原作は原泰久による戦国バトル漫画。2006年より『週刊ヤングジャンプ』で連載が開始されており、2012年からアニメ第一期、2013年からアニメ第二期、2020年からはアニメ第三期が放送されています。また2010年にはPlaystation Portable用のゲームが発売され、2019年には実写映画が公開されるなど、様々な媒体で展開されている人気作品です。舞台は春秋戦国時代の中国。戦争孤児である主人公の信と後の秦の始皇帝である政が今まで誰も成し遂げたことのない、中華統一を目指す物語となっています。史実を元にしたストーリーとなっていますが、登場人物の性格や風貌、各国の戦況などは漫画として見やすく面白くなるように脚色されています。では、『キングダム』内の人物像や出来事はどのように変更されているのでしょうか?今回はその辺を史実に基づいて解説していこうと思います。
優しく誠実な政、史実では暴君?!
趙国で生まれ過酷な幼少期を送った政は、秦国の王座につき中華統一を目指します。王として冷静な判断をする人物であり、民衆や部下にも基本的には優しい政ですが、史実は異なります。ミスは決して許さず、裏切る者には一切容赦しないというかなりの暴君だったようです。趙国との戦で桓騎が利牧に敗走すると、桓騎を平民の位まで下げました。今まで秦国に貢献してきた武将に対して、たった一度の失敗でこの仕打ち・・・。作中の政からは想像出来ませんよね?また、燕国の太子であった丹とは幼い頃に同じ境遇にあったことから親友となっていましが、作中では、政は孤独な幼少期を過ごしていたとあるのでここも違いますね。燕国に戻った丹は、使節として秦国に向かいます。政との再会を楽しみにしていた丹ですが、政は冷たくあしらいます。このことがきっかけとなり、燕国は荊軻に政の暗殺を依頼することになったのです。丹を冷たくあしらうというエピソードも作中の政では作りにくいので、丹との出会いそのものを無くしたのかもしれませんね。そして、暴君と言われる一番の出来事は、『史記』にも記述されている「焚書坑儒」でしょう。始皇帝となった政は医学、占術、農学以外の全ての書物を焼き払い、自分に異見する儒者全てを生き埋めにした出来事です。こうすることで、新たな思想が生まれないようにし、中華全てを我が手中に収めようとしていたのです。
信との関係性
政と信の出会いは漂が死んだことがきっかけとなっていますが、史実では、いつ出会ったのかは不明となっています。王翦が趙を攻める際に別動隊として出撃しているので、その前から秦国の将になっていたのは間違いないでしょう。信は政に対してタメ口で話し、王に対しての振る舞いではありません。これをあの暴君が許すかというと難しい気がしますね。実際はほとんど会って話をすることはなく、話すときも王と将としての関係で話をしていたのでしょう。よって作中のように親友という関係ではなかったと思われます。しかし、政が信を信頼しかなり評価していたのも事実です。信は楚国を攻める際に、王翦が60万の兵がいるというのに対し20万で十分だと舐めてかかり、将7人を失うという大敗をしています。桓騎は一度の失敗により身分を下げられましたが、信はこの大失態にも関わらず、この後も将として戦に出て功績を上げています。政暗殺を企てた燕国を滅ぼした功績は余程大きなものだったのでしょうね。
可愛くて強い飛信隊の副将・羌瘣、その正体は・・・
「巫舞」という人間離れした剣術で他を圧倒する羌瘣は、女であることを隠しながら戦場に身を置きますが、素顔はとても可愛い女の子です。しかし、実際には男であり、蚩尤の末裔というのも『キングダム』内での設定です。蚩尤は史実に記述はありますが、作中のように「祭」を行い選ばれるような殺しの達人ではなく、伝説的な化け物のような存在として記述されています。元ネタが化け物なので蚩尤が強いのも納得ですね。王翦が趙に出征した際には、楊端和と共に同行し趙を滅ぼしており、その強さは史実通りのようですね。
他の女性キャラは?
羌瘣が実際は男だったということで、他の女性キャラはどうなのか見てみましょう。楊端和もやはり男でした。それも山の民の王ではなく、秦国に仕える将でした。六大将軍の一人摎も男ですね。こうなると王騎と結婚の約束などもオリジナルのエピソードということになってきますね。そして、河了貂やカイネに関しては記述がないため、おそらく『キングダム』オリジナルのキャラだと思われます。
秦国の怪鳥と恐れられた王騎、史実にはほとんど記述がない・・・
作中では六大将軍最後の生き残りであり、中華全土がその動向を注視していた王騎ですが、史実ではほとんど記述が残っていないのです。六大将軍の一人である白起は百万を超えるほどの兵を倒しており、その強さは記録として多く残っています。秦の勢力を大きくしたのもこの白起による功績が大きいものだとも言われる程です。同じ六大将軍であれば王騎の記録も残っていてもおかしくないのですが、大した活躍もなく、政が王に即位してから将軍に任命されたということぐらいしか記録にありません。六大将軍が大暴れしている頃には、まだ将軍でもなかった王騎・・・『キングダム』ファンからしたら結構ショックな事実でした。また、始皇帝3年に亡くなったとあるので、龐煖によって殺されるというのはキングダムオリジナルとなっています。
本当は違う?!歴史や人物像を史実と比較します!まとめ
いかがだったでしょうか?『キングダム』は史実に基づいた話となっていますが、結構オリジナル要素が強いことがわかりますね。しかし、だからこそ面白く人気があるのです!!史実通りに描いては、物語に厚みはなく、読み手が感情移入するのも難しくなるでしょう。史実を知った上で、『キングダム』ではどう描かれるのか?というのを予想するのも楽しみ方の一つではないでしょうか?