『AIR』は最も泣けるアニメで知られる『CLANNAD』を制作したゲーム会社『Key』のゲーム作品で、アニメ化して大ヒットしました。『Key』のメディアミックスは萌え系のイラストではありますが、内容は非常に感動できるので一般の方にも観てほしい作品ですね。ここでは『AIR』の「SUMMER編」のヒロインで哀しい最期を迎えた「神奈備命(かんなびのみこと)を紹介します。
目次
『AIR』とはどんな作品?
「泣きゲー」のパイオニア的作品
『AIR』は「泣きゲー」と呼ばれる感動できる美少女ゲームのパイオニア的作品で、最高に泣けるアニメとして有名な『CLANNAD』の一つ前に美少女ゲームブランド「Key」が発売した作品です。
『AIR』のゲームの売上は累計30万本を優に超えるという、この手の美少女ゲームとしては異例の大ヒットで、アニメの円盤の売上も全巻合わせて10万本を余裕で超えるという大ヒット作品になりました。
2005年に京アニがアニメ化
『AIR』は2005年に「京都アニメーション」がアニメ化し、当時はまだ美少女ゲーム原作のアニメが円盤10万本を余裕で売り上げるのは異例中の異例でした。
大ヒットし話題となった『AIR』ですが、2005年は『涼宮ハルヒの憂鬱』でアニメブームが到来する直前だったので、今みたら画質の低さはやや否めないかもしれません。
しかし、それを差し引いても十分以上に感動できる名作なので、泣けるアニメが好きな方は是非観た方が良い作品です(全12話なので観やすいのもありオススメです)。
『AIR』の見所は?
1000年の時を超えた愛の物語
『AIR』の最大の魅力は、主な舞台は海辺の田舎町なのですが、中盤、時を超えて1000年前の世界をプレイヤー(視聴者)が追体験する所です。
時は平安時代まで遡り、そこで主人公やヒロインの過去生の秘密を探っていく所に魅力がありますね。
それでも核は現代
『AIR』の魅力は過去に遡り、そこで主人公とヒロインの秘密を探っていく所にありますが、軸となるのは現代で、現代の登場人物たちが本当の使命を果たしていく所にあります。
過去に遡るのは、あくまでもプレイヤー(視聴者)が現代で登場人物たちが果たすべき役割を知るための追体験に過ぎず、それを知った上でクライマックスに向かっていく所がこの作品の最大のポイントですね。
【AIR】神奈備命は神尾観鈴の1000年前の魂
観鈴の見ていた夢は過去生で神奈が体験していたこと
『AIR』のメインヒロインである「神尾観鈴(かみおみすず)」は、主人公の「国崎往人(くにさきゆきと)」と親しくなってから「空で一人きりの哀しい少女の夢」を見るようになりましたが、その哀しい少女の正体が1000年前(平安時代)に存在していた最後の翼人「神奈備命(かんなびのみこと)」です。
「神尾観鈴」は「神奈備命」の魂が何度も何度も輪廻転生した結果の最後の器であり、「呪い」によって1000年も哀しみを抱えた神奈の魂に、幸せな記憶を見せる必要があります。
正確には「最後の子」は観鈴でなくてもよかったのですが、「神奈備命」の呪いを解くために1000年も前から「法術」を継承してきた神奈の側近だった柳也と裏葉の子孫(主人公の国崎往人)の力が代を重ねるごとに弱まってきたので、結果的に観鈴と往人が最後の子として神奈の魂を救う役割を担いました。
【AIR】神奈備命の人物像
外見は日本的な正統派黒髪(青髪)美少女
神奈の見た目は正統派の黒髪(青髪)美少女で、時代が平安ということもあり桜色の派手な着物を纏い可憐な雰囲気を出しています(二次創作的な表現で青髪ですが、実際は黒髪じゃないでしょうかね?)。
神奈は「翼人」のため恐れられている
神奈は翼の生えた人間で、強い力を持つ「翼人」として信仰されていると同時に恐れられていたため、護衛の兵たちですら近づくことを躊躇い、早くお役御免したいと思っていた兵達が多かったです。
そんな中、「SUMMER編」の主人公であり優秀な兵であった柳也だけは神奈に興味を持ち、親しい女官であった裏葉と三人で馴れ合い、神奈との交流を楽しむようになりました。
神奈の性格は強気で明るいという感じ
神奈の性格は、見た目の美しさや厳かさとは対照的に非常に強気でかつ明るいため、お調子者の柳也と裏葉とは気が合い仲良くなりました。
柳也と裏葉は神奈をいじるのが楽しみになってきており、退屈な職務の合間で面白い反応をする神奈のことをおちょくるのが数少ない憩いになっていたようです。
神奈は物心つく頃には隔離され社を転々としていた
「神奈備命」は「翼人」であるため、恐れられると同時に信仰の対象として崇められていました。物心つく頃には外界から隔離された場所に幾度となく移されてきたようです。
そのため、世間を知ることなく育ち、人とも殆ど触れ合うことなく孤独に生きてきたという経緯があります。
柳也と裏葉はそんな神奈を不憫に思い、次の社に神奈が移される前に神奈を連れて旅立つ決意をしました。
【AIR】神奈備命の母に会うために始めた夏の旅路
母に会うために旅を始めた神奈
社を抜け出した神奈・柳也・裏葉の三人は、謎の追っ手による襲撃に遭ったものの柳也の巧みな剣術で危機を脱出し、神奈の母がいるという霊山に向かうことにしました。
途中、外見的に目立ちすぎる神奈が目立たぬよう農民の着物を拝借し(銭は置いていった)、追っ手に見つからぬよう慎重に何日もの真夏の山越えを神奈・柳也・裏葉の三人は始めました。
柳也に殺生を禁じた神奈
剣術の達人である柳也は、数人がかりでも難なく殺せる程の腕を持っていますが、神奈は追っ手を殺そうとした柳也に対して失望し、その後、柳也に一切の殺生を禁じさせました。
殺さないように戦うことで今後の行く末を案じた柳也ですが、神奈の命には逆らうことが出来ない柳也はそれを承諾。しかし、後に神奈のこの判断は甘かったことが露呈され、柳也を窮地に追いやってしまいます。
観鈴の夢に出てきた炎を囲んだ祭り
現代で観鈴が見た、大きな炎を囲んで大勢の人達が楽しんでいたという祭りも、旅の最中に神奈・柳也・裏葉の三人は目撃しました。
この時は神奈・柳也・裏葉の三人は祭りに参加していませんでしたが、神奈の魂を引き継いでいる観鈴が楽しい夢だったと言っていたことから、神奈は見ているだけで祭りが楽しかったのでしょうね。
【AIR】神奈備命の母「八百比丘尼」に会うが……
母「八百比丘尼」の死の直前に呪いを引き継いでしまった神奈
不殺生を誓った柳也は厳しい戦闘で負傷してしまいましたが、なんとか霊山の結界を越え神奈の母「八百比丘尼(やおびくに)」に会うことが出来ました。
しかし、「八百比丘尼」は自身の身体に触れてはいけないと忠告。「八百比丘尼」は戦で死んだ者たちの呪いを一身に受けていて、自身に想いを寄せる者を弱らせる呪いをかけられていたのです。
そして、霊山で始まった合戦で矢に撃たれ、「八百比丘尼」はあっけなく命を落としてしまいました。
触れてはいけないと忠告したにもかかわらず、矢に撃たれた母の姿にいたたまれなくなった神奈は、「八百比丘尼」に触れ、「八百比丘尼」にかけられていた呪いまで引き継いでしまいました。
母「八百比丘尼」から翼人としての使命を受け継いだ「神奈備命」
「八百比丘尼」は死の直前、神奈に翼人としての使命を受け継がせ、神奈に翼人の力を与えました。
神奈は母「八百比丘尼」の死をもって翼人としての力を得たのですが、同時に「八百比丘尼」にかけられていた呪いまで引き継いでしまったため、それがこの先、1000年に渡り神奈の魂を癒す大きな障害になってしまいました。
【AIR】神奈備命の哀しい最期
自身の身をもって柳也と裏葉を救おうとした神奈
「八百比丘尼」の死を見届けた神奈・柳也・裏葉の三人でしたが、合戦に巻き込まれた上に、柳也は神奈と交わした不殺生の誓いを守ったための負傷で満身創痍という、絶対絶命のピンチに陥ってしまいました。
大きな大樹の根元に身を潜め、大勢の軍勢から身を隠すように寄り添った三人は、海や祭りの話をして楽しい未来を想像しましたが、それが夢でしかないとわかった神奈は、翼人としての力を解放し、大勢の軍勢から柳也と裏葉を助けようと一人大空へ羽ばたきました。
霊山の僧たちの呪いと大軍の矢を一身に受ける神奈
大軍が群がる月夜の森の中、一人空高く舞い上がっていく神奈でしたが、翼人の存在を災いとみなす霊山の僧たちは、空に駆けていく神奈に神奈の魂を縛る呪いをかけていきました。
僧たちの不気味な声と共に呪詛は神奈を縛っていき、さらに大勢の兵たちの矢による攻撃で神奈は傷つき、身動きできなくなっていきました。
そして、ついに神奈は霊山の僧の呪いに捕まり、心も体も傷つけられ、空に縛り付けられてしまったのです。
【AIR】呪いにより一人で哀しい夢を見続ける神奈
霊山の僧たちの呪いは神奈に哀しい夢を見続けさせる
霊山の僧たちが神奈にかけた呪いは、翼人である神奈の魂を縛る呪いで、神奈の大切な人……つまり、柳也が死ぬという夢を永遠に見せ続けられるというものでした。
翼人の見る夢は幸せな記憶でなければならないため、哀しい夢を見せ続けられることで翼人である神奈の力を削ぎ、神奈を魂から弱らせていたのです。
さらに母「八百比丘尼」から引き継いだ呪いも神奈の魂を孤独にする
霊山の僧たちの呪いだけでも死以上の苦しみですが、さらに神奈は母「八百比丘尼」から引き継いでしまった呪いまで上乗せしているため、神奈は神奈や神奈の魂に想いを寄せる全ての人間を弱らせ遠ざけるという、孤独な運命まで魂に刻みこまれてしまいました。
現代のメインヒロイン「神尾観鈴」が誰かと仲良くなると泣き出してしまうのも、この「八百比丘尼」の呪いが1000年経っても神奈の魂を引き継いでいる観鈴を縛っているためで、これによって観鈴は往人との関係も一度破局を迎えてしまいました。
【AIR】神奈を救えるのは柳也と裏葉とその子孫だけ
強力な呪いで縛られた神奈には何もできない
霊山の僧たちの呪いだけでも強力ですが、さらに母「八百比丘尼」の呪いまで引き継いで空に縛られた神奈は、彼女一人の力ではどうすることも出来ませんでした。
そこで、愛する神奈を救うために柳也と裏葉は子供を残し、法術を学び、いつか神奈の魂が地上に転生した時に神奈の魂を救えるよう、未来の子に託したのです。
そして、1000年後に柳也と裏羽の子孫である主人公「国崎往人」と、神奈の魂を引き継いだ呪われた少女「神尾観鈴」が出会ったわけですね。
【AIR】神奈備命の名言
「世を主とする限り、今後一切の殺生を許さん」
柳也が追っ手を殺そうとした時、「恥を知れ!」という怒声と共に神奈が柳也に言い放った言葉。
「柳也殿……死なないでほしい」
神奈が柳也に不殺を誓わせたことが仇となり、柳也が敵から致命傷を受けてしまった時、神奈が後悔と謝罪の意も含めて柳也に放った「命令」ではなく「願い」。
「余の最後の命である……。末永く……幸せに、暮らすのだぞ」
合戦に巻き込まれた柳也・裏葉・神奈の三人は、このままでは大勢の軍勢にやられてしまうと悟ったが、翼人である神奈は自らの身を犠牲にすることを決意し、二人を救うと決めた時に放った言葉。
【AIR】神奈備命の声優は西村ちなみさん
「神奈備命」の声優は、『ゲゲゲの鬼太郎』の第四作の「ねこ娘」や『おじゃる丸』の「坂ノ上おじゃる丸」の声優を務めた「西村ちなみ」さんです。
【AIR】神奈備命まとめ
「神奈備命」は霊山の僧たちの呪いと母「八百比丘尼」の呪いを同時に受け、さらに大勢の兵達の矢を浴び、心身共にズタズタにされてしまった上に、1000年も傷が癒えなかったという、「Key」作品のヒロインの中でもある意味、最も過酷な運命を辿ったヒロインだったかもしれません。
最終的には1000年の時を経て「国崎往人」と「神尾観鈴」、そして観鈴の母「神尾晴子」によって呪いは浄化さたわけですが、長い間一人で哀しい夢を見続けた神奈は、最後の魂である観鈴を乗り越えて、最後に転生して幸せになったので良かったです。