数多く存在するゲームジャンルの中でも、対象がゲーム人口の中で特に少ない「女性」をターゲットにしている「乙女ゲー」は長らくかなりマイナーなゲームジャンルとして扱われていました。膨大な人口を抱える男性がメインターゲットの恋愛シュミレーションゲームに対して、特段話題になることもないゲームたちですが、近年はコロナ禍における巣篭もり需要も相まって女性むけの恋愛シュミレーション作品も勢いを増しているようです。特に男性のファンも増えてきているようで、一時期の閉鎖的な雰囲気とは少し変わってきていると言えますね。今回はそんな「乙女ゲー」を舞台にした、少し変わった作品を紹介したいと思います。従来のアニメ作品にはなかった非常に面白い設定を持っている作品ですので、是非ともチェックしてみてくださいね!
まさかのメタ視点作品
本作は「乙女ゲー」のような世界観を描いた作品でなく、本当に乙女ゲー内の出来事をストーリーとして描いている作品となっています。そのため、本作で描かれるキャラクターの動きは物語内でプレイヤーが楽しんでいる乙女ゲーのキャラクターたちなのです。
主人公は乙女ゲーのキャラクター
このように、本作の主人公は乙女ゲーのキャラクターであるため、常にプレイヤーが俯瞰的な解説やツッコミをテレビ画面の外からすることになります。この辺りの絶妙なプレイヤーとゲームキャラクターの噛み合わなさが一つの面白さの作品なのです。
乙女ゲープレイヤーが俯瞰的に物語に関わっていく
乙女ゲープレイヤーが俯瞰的に物語に関わっていくので、読者自身もかなり俯瞰的に作中の物語を楽しむことができます。どっぷり物語につからないでプレイヤーと共に少し引いた視点で楽しむことができる作品となっているのです。
作品展開をメタ的に捉えるプレイヤー
このように本作に登場するプレイヤーは作品展開をメタ的に捉えているので、普段ゲームをしている自分自身をうまく重ねることができます。数多くいるキャラクターの中でも特に読者に近いキャラクターとなっているので注目です。
作品展開をメタ的に捉えるプレイヤーをメタ的に捉える読者
本作の面白いところはゲームを楽しんでいるプレイヤーをさらに俯瞰的にメタ視点で楽しむことができる点です。自分達こそが観察者だと思っているプレイヤーをさらに観察している存在(読者)がいるという設定としての面白さがあります。
斬新なラブコメ作品!!
このように、本作の魅力は何といっても「設定の斬新さ」です。通常のラブコメ作品ではあり得ないような斬新な設定のラブコメ作品として楽しむことができますので、王道の展開の作品では飽きたというファンの方にはぴったりの作品となっています。
乙女ゲーキャラとプレイヤーの設定に隠された面白い仕掛け
一方で本作の設定の面白さである、物語を俯瞰的にみているプレイヤーがいるという設定にはもっと奥深い仕掛けが隠されています。ここからはそんな本作のプレイヤー視点という設定をさらに深掘りして紹介していきたいと思います。
メタ視点で描きながらも相互に交流を持たせる
まず工夫点の一つ目として挙げられるのは「メタ視点でプレイヤーがキャラを操作しつつも、キャラクターとプレイヤー相互に交流を持たせている点」です。通常のゲームではあり得ない、キャラクターとプレイヤーが互いに会話をしたりするシーンが多く描かれています。
乙女ゲーのキャラからするとプレイヤーは「神様」
本作の設定の中では、乙女ゲー内の世界ではプレイヤーは神として描かれており、プレイヤーたちを未来を知っている万能の存在として理解しています。確かに現実の乙女ゲーもプレイヤーがキャラクターの未来を理解していることが多いので、神様という表現をしているのはうまい設定ですよね。
リーゼロッテの死を回避せよ!!
作中冒頭ではゲーム内での重要キャラクターであるリーゼロッテの死を回避することをプレイヤーとキャラクターが協力して目指すこととなります。このように作中を通してキャラクターとプレイヤーが協力して何かを目指すシーンが多く描かれているのです。
ゲームキャラのカルチャーショックに注目!!
本作では、ゲームキャラクターとプレイヤーがかなり密に交流をするため、通常ではあり得ない「ゲーム内の世界」と「現実世界」のカルチャーショックが数多く描かれています。作中でも特に面白いシーンとなっているのでいくつか冒頭のカルチャーショックを紹介したいと思います。
「ツンデレとは何ですか?」
当然ゲーム内には「ツンデレ」などのキャラクターの個性を俯瞰的に表現する言葉が存在しません。そのため、ゲームキャラクターに対してプレイヤーが「このキャラクはツンデレだ!」などと発言した際にゲームキャラがしょっちゅう「ツンデレとは何ですか?」と質問したりするのです。
「ちゅーの一つでもしてください!!」
ゲームをしている側からしてみれば所詮ゲーム内での話なので、キャラクターたちがいきなりキスをしようが関係ありません。そのため、作中では突然ゲームキャラに「ちゅーの一つでもしてください!!」と無茶苦茶な指示を出したりするのです。
他の作品では味わうことのできない面白さ
このように本作ではゲーム内と現実世界のキャラクターだからこそ味わえる双方の絡みを楽しむことがきます。間違いなく他の作品では味わうことのできない展開ですので、是非とも注目をしてみてくださいね!
メタの二重構造という発想
本作で描かれているこのような「メタ視点の二重構造」というのはどこから来ているのでしょうか?他のアニメ作品でもなかなか見る事のない設定ですので、この設定が一体どこからきているのか非常に気になりますよね。
歴史ある児童文学にはよくある手法
実は、本作のような「メタ視点の二重構造」というのは、歴史ある児童文学にはよくある手法なのです。伝統ある有名児童文学にはこのような「メタ視点の二重構造」の設定を活用した作品は数多くあり、おそらく本作の設定の源流も大元を辿っていけばこのような児童文学に辿り着くのではないでしょうか?
『はてしない物語』など
特に本作のような設定を採用した児童文学として有名なのが、ドイツ発の児童文学『はてしない物語』でしょう。本作も物語の主人公が一つの作品を俯瞰的に楽しむ作品となっており、後半からは自らがその物語の世界に入ってしまうという展開になっています。『ネバーエンディング・ストーリ』という大面で映画化もされており、多くのファンに現在でも愛されている作品となっています。
物語を楽しむ側に共感しやすい
なぜ、歴史ある児童文学は「メタ視点の二重構造」という設定を生み出したんのでしょうか?理由は対象が幼い子供達であったからだと考えられます。子供たちにとって物語内に登場する勇者は憧れはしますが、共感はできません。そこで、より主人公を身近に感じてもらえるように、あえて勇者の活躍を俯瞰的に楽しんでいる読者というキャラクターを描くことでよりキャラクターに共感をしてもらえるようにしたのです。
伝統的な手法を「乙女ゲー」に落とし込んだ本作の凄さ
このように元々「メタ視点の二重構造」というのは、物語を楽しむ子供たちにより共感をしてもらえるように生み出された設定なのですが、本作ではこのような伝統的な手法を「乙女ゲー」に落とし込んでいるのです。
「乙女ゲー」ならではの展開も多数!!
そのため、従来の児童文学ではあり得なかった展開を多く描くことが出来ました。これまでの伝統を踏襲しながらも、新たな解釈のもと現代に「メタ視点の二重構造」を復活させたのです。この辺りの過去にあった設定をうまく現代風にアレンジするという姿勢が本作の一つの魅力であると言えるのではないでしょうか?
オタクが共感しやすい作品!!
これまでの「メタ視点の二重構造」を採用した作品が子供たちに共感されやすかったように、本作はオタクにとって共感しやすい作品となっています。これまでのラブコメでは舞台が異世界であったり中世ヨーロッパであったりと憧れはできるが共感はしにくい世界観であったので、「メタ視点の二重構造」という設定が生きやすい土壌があったのです。
まとめ
いかがでしたか?今回は本作『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』の一つの魅力である「メタ視点の二重構造」という設定に注目をして紹介をしていきました。ものすごく突拍子のないような設定ですが、実は元を正すと歴史ある児童文学作品にも通じる考え抜かれた設定であるということが分かりましたね。このように本作には注目してみると面白い設定が他にも数多くありますので、ぜひみなさんもご自身で調べてみてくださいね!