日常の中に潜む妖怪たちを仲間にして物語を進めていく『妖怪ウォッチ』や鬼に変えられた妹を元の姿に戻すべく鬼殺隊の一員として鬼と戦う『鬼滅の刃』などなど、現代では様々なフィクション作品の中に「鬼」や「妖怪」「あやかし」「式神」が登場します。これらは現在ではざっくりと「モンスター」として扱われることが多く、それぞれの違いについて理解している方も少ないかと思いますが、実は一つ一つルーツが異なり、細かく見てみると全く異なるものであったります。特に本作『あやかしトライアングル』では「あやかし」の他にも数多くの属性を持ったキャラクターが登場し、少しずつ作中での立ち位置や特性が異なっています。そこで、今回は様々な属性のキャラクターが登場する『あやかしトライアングル』を題材に、様々な作品で登場する属性について紹介をしていきたいと思います。本作の設定についてもより詳しく紹介をしていきますので、少しでの本作にご興味がある読者の方はチェックしてみてくださいね!
登場する様々な「属性」
冒頭で紹介をしたように日本のフィクションには『鬼』『式神』『あやかし』などの数多くの属性が登場します。作品ごとに役割や特性が異なる場合もありますが、実際はモンスターの一種として描かれることがほとんどです。そして、本作では珍しくこれらの属性がそれぞれ登場しているのです。
あやかしとは
まず、本作について最も重要な立ち位置の属性であると言えるのが「あやかし」です。あやかしというのは漢字で「妖怪」の「妖」と書くように、人を惑わす「悪さ」をする存在ということになります。
「怪異」や「式神」との違い
そのため、あやかしというのはあくまで、「どのような出自か?」ではなく「どのようなことをするのか?」という「やることによってカテゴライズされる存在」なのです。具体的な出自や特性の違いによってカテゴライズされるのは「怪異」や「式神」といった分類になります。
怪異とは
それでは、本作にも登場する怪異とはどのような存在なのでしょうか?一般的に怪異とは現実的にはあり得ない現象のことを指す言葉であり、妖怪などとは異なり様々な怪奇現象をも指す言葉となっています。また、何らかの怨念や負の感情など非生物的なものが意志を持っている状態もよく怪異と表現されることがあります。
式神とは
一方で本作にも登場する式神は人間が自身の利益のために活用をする使役神のことで、人間に危害を加える「あやかし」とは正反対の存在となっています。主に陰陽師が活用をしているシーンで描かれる存在ですよね。
日本の「あやかし」の定義は極めて曖昧
このように「怪異」や「式神」などはある程度その属性としての特徴が決まっているのですが、「あやかし」は人間を惑わせるという要素のみに注目をして表現であるため、非常に広い定義を有しています。ゆえに本作においては人間に危害を加える存在は基本的に「怪異」だろうが「式神」だろうが「あやかし」と表記をされているのです。
巫女と生贄
本作で注目をしたい属性は「怪異」などの人ならざる者以外にもあります。その代表的な例として挙げられるのがヒロインのすずの属性である「巫女」でしょう。ここからはフィクションに何となくフワッと使われがちな「巫女」について詳しく紹介をしていきたいと思います。
本来の巫女の役割
普段皆様が想像するように、巫女は「妖怪を治める超能力者」ではありません。本来妖怪といった類は自然の中に宿る「八百万の神」です。当然彼らは神様なので人間の力で抑えることはできません。そこで、巫女は神様に自らの身を捧げ神の怒りをしずめるのです。これが本来の巫女の役割なのです。
忍者はあやかしを成敗するの??
さて、ここからは本作を読んでいて多くの読者が不思議に思ったであろう「忍者って妖怪と戦うの?」という違和感について詳しく紹介をしていきたいと思います。本作の忍者は基本的にあやかしを相手にしており、全く忍んでいるようには見えませんよね(どちらかというと、あやかしの方が忍んでいるイメージがある始末です)。
本来の忍者のイメージ
本来皆さんが考えている忍者というと、「武士に支えていて敵の勢力に諜報活動を行う部隊として活躍をしている」というイメージがあるでしょう。どちらかというと「武士が主役」で忍者はその補助をしているというイメージがありますよね。
従来のイメージでそもそもあってるの?
しかし、そもそもの忍者の歴史を見てみると、実は忍者の役割として皆さんが考えている『忍者ハットリくん』のようなイメージは全く異なっているのです!
忍者の起源を考える
本来の忍者の役割を知るためには、そもそもの忍者の起源を知る必要があります。忍者がどのような変遷を辿って、現在の我々のイメージにあるような姿になったのか詳しく知れば、他の作品に登場する忍者についても、何か新しい発見があるかもしれませんよ!
大元は「修験道」にあり
忍者のルーツの一つとして考えられているのが「修験道」と呼ばれる日本の古来からある山岳信仰上の修行です。日本に数多くある山の聖なる力を受けながら山を練り歩くという風習がやがて、国境を超えて他国へと潜入する忍者へと変化していったのではないかと言われています。
自然信仰と修験道
このように忍者と修験道には大きなつながりがあるのです。現在では忍者が技を出すときに印を結ぶことが多いですが、もともとは印を結ぶという行為は中国から渡来した密教の技術であり、日本では密教に影響を受けた修験道者が多く活用していたものなのです、このように忍者の忍法の起源も修験道の自然信仰にあるのです。
戦国時代からの忍者はかなり「軍事色」が強い
そんな修験道者が忍者へと変貌した時代の1つの境目と言えるのが戦国時代です。戦国時代では応仁の乱をきっかけとして日本全国で戦が続いており、怪しまれることなく他国に侵入できる存在が重要となってきました。そのような状況の中で山岳信仰という名目で自由に国境行き来できる修験道者の存在は大きく、1部の修験道者は自身の修行ではなく戦国大名から任じられた調略活動を他国に行うために暗躍したのです。 この辺の時代の忍者が、現代我々に忍者として認識をされている活動となっているのです。
元々は自然信仰と結び付いた不思議な存在
そのため、もともとは忍者は調略活動をメインで行う存在ではなく、自然信仰と中国から伝来した呪術思想が結びついた 不思議な存在だったのです。本作で描かれている忍者もどちらかと言うとこちらの印象が強い忍者道となっていますので、本来の忍者の役割に注目をして描いた結果なのではないでしょうか?
本作の忍者のイメージ
それでは、本作で描かれている忍者はどのような歴史をたどって物語上の姿に行き着いたのでしょうか?午後からは先ほど紹介をした忍者の基礎知識をベースとして、本作に登場する人者たちがどのような変遷をたどっていたのか?という点について詳しく紹介をしていきたいと思います。
戦国〜江戸を通して諜報機関として活躍
本作に登場する忍者達も、戦国から江戸時代にかけては諜報機関として活躍していたのでしょう。服装が我々の想像する戦国時代の忍者からほとんど変化していないという事は、過去に諜報機関として活動をしていたことの名残であるといえます。しかし、何らかの理由があって諜報機関としての役割を捨てたと推測できます。
国内での戦の終焉で本来の役割に回帰した
忍者が諜報活動をしなくなった理由として唯一考えられるのが、幕藩体制の崩壊です。19世紀に日本の最後の武家政権である徳川幕府が倒されたことによって、諜報活動は日本国内から海外へと目を向けられることとなりました。そのためかつて御庭番衆などのように様々な武器に使えていた忍者たちは従来行っていた諜報活動を行えなくなってしまったのです。そこで忍者たちは本来の修験道者的な活動をするという本来の役割に回帰したのではないでしょうか?
奥深い本作の設定
このように、本作は忍者があやかしを相手にしていたり、様々な属性のキャラがごちゃ混ぜに登場したりと一見して見てみるとかなりめちゃくちゃな設定のように見えてしまいます。しかし、実は忍者のルーツを辿って見るとあながち間違っていなかったりするのです。このように本作には忍者の設定以外にも数多くの魅力的な奥深い設定が眠っているのでぜひとも深ぼってみてくださいね!
絵だけが魅力ではない!!
本作で描かれるキャラクターたちの人気が高いばかりに、設定にはなかなか目が行きにくい作品ではありますが、決してだけが魅力の作品ではないと言う事だけは押さえておいてくださいね。
まとめ
いかがでしたか?今回は本作『あやかしトライアングル』を用いて、日本における忍者の起源や様々な属性のあやかしについて紹介をしていきました。日本の文化や設定のについて深く知ることで、本作はさらに楽しむことができる作品となっておりますのでぜひともご自身でも詳しく調べてみてくださいね。