鮎美が有給休暇を取って3泊4日で八ヶ岳を訪れていたときのこと。鮎美は18:00頃には天狗の奥庭付近(標高2400m)に到達し、金色に焼けるという北アルプスの夕焼けを眺めていました。そのちょうど近くには男子大学生らしきグループも。その中の1人が「俺・・・いつか、大事な人にプロポーズする時には、こんな夕焼けの見える場所で・・・って小さいときから決めてるんだ」とつぶやくように言うのでした。それに対して友人らしき男子学生たちが「あれ?もうそんな話?」「彼女と付き合って一ヶ月じゃなかった?」「キスは?」と茶化し始め、「忘れてくれ」と照れているようす。そこで鮎美「下界ではなかなか口に出せないような素敵な言葉が、ついうっかりこぼれちゃうような魔力が山にはあるよね」と、ぼんやり思うのでした。そんな山の魔力によって引き出された言葉であり、鮎美が山の魅力を再認識した名言です。
第6位 「晴れろっ 晴れろっ」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
有給休暇を取り、3泊4日で八ヶ岳へ向かった日々野鮎美。八ヶ岳は夏沢峠を境に北八ヶ岳と南八ヶ岳に分けることができ、鮎美は北八ヶ岳から入山して3日かけて南下する予定を立てていました。1日目を終え、2日目は5:00に出発。しかし10:00には雷を伴う大雨に見舞われ、山小屋で足止めを食らってしまいます。その後も天候を確認するも良くならず、その日は山小屋に泊まることに。そして3日目。ある程度天候は落ち着いたものの、雨は降り続けている中、9:30に山小屋を出発。八ヶ岳の主峰である赤岳(2899m)へと向かいます。相変わらずの天気で、周りは雲に覆われているため景色は全く見えない状況。そんな中、11:15に赤岳山頂直下の最後の急登に突入します。“晴れろ”と願いながら1歩1歩進んでいく鮎美。ふと後ろを振り返ると、そこにはもうすっかり雲が晴れ、大展望が開けていたのでした。思わず歓声を上げる鮎美ですが、他の登山者も思わず声を上げているようす。鮎美の思いが通じて、八ヶ岳の大展望を望むことができたそんな名言です。
第5位 「なんだかドラマチックで楽しいです」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
とある山へ登山しに行ったときのこと。登山口近くのバス停では日々野鮎美の他に、もう1人男性が降り立ちました。どうやらその男性も登山するとのこと。その男性とは、単独登山家である兎内幸生。さっそく登り始めようと山の入り口に立つと幸生は、女性の後ろを歩くのは悪いからと、先に立って歩き始めます。すいすいと進んでいく幸生を見た鮎美は、幸生は道に詳しそうだと判断し、迷わないように後ろをついて歩いていきます。しかし、幸生は途中で登山道を見失ってしまいます。それを機に、幸生と鮎美は一緒に登山道を探しながら歩くことに。あっちかこっちかと迷いながら1時間が経過した頃、どうにか登山道に戻ることができた2人は、雨宿りも兼ねて休憩することにします。そこで幸生は、ミルクココアにスライスしたショウガとウィスキーを混ぜた“大人のココア”を鮎美にふるまい、ココアを飲みながらのんびりする2人。そこで幸生は「一緒に道に迷った人と、こんな雨の日に森の奥深くでお茶をするなんて・・・なんだかドラマチックで楽しいです」と言うのでした。その言葉にドキッとした鮎美。しかしその後の会話から幸生は妻子持ちということが判明。わずかな時間ですが、鮎美が山でのトキメキを感じた名言です。
第4位 「心の・・・山友達が一人できました」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
会社の後輩である瀧サヨリが籍を入れたと報告を受けたときのこと。それを聞いて焦りを感じた先輩の小松原鯉子は、日々野鮎美と共に“山コン”に参加することに。当日は男女20人ずつ集まり、筑波山へと登ることになります。山コンの形式に沿って、順番にさまざまな男性と話す中、鮎美がいろんな意味で気になったのは、小鷲という男性。小鷲は転んだときに鮎美が手を差し出すも手を取らずに1人で立ち上がったり、お昼は1人で食べてたりと、山コンにあまり馴染んでいないようす。そんな小鷲は、母親のすすめから山コンに参加したとのこと。1度結婚に失敗したという小鷲は隣を歩き続ける鮎美に対して、自分はこういう場所は向いていない、他の人と話した方がいいだろうと言います。しかし、鮎美はなんとなく小鷲ともう少し話をしたいと思い、一緒に話しながら登山するのでした。小鷲は「山は嫌いなんだよ、つかれるしよ」と言いつつも「でもいい景色だべ、ガキに見せてぇや」と話し、山を少し楽しんでいるようすも。そしてついに山コンが終了し、カップリングタイムの時間。その時に小鷲は、子どもが熱を出したとのことで姿を消していたのでした。結局山コンでは、鮎美も鯉子も誰ともカップリング成功とならず、帰りのバスに乗り込みます。そこで主催者が鮎美の元へ、小鷲から受け取ったという手紙を持ってきます。そこには、自分は歳だし出会いも諦めていたが、鮎美のように話し相手になってくれる女の人がいると思うと少し気が楽になったこと、さらに息子を連れてあちこちの山に登ってみようと思ったとのことが書かれているのでした。隣の席に座る鯉子にラブレター?と聞かれた鮎美は「・・・そう・・・ですね・・・・・・心の・・・山友達が一人できました」と噛みしめるように言うのでした。鮎美が小鷲に出会ったことで、また新たな経験を積んだ、そんなことを感じさせるような名言です。
第3位 「今日はじめて登山というものを・・・楽しいと思った・・・かも・・・」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
小松原鯉子が会社の主任に就任した後のこと。新人として会社にやってきた瀧サヨリですが、口数が少ないこともあり、鯉子や日々野鮎美はなかなか交流を深められずにいました。そこで鯉子は登山レクリエーションを企画。経理課の鯉子、鮎美、サヨリ、蛭村直樹の4人で高尾山へと向かうことになります。4人は無事登頂し、サヨリが振る舞ってくれた熊本の郷土料理や焼酎を楽しみました。その後、鯉子と直樹はケーブルカーで、サヨリと鮎美はのんびり話しながら下山。下山後には、高尾山口に直結している温泉施設を満喫。元々サヨリは山岳部でしたが、いろいろな理由から登山からは離れていたとのこと。ですが、今回4人で登山した後には「今日はじめて登山というものを・・・・・・楽しいと思った・・・かも・・・」と嬉しそうな表情で言うのでした。経理部の4人の親睦も深まり、サヨリが登山の楽しさを知ったことがわかる名言です。
第2位 「いつか立つ山頂は今日よりきっと最高だぜ!」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
奥穂高岳に挑もうと長野県へやってきたときのこと。前日には上高地、横尾までたどり着いて順調だと思われていた日々野鮎美ですが、お腹の調子があまりよくないようす。途中で単独登山家である沙魚野マキという女性から市販の薬をわけてもらいながらも、どうにか涸沢カールまで到達します。そして翌日。ついに奥穂高岳に挑もうと歩み始める鮎美ですがやはりお腹の調子は悪いままで、お腹を気にしながら歩いていたところ、足をくじいてしまいます。そんな鮎美は、涸沢カールまで引き返すことにするのでした。帰ってきてテントに寝転ぶ鮎美に、途中で拾ったキーホルダーが「無理せず引き返したのは賢明な判断だな。これでもう一度登る楽しみができたわけだ。いつか立つ山頂は今日よりきっと最高だぜ!」と励ましの声をかけてくれるのでした。悔し泣きをする鮎美を励ますような、そんな名言です。
第1位 「人を信じる気持ちを取り返せたことが嬉しかったな」
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
日々野鮎美はとある山から下山している途中、車で旅をしているという黒蓮七実に出会います。鮎美は成り行きから七実に駅まで送ってもらうことになるのですが、近くに秘湯があるらしいとの情報から寄っていくことに。秘湯を堪能した後には、ミートソースカレーを作り、食べる2人。そんな七実はアウトドアの知識も豊富で、自由に旅を楽しんでいるようすですが、旅に出る前にはいろいろあって人間不信になっていたとのこと。しかし、旅をする中でたくさんの人と出会い、人を信じる気持ちを取り返すことができたそうです。そんな七実に鮎美は「黒蓮さんみたいな自由な人生に私・・・憧れます」と言う場面も。しかし七実は「自由はときどき寂しいよ」と返すのでした。旅を通じて多くのものを得た七実の経験や重みが感じ取れる名言です。
山と食欲と私・名言ランキングまとめ!
出典: 山と食欲と私 ©SHINCHOSHA
いかがでしたでしょうか?今回はアウトドア・グルメ漫画『山と食欲と私』に登場する名言だと感じた言葉を独自にランク付けしたものについて紹介しました。“登山”や“山”がテーマの1つである本作ならではの名言が数多く登場します。他にも多くの名言が登場しますので、ぜひチェックしてみてください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。