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 フシの能力には刺激をトリガーとする模写能力の他に再生能力が挙げられます。この再生能力は制限なく働くもので、フシには死というものが存在しないと説明されています。不死身であることは「フシ」という名前の由来でもあります。又、模写能力の延長線上の能力として対象が過去に刺激を受け獲得したものならば自らの体から制限なく生み出すことができるようです。これらの能力はバトルパートの多い一部中盤で大いに活躍しました。
謎の多い観察者の存在

 フシを語る上で切っても切れないのが観察者の存在です。フシがこの世界に来ることになった一番の要因である観察者のことは作中でも詳しく語られておらず謎に包まれています。容姿は真っ黒なローブに隠されておりフシ以外の人間には基本見えない為、フシを介してその存在を知った人間からは「黒いの」や「ミスターブラック」と呼ばれています。そもそも人間なのかすらわからずその立ち位置が掴みづらいキャラクターですが、フシがノッカーと遭遇した際にはその存在を「敵である」と知らせたりと度々フシの前に助けとして現れることから、フシに対して未干渉の完全な観察者というわけではないようです。自らの目的を「世界の保存」と明言しておりフシはその為にこの世界に投げ入れられたという事も明らかになっていますが、観察者がなぜそのようなことをしているのかはわかっておらず、彼(?)の言う「世界の保存」がどのような物なのか詳しくはわかっていません。観察者がフシを使って何をしようとしているのか?今後の言及に期待といったところです。
不滅の存在としてのフシ

 『不滅のあなたへ』の最大の特徴はフシを中心としたキャラクター陣が時間と共に入れ替わることでしょう。フシは死ぬことがありません、その為行動を共にしてきた幾人の仲間たちとの別れを経験することになります。彼又は彼女らとの交流、そしてその死を通して貪欲に学習し成長する彼の物語には私たち読み手が思わず引き込まれてしまうようなスケールの大きい、いわば大河ファンタジーのような魅力があるのではないでしょうか?
フシは人間をどうみるのか?

 作品テーマとしてのフシの存在は想像するに難しくありません。人間よりも無垢な存在に人類が肯定される、自身の存在が肯定されるといった話は、古くは聖書の神の子イエスが人類の原罪を背負って死んだというストーリにもみられるように人類の永遠のテーマでもあります。現代の作品で言えば『ワンピース』のルフィや『鬼滅の刃』の炭次郎が周りの人間を認め、彼らを肯定することで彼らを救っていったように、フシもまた無垢な存在として周りの人間の心を動かしていくのではないでしょうか?しかし、無垢な存在はいつまでも無垢ではいれません、フシ自体が人間に興味を持ち、彼らに近づいているからこそ、いつしか人間の本質に気づく時がくるのでしょう。その時に果たしてフシはキリストやジャンプの無垢な主人公達のように人類を祝福する存在となるのでしょうか?それとも人類に絶望して彼らを滅ぼす災厄になるのでしょうか?フシが今後人類をどう見て、何を思うのか?大今先生の手腕に期待です!!
フシは一体何者なのか?あらゆる角度から見てみる

 それではフシとは何者なのかという話をしていきたいと思います。このパートではフシがどのようなキャラクターなのか設定から読み解くのではなくもう少し広い目で分析してみたいと思います。突如謎の物体が地球に飛来し人類に影響を及ぼすと言ったイメージの大元は1968年公開の映画「2001年宇宙の旅」に登場する「モノリス」から始まったというのはいうまでもないのですが、それが意志を持って人類と関わるというフシのイメージは日本の漫画作品でいうと1977年に発行された「キャプテンハーロック」に出てくるマゾーン辺りが元になっているのではないでしょうか?これら過去の作品における異物の飛来という劇の幕開けはその後の展開で人類の古代文明と大きな関係があることが多く、テーマとして人類の文明論につながることが多いです。このことからもし『不滅のあなたへ』がS F作品としての王道を歩むのなら、必ずフシの起源は古代文明と関係のあるものになると思います。今までのS F作品の文明論に対して作者、大今先生がどのような見解を示すのか?これから語られるであろうフシの詳細設定に早くも期待が持てますね!!
 
 
 
  
 