原作は白石定規による短編ライトノベル作品です。2019年にあずーるがキャラクターを手掛け漫画化されており、2020年10月よりアニメが放送予定となっています。主人公のイレイナは、「ニケの冒険譚」という本に憧れ、魔女になって旅をすることを夢見ます。魔女になったイレイナが旅の中で様々な場所や人を訪れる内容となっており、基本的には一話完結となっています。また、GA文庫より刊行されている『リリエールと祈りの国』は本作の世界観を引き継いだ続編となっています。今回はアニメ化に先駆け、『魔女の旅々』のあらすじをご紹介していきたいと思います。ネタバレを含む内容なので、まだ見ていない方は注意してくださいね!
第一章 魔法使いの国
ニケという魔女が世界各地を旅する短編集「ニケの冒険譚」。作者の体験を元に書かれた世界中の美しい景色に、幼いイレイナの心は強く惹かれていました。ニケのような冒険を夢見るイレイナに母は魔女になることを勧めます。そうして魔女になったイレイナは「灰の魔女」という名前で呼ばれ、旅に出ることになったのです。最初に訪れた国は「魔法使いの国」。この国には魔法使い以外は入国することが出来ません。国の入り口では入国の審査があり、ほうきで満足に飛べることが入国の最低条件とされています。魔女のブローチを持っているイレイナは、傍から見てもすぐに魔女と分かるため、入国審査の必要はありませんでした。
魔法使いの階級
魔法使いには3つの階級が存在します。魔法を使える人間は魔道士と呼ばれ、魔法が使えるかどうかは遺伝によるものがほとんどです。女性は試験に合格すると魔女見習いに昇格し、そこからさらに修業を積み、正式な魔女として認められると、魔女の証のブローチと名前が贈呈されることになっています。イレイナも正式に魔女と認められて「灰の魔女」と付けられたのですね。魔女見習いの試験は非常に難しく、一回の試験での合格者は一人ととても狭き門なのです。イレイナは15歳で魔女見習いの試験に合格しているので、ものすごく優秀だということになりますね!
人騒がせな少女
空の散歩を満喫するイレイナ。看板には「空を飛ぶことを推奨する」と書いてあり、魔法使いの国ならではですね。そんなイレイナに突然箒の操作もままならない少女が突っ込んできます。屋根を壊してしまい慌てる少女ですが、イレイナが屋根を直し、少女の傷も治します。何かお礼をと言う少女でしたが、イレイナは周囲の確認をして飛ぶように注意してその場をさりました。
歓迎されないイレイナ
魔法使いの国において魔女とは「最高位」。どの場所でも歓迎されるはず・・・と思っていたイレイナでしたが、どこに行っても小娘扱いされ、まともに取り合ってもらえません。とりあえず寝床を確保する為に宿屋を訪れたイレイナ。そこには先ほどぶつかった少女がいたのでした。少女の名はサヤ。魔法が下手くそなサヤは箒に乗る練習中に考え事をして、操作が上手くできなくなりイレイナに突っ込んだのでした。宿に泊まることにしたイレイナは「魔女割引」があることに気付き、記入しようとしますが、サヤは魔道士用の方に記入するように言います。自分は魔女だと言い張るイレイナでしたが、サヤとぶつかった時に魔女の証であるブローチを落としていたのでした。ブローチがなければ魔女の証明は出来ません。小娘扱いされていたのも仕方がないですね。
先生をすることになるイレイナ
慌ててブローチを探しに戻ったイレイナでしたが、ブローチは見つからず、諦めて宿に戻ることに。部屋に戻るとサヤが勝手に部屋に入ってきて、魔女になる昇格試験の極意を教えてくれと言います。妹と二人で魔女を目指していたサヤですが、妹は前回の試験に合格し故郷に帰ってしまいました。なんとか魔女になって故郷に帰ろうとするサヤは、イレイナに教えを乞うことにしたのです。必死なサヤの様子を見たイレイナはブローチが見つかるまでの間、サヤに魔法を教えることになるのです。イレイナにお願いするときにサヤは土下座していますが、故郷に伝わる伝統文化と言っているので、サヤの故郷は日本なのかもしれませんね。
ブローチの在り処
サヤに魔法を教えながらもブローチを探すイレイナ。サヤの魔法は上達していきますが、ブローチは一向に見つかりません。街に来て五日目、いつものように聞き込みをしているとおばさんかたブローチの情報を聞きます。なんとブローチはサヤが拾っていたのです。イレイナには一つの違和感がありました。魔法使いの国では箒で空を飛べることが入国の最低条件です。さらにサヤは東国から来ています。まともに飛べないほうがおかしいのです。妹に置いていかれたサヤは誰かと一緒にいたくてブローチを隠していたのでした。
サヤとの別れ
ブローチを隠したサヤですが、イレイナはサヤが悪い人だとは思っていません。一人であることを恐れるサヤに、一人であることの重大さ、そして自分も一人で戦うことが怖かったということを教えます。自分の帽子の予備を渡し、いつでも見守っていると励ましました。勇気を貰ったサヤはブローチを大泣きしながら謝罪し、ブローチを返しました。イレイナが魔法使いの国を離れてから六カ月、たまたま見かけた魔女統括協会の新聞には見習い魔女に昇格したサヤの姿がありました。
第二章 花の国
花の国を目指して広葉樹林の狭い道を飛ぶイレイナ。なかなか抜けない山道に後悔しながら進んでいましたが、山道を抜けるとそこには別世界のような花畑がありました。植物たちは営みの中で魔力を吐き出します。大自然は魔力の源とも言われ、森の中を飛び続けることが出来るのも、この植物たちのおかげなのです。イレイナが辿り着いた花畑には管理人はおらず、一人の女性が座っていました。この女性は花を摘みに来たのではなく、何か別の目的で来ているようです。イレイナが花の国へ行くことを伝えると、花束を届けて欲しいとお願いするのでした。
毒を持つ花
花の国に着いたイレイナは門兵に引き留められます。イレイナが持っていた花は毒を持っていて、魔法が使えない人間の心を狂わせるのです。その花を受け取った人間は花の住処に導かれて帰って来れなくなります。検閲して花を見つけては処分していますが、行方不明になるものも少なくありません。門兵の妹も行方不明になっており、気が立っていたのです。花の話を聞いたイレイナは花畑にいた女性のことを思い出します。門兵の妹を想う姿を見て、花畑の女性を説得してみようと思うのでした。
人気のない花の国
以前の花の国は恋結びの伝承があり、観光客で賑わっていました。花の毒が出回ってからも、美人の花売りがいた頃はまだ良かったそうです。しかし、その花売りがいなくなってからは、花の国には観光客はほとんどおらず、恋結びの伝承も失われつつあったのです。美人の花売りは元々観光客でしたが、花の国を気に入り、兄妹で引っ越してきました。娘が花売りを始めると一気に評判が広まり、たちまち人気者になりましたが、妹を溺愛していた兄はそれが気に入りません。妹を家から出さないようにすると、近親者で愛し合う不埒者というレッテルを貼られてしまいます。花の毒の影響もあり、徐々に観光客の減った花の国は、不埒者を見たがる野次馬ばかりが来るようになってしまったのです。それに激怒した兄は、遂にとうとう妹を家から完全に閉じ込めてしまいました。
花売りの名はアルテミシア
イレイナは花の国について教えてくれたおばさんに花の意味について尋ねます。ピンク色は「あなたを決して忘れない」、赤色は「あなたに会いたくてたまらない」、白色は「私の愛は生きています」、黄色は「拒絶」。イレイナが花畑で渡された花束は白い花の中に黄色が一輪入っていました。普通は合わせない組み合わせに違和感を感じるイレイナ。最後に花売りの名前は「アルテミシア」だと聞きます。行方不明になった門兵の妹こそ花の国の美人花売りだったのです。アルテミシアは心配性である兄を安心させる為に自ら花畑に来ていたのでした。しかし、花の毒に侵され帰れなくなった彼女はイレイナにメッセージを託したのです。愛する兄へ「来てはいけない」というメッセージを・・・。
第三章 資金調達
新たな国に着いたイレイナの課題は資金調達。一般的な物価は銅貨一枚でパンが一つ、銀貨一枚で格安の宿に一泊、金貨は高級なものを買うことが出来ます。イレイナの所持金は銅貨三枚に銀貨一枚。とりあえずパン代と宿代はなんとかなりそうなはずだったのですが・・・この国ではパン一枚で銅貨三枚、宿一泊で銀貨三枚と通常の3倍の値段だったのです。この国は最近即位した国王が硬貨を大量に偽造し、硬貨の価値は大暴落していたのです。このままでは食事も寝床も確保できないイレイナは占い師としてお金を稼ぐことになります。
国王からの依頼
必ず当たる(当てさせる)占いは国王の耳にも入り、王宮へと連れられるイレイナは国王から国の未来を占ってほしいと頼まれます。王はまだ若く、経済政策は側近に任せています。今回の硬貨のインフレも側近によるものでした。経済が上手く回っておらず、外交も上手くいっていないことは王もわかっています。しかし、側近を信頼している王は、どうしたらいいかもわからず、占いによって安心したかったのです。イレイナは王宮に一泊させてくれることを条件に国の未来を占うことを引き受けるのでした。
嘘つきはいつだって平然と
イレイナの活躍により、側近とその息子の悪事は暴かれました。二人は硬貨を偽造し、国を意図的に危機に陥れ、その責任を王に押し付けることで失脚させようとしていたのです。イレイナに国の未来を占うように頼んでいた王ですが、自らが国を引っ張っていかなければならないことに気付き、未来を知る必要はなくなったのです。側近が嘘をつき続けていたことを残念に思う王ですが、占いなんて出来ないイレイナも王に嘘をつき続けていたのですね。
第四章 魔女見習いイレイナ
十四歳で魔女見習いの昇格試験に合格したイレイナを両親は心から褒めました。しかし、イレイナに達成感はなく、魔女になるのも時間の問題だと本心で思っていました。魔女見習いが魔女になるには、師匠となった魔女に認められなければなりません。イレイナは師匠を探してロベッタに住む魔女全員を尋ねましたが、全て断られてしまいます。一回の試験で一人しか合格者が出ない狭き門を最年少が一発で合格したことに年上の魔女たちは良く思っていなかったのです。師匠がいなければ魔女にはなれません。母は森の奥に住んでいる「星屑の魔女」を尋ねることをイレイナに勧めるのでした。
「星屑の魔女」フラン
フランはイレイナの噂を知っていました。この魔女も弟子入りを拒否するのだろう・・・イレイナはそう思っていましたが、フランはイレイナが最年少で合格したことを素直に認め、快く弟子入りを許可するのでした。師匠に魔法を教わり、より高度な魔法を使えるように修練を重ねることを想像していたイレイナでしたが、フランの朝食を作り、食材を買いに行き、家事をしたりと完全なパシリのようになっていました。肝心の魔法に関しては自主練のみで何も教えてくれません。それでも自分を認めてくれたフランを信じて、言われたとおりに過ごすイレイナでした。
フランからの試練
フランの元に来て一か月。今まで何も教えてこなかったフランが試験として自分と戦うことをイレイナに言います。当然、イレイナが叶う相手ではありません。意地悪なフランにイレイナはとうとう泣き出してしまいます。さすがにやり過ぎてしまったと反省するフラン。実はイレイナの両親は、地元の魔女がイレイナを拒絶することを見越してフランに事前にお願いに来ていたのです。失敗を知らないイレイナの将来を心配して、とびっきり厳しい試練をお願いしていたのでした。しかし、イレイナに会ったフランは生意気なだけでなく、努力を欠かさず、魔女の素質を十分に持っていると判断し、厳しい試練を与えてもきっと我慢して乗り越えてしまうだろうと思ったのです。そこで、何もせず、我慢の限界に達した試験を持ちかけることにしたのです。フランが最初に教えた事、それは「嫌なことは嫌と言い、自分自身を守れるようになりなさい」ということでした。
「灰の魔女」イレイナ
フランの修業を乗り越え、認められたイレイナは「星屑の魔女」から正式に魔女として認められます。魔女の証であるブローチを貰い、「灰の魔女」という名前を与えられました。イレイナの髪の色からとった名前で安直な発想ですが、大好きなフランから貰った名前をイレイナは気に入っていました。
単行本第1巻のあらすじをご紹介(ネタバレ注意!!)まとめ
いかがだったでしょうか?大まかなストーリーはありますが、基本的に一章完結なので気軽に読みやすいのが良いですね。各章の最後は教訓のようなものになっているのが特徴的ですね!!おそらくアニメも一話完結なので見やすいと思います。