今や、大ヒット作品である「ゴールデンカムイ 」。2016年には、マンガ大賞も受賞しています。近年のマンガ大賞において、恋愛要素の無いマンガというものは、実はほぼありません。ゴールデンカムイ には、恋愛以外の魅力的な要素がたくさん詰まっているのです。その一つが、今回ご紹介させて頂く、アイヌのご飯。作中にしばしば登場しており、この作品の魅力でもあります。ちなみにヒンナとは食事に感謝をするアイヌの言葉です。時には麗しく、時にはグロテスクな、それでいて美味しそうなアイヌ飯をどうぞ!
初めてのチタタプとなったリス
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
「ゴールデンカムイ 」にて、初めてのチタタプとなったリス。チタタプとは「我々が刻むもの」という意味で、たたきのことを表してます。リスの脳みそを生で杉元に食べさせたアシㇼパですが、あまり美味しそうじゃないと感じたのでしょうか。リスをチタタプしたものをつみれとして、オハウ(汁物)にしてあげます。香りづけはブクサキナ(ニリンソウ)でした。ブクサキナは、山菜の中で一番肉と相性が良く、肉の味が倍増するらしいです。これを食べた杉元。至福の食事となり、初めてヒンナといったシーンでもあります。
味噌と相性抜群 ウサギ鍋
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
ウサギを捕まえた杉元一行。大きさの割に食べるところが少ないために、チタタプにしました。耳の軟骨も、皮を剥いで内臓や肉と一緒にチタタプ。エゾマツタケとオシロイシメジ、香辛料としてブクサ(行者ニンニク)を肉に混ぜて、オハウに。それを食べた杉元は、リスよりあっさりしていると舌鼓。そこで思い出したのが、味噌。これは味噌があうとアシㇼパに進めましたが、初めてみる味噌にアシㇼパは、オソマ(う○ち)と拒絶。味噌をとかしたウサギ鍋を堪能した杉元でした。
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
ちなみに、杉元は初めてウサギの目玉を生で食べます。なんでも、獲物を仕留めた人間しか食べることのできない、名誉ある食事らしいですよ。
カジカ出汁のキナオハウ
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
罠を仕掛けていっぱい撮れたのが、エゾハナカジカでした。冬のカジカは脂が乗っていて絶品。そんなカジカをアシㇼパのお婆ちゃんが料理してくれたのです。大根、人参、ジャガイモ、ほうれん草と昆布、それに素焼きしたカジカを入れた汁物。それが、カジカ出汁のキナオハウ(野菜のたくさん入った汁物)でした。アイヌでは、人から頂いたものは自分の首の後ろにいるとされる精霊に、お裾分けします。しっかり自分の精霊にもおすそ分けした杉元。一緒に作ってくれたカジカの塩焼きとともに美味しくいただきました。味噌を入れることを提案する杉元でしたが、あっさりアシㇼパに拒否されてしまいます。
物忘れの激しい神様 カワウソ
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
カワウソを毒矢で仕留めたアシㇼパ。脳みそを生で塩をかけて食べるのが美味らしいのですが、今回は毒矢を使用したので加熱が必要のため、お預けに。そんな中で作ってくれたのが、カワウソのオハウでした。カワウソの肉と干したブクサにゴボウとニリンソウ。獣の肉は根菜類があうとのことです。お肉を食べた杉元。脂身がトロトロで、しつこさもなく、上品な味だとか。そんな折にアシㇼパが進めてきたのが、カワウソの頭の丸ごと煮。非常に美味しいとの記述も残っている程、頻繁に食べられていたみたいですね。
鹿のコース料理
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
手負いの鹿を自分に重ね合わせてしまい、撃てなかった杉元。アシㇼパがトドメをさします。手負いで走らせた獲物の肉は味が悪くなる、特に肝臓が。と言い、杉元に食べさせたのが1品めの鹿の肝臓を生で。初めての生の肝臓なので、味が落ちているかわからない杉元。その後、小屋に戻って食べたのが、2品めの鹿の脳みそ。こちらも毎度おなじみ生でいただきました。3品めは鹿の肺、もちろんこちらも生です。4品めは鹿の器官をチタタプしたセウリと呼ばれるもの。肉を食べたい杉元と白石。そこで出したのが、鹿の肉の中で一番良い部分と言われる背中の部分。こちらを少し炙ったもの。こちらは絶品だったみたいで、みんな大はしゃぎ。お酒が進む夜となりました。
地域によってはカムイ(神)アザラシの煮込み
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
トッカリ(アザラシ)を棒で仕留めたアシㇼパ。日高ではあまり取れないためにカムイではないものの、樺太ではヒグマと同じほど重要なカムイとして崇められていました。もちろん脳みそは生でいただき、肉や肝臓、肺は煮込んでいただきます。そんな折、ニリンソウが底をついてしまい、臭い消しがない状態で煮込んでしまい、アシㇼパは動揺を隠せません。アザラシを塩ゆでしたものとなっていまったのです。アザラシは、血の匂いが強く、臭い消しが必須とのことですが、杉元たちは、美味しくいただきます。魚と牛肉の間の味のような味らしく、アシㇼパさんもドヤ顔をかましちゃいます。ちなみに、アザラシを塩茹でしたものは、北極圏に住むイヌイットの間では、ブイダニャカと呼ばれ、彼らの主食でもありました。
アイヌの食事
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
彼らの元々の食事は、基本的に生食や煮込み、炙りといった簡単な調理方法のものが多く、調味料も身近で取れる山菜などを使用していました。しかし、地域によってばらつきがあったと言われ、それはアイヌが多民族との結婚を許可していたために、各地の文化が多少なりとも混ざっていったためとも言われています。今でも、鹿やイノシシなどは、ジビエとして食される文化が日本にも残っています。ぜひ機会があれば、そちらをご堪能ください。彼らの文化が少しだけ感じられるかもしれませんよ。