アイヌ民族の伝統、文化を事細かにレポートし、彼らの習慣や信仰を教えてくれるゴールデンカムイ 。皆さんは、そんなアイヌの歴史の背景をご存知でしょうか?日本とロシアの領土問題による、強制移住や国籍選択、様々な悲しい歴史を持った民族なのです。そんな彼らの歴史を、日本とロシアの関係性も含めながら今回は紹介させていただきます。
目次
ゴールデンカムイ で読み解く アイヌの歴史
アイヌの起源は不明確
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
アイヌ民族と一概に言いますが、北海道アイヌや樺太アイヌなど、各地により文化や信仰が異なるアイヌが当時は存在していました。作中では、アシㇼパさんがアザラシを撲殺した時に、アザラシをカムイ(神)とするアイヌとそうでないアイヌがいるという説明がありました。そんなアイヌの歴史は、縄文時代から存在されたと言われていますが、実は詳しいアイヌの歴史の起源は不明確にされています。というのも、アイヌにまつわる痕跡が少なく、今後、地質学や考古学の発展とともに、より明確にして行くために、わざと幅を持たせていると言われています。
悲しいアイヌの歴史
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
アイヌは、長年にわたり日本に同化政策を強いられ、彼らの習慣や文化、言語を排除させられていきました。ですので、アシㇼパさんは日本語を話すことができ、おばあちゃんはアイヌ語しか話せないのです。また、苗字を持たない北海道アイヌでしたが、和名を持つように強制させられました。ですので、アシㇼパさんは、小蝶辺明日子という和名を持っているのです。しかも、明治の時代は、アイヌは土人と呼ばれ差別されていました。アイヌを日本国民であると国が認めたのは、第二次世界大戦後なのです。また、アイヌ文化を根絶しようと考えていた日本と、アイヌの別民族との結婚を禁じないとの教えから、混血が進み、今では純血のアイヌはほぼ存在しないと言われています。
ゴールデンカムイ で読み解く 日本とアイヌの歴史
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
日本とアイヌの交易が始まったのは、鎌倉時代だったとされています。しかし、当時、アイヌはアイヌの中でも少数部族が多く、アイヌとしてまとまった交易を行い始めたのは、戦国時代でした。しかし、異文化の日本とアイヌの交易が増えれば増えるほど、摩擦も増えてしまい、1457年にコシャマインの戦いが起こります。当時の松前藩により鎮火されますが、その後、約200年間アイヌは、不当な貿易を強いられます。そして、1669年シャクシャインの戦いが起こります。戦いの理由は、劣悪な商取引と労働環境への不満が爆発したものとされています。再び沈静化したものの、アイヌの地位の向上は果たせず、同化政策へと繋がって行くのです。
ゴールデンカムイ で読み解く 日露戦争の歴史
日露戦争のきっかけ
日露戦争のきっかけとなったのは、朝鮮半島の領有権です。当時、日本は日清戦争に勝利し、アジア進出を行い領土拡大を図るために、遼東半島を譲り受けます。しかし、アジアの領土が欲しいのは、日本だけではありません。ロシアも欲しかったのです。そこで、ロシアはフランスと組み、日本に遼東半島を清に返還させました。当時のロシアは大国で、日本はノーとは言えませんでした。これが世に言う三国干渉です。これが日露関係のひずみとなります。その後、ロシアが満州を支配するに至りますが、日英同盟が締結されたことにより朝鮮半島の獲得を目指す日本がロシアへと宣戦布告します。
日露戦争の終結と鶴見中尉の怒り
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
日露戦争が勃発した当時、日本は小国でありなおかつ貧乏。日英同盟がありつつもロシアは大国ということもあり、日本が勝つなんて誰も思っていませんでした。しかし、作中で鶴見中尉ら第七師団が出撃したとされている、五〇三高原の旅順攻囲戦で多くの犠牲者を払いながら制圧したことを皮切りに、日本の快進撃が続きます。そして、ロシア国内でも血の日曜日事件をきっかけに、世論が戦争反対に動き始めたこと、犠牲者が増え続けたこともあり、戦争を続けて行くことが困難になっていました。また、日本でも、無理に兵士をロシアへと送り続けた結果、国内の産業や農業が低迷していき、こちらも戦争を続けて行くことが困難になっていったのです。そこでアメリカが仲裁に入り、ポーツマス条約が結ばれ戦争が終結します。しかし、ロシアは敗戦ではなく引き分けと主張するのです。だから賠償金は一切払わないと。日本も、戦争を続けて行くメリットがなかったためにそれに妥協します。このことこそが、鶴見中尉が怒り、軍を裏切り第七師団で金塊を探し北海道を支配する理由であり、第七師団が鶴見中尉について行く理由なのです。
ゴールデンカムイ で読み解く 日本とロシアの領土の歴史とアイヌ
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
とあるシーンでキロランケがアシㇼパさんの父親とともに、国籍を選択できた、ということをアシㇼパさんに話しています。話を聞くといい話に聞こえますが、実際はそうではありませんでした。これはどういうことかというと、もともとの1854年日露和親条約では択捉島と得撫島の間が日本とロシアの国境とされていました。当時は、樺太の領土の問題はあいまいなままにしていました。しかし、その後の1875年に樺太千島交換条約をロシアと締結し、樺太はロシア領、千島は日本領となったのです。そもそも樺太はどちらのものでもなく、千島はロシア領だったのですから、そこに住んでいたアイヌの人々は迷惑な話です。しかし、日本はそんな千島にすむアイヌの人々に言います。どちらの国民になってもいいけど、ロシア人になるんだったら出ていってくださいねと。これが実情です。当時のアイヌの人たちは住処を変更したくないために、日本を選んだ人が大多数でした。そして上に記したような不当な扱いを受けることになるのです。
ゴールデンカムイ で読み解く歴史 まとめ
出典: ゴールデンカムイ ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
杉元や白石は普通にアシㇼパさんに接していますが、実は作中の明治後期はまだ同化政策の真っ只中であり、差別されていた時期なんです。それを思うと、アシㇼパさんの素直で健気でひたむきな姿にますます魅了されてしまいます。今回は歴史の話をメインで紹介させていただきましたが、このような歴史背景を知っていると、少し別の角度からゴールデンカムイ が楽しめるかもしれません!わたしももう少し勉強しようかと改めて思いました。