『銀河英雄伝説』ではラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーという2人の主人公を視点に物語が展開されています。その中でラインハルトの盟友として登場するジークフリード・キルヒアイスは、彼の副官として様々なサポートをしていきます。今回はキルヒアイスに焦点を当てて、どのような人物なのか魅力を考察していきます。
目次
友に身を捧げたキルヒアイス
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
ジークフリード・キルヒアイスは銀河帝国サイドの主人公であるラインハルト・フォン・ローエングラムの親友です。幼いころから共に過ごして育っており、軍に入ってからもラインハルトの半身として、彼の覇道をそばから支え続けていました。そんなキルヒアイスについて、彼の生い立ちや軍に入ってからの功績などを紹介していき、どこに魅力があるのかを考察していきます。
キルヒアイスの生い立ち
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
ラインハルトの側近として、銀河帝国の発展や彼の覇道をサポートしていたキルヒアイスですが、まずは幼少時代から見ていきましょう。幼い頃はどのように過ごしていたのか、また後の盟友ラインハルトとはどのような出会いがあったのでしょうか?幼い頃のできごとがキルヒアイスの人生を大きく突き動かしているため、ぜひチェックしてみてください。
ごく普通の子供として生まれたキルヒアイス
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
キルヒアイスは司法省下級官吏の息子として生まれ、ラインハルトとは違ってごく一般的な家庭で育っています。ラインハルトと出会うそれまではごく普通の少年として過ごしていましたが、彼と出会うと人生が大きく変わってしまうことに。また幼少期のキルヒアイスについて描写が少ないですが、それまで何かに打ち込んでいた様子はなく、ただ毎日を呆然と過ごしていたことが窺えます。
隣に引っ越してきたラインハルトと親しくなる
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
それまで何もなかったキルヒアイスの人生でしたが、ある日に隣の家にラインハルトが引っ越してくるのでした。彼との出会いは運命的なもので、同級生ということもあってすぐに意気投合して仲良くなります。ラインハルトは下級貴族であるため身分の差はあれども、分け隔てなく接している彼の優しさに触れたことで、キルヒアイスの人生は大きく変わっていくのでした。
アンネローゼに初めての恋をするキルヒアイス
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
人生の転機となったのはラインハルトとの出会いですが、キルヒアイスの心を奪ったのは彼の姉であるアンネローゼでした。初めて出会ったその時から初恋のような衝撃を受けますが、間もなくしてアンネローゼは皇帝の後宮として召されることとなり、喪失感も覚えます。アンネローゼを失ったことはキルヒアイスにとっても精神的なショックとなっており、ラインハルトとともに姉を取り戻そうと動き出すのでした。
ラインハルトと一緒に幼年学校へ入学
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
アンネローゼを奪われたラインハルトは帝国に対する激しいまでの憎悪をと募らせ、姉を取り戻すには吟人になって功績をあげることが近道と考えます。キルヒアイスもまた彼の考えに賛同して、ともに幼年学校へ入学するのでした。また入学前にはラインハルトから帝国を簒奪することを打ち明けられており、キルヒアイスはこの時にその身を友人のために捧げることを誓っています。
軍人となったキルヒアイスの活躍は?
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
幼年学校を卒業すると、キルヒアイスはラインハルトともに軍人の道を歩み始めます。ラインハルトの副官として傍に仕えていますが、親友の関係を維持しながらも主従関係のような目で周りから見られることに。それでもキルヒアイスはラインハルトの覇道を成し遂げさせるためにサポートし続け、彼の半身として様々な活躍をしています。そんなキルヒアイスの軍人としての活躍について見ていきましょう。
ラインハルトの副官として仕える
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
ラインハルトは帝国軍幼年学校を卒業すると軍に入隊し、ずっとラインハルトの側近として傍に仕え続けます。単なる部下ではあるものの、まるで主従関係のような間柄になっており、キルヒアイスも「ラインハルト様」と呼ぶようになるのでした。それも彼が帝国を簒奪するためにサポートに徹するという姿勢で、唯一の助言を送れる存在として活躍します。
ヤン・ウェンリーも評価するほどの腕前
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
副官として傍に仕え続けるキルヒアイスですが、ラインハルトから命令されれば単独で戦地へと赴くことがあります。そうして自由惑星同盟のヤン・ウェンリーと相まみえることとなり、両者は互角の戦術戦を繰り広げるのでした。ヤンはラインハルトの才覚を敵ながら高く評価していましたが、キルヒアイスにもまた同等の評価を与えています。同時にキルヒアイスのような部下を持っているラインハルトの人望にも触れ、厄介な相手と認識するのでした。
捕虜交換式では代表として出席
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
キルヒアイスは帝国歴488年に自由惑星同盟との捕虜交換式に帝国代表として出向いています。イゼルローン要塞で行われ、この時に自由惑星同盟のヤン・ウェンリーとユリアン・ミンツと直接顔を合わせました。その後もキルヒアイスは艦隊を率いて辺境を平定するなど、ラインハルトが帝国の実権を握るために行動しており、ローエングラム王朝が成立するまで奔走し続けます。
味方を一切傷つけずにお門閥貴族を崩壊させる
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
ラインハルトが帝国を簒奪するうえで大きな障害となっていたのが門閥貴族でしたが、キルヒアイスは味方の血を一滴も流すことなく、相手戦力を大きくそぐことに成功します。自ら800隻の艦隊を率いては、相手の艦隊には統一性なく混乱させるだけで大打撃を与えられると見抜き、結果的に大きな戦果を上げてしまいます。他にもキルヒアイスの大きな戦果はありますが、無血での勝利という点では彼の持つ才覚が大きく表れています。
副官としてのキルヒアイスの力量とは?
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
ラインハルトの側近として活躍するキルヒアイスですが、『銀河英雄伝説』ではラインハルトとヤン・ウェンリーを主軸において物語が展開されているため、彼の能力や力量については分かりにくくなっています。そこでキルヒアイスの副官としての力量について、これまでの活躍シーンからまとめてみました!ラインハルトの側近に足る存在なのか、その目で確かめてみてください。
副官として進言することが多いキルヒアイス
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
『銀河英雄伝説』に登場する提督の多くは自身の能力を過信して行動している様子が多く、優秀で生き残っている人物であるほど、部下からの進言を聞き入れています。ラインハルトはその中でも異質ですが、納得できる内容でなければ聞き入れません。しかしキルヒアイスの助言に関してはまとを得た内容となっており、素直に聞き入れていることから、彼の戦術眼を評価していることは間違いありません。
ラインハルトにはない視点を持っている
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
ラインハルトがキルヒアイスの助言を聞き入れている理由には、彼にしか持っていない独特の視点が理由となっています。天才と呼ばれるラインハルトは確かに戦場において圧倒的な力を見せつけて戦っていきますが、考えているのは戦略や展開ばかりで兵士は見向きもしていません。しかしキルヒアイスから兵士に休息を与えるべきと言われると、全く思いつかなかった内容に驚きながら実行します。キルヒアイスは戦術眼を持ちながら、同時にラインハルトにはない柔軟性もあることが分かります。
シェーンコップとも互角に渡り合う
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
幼いころから喧嘩が強かったという隠れた能力を持っているキルヒアイスは、白兵戦でも活躍を収めています。自由惑星同盟ローゼンリッター隊のシェーンコップと地上戦で互角に渡り合ったほどであり、さらに無重力状態においても優れた格闘術を披露しました。頭脳だけではなく身体的な強さも持ち合わせているキルヒアイスは、ラインハルトの副官として仕えておくにはもったいない存在と言えます。
ラインハルトと強い絆で結ばれているキルヒアイス
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
キルヒアイスとラインハルトは幼いころに運命的な出会いを果たしており、軍隊に属してからもその関係は切れることがありませんでした。2人が描かれているシーンを見ても明らかですが、彼らの間には強い絆が存在しています。そんなキルヒアイスとラインハルトの関係を象徴するエピソードから、いくつかピックアップしてみましたので、改めて2人の関係をチェックしてみてください。
軍人になってからは「ラインハルト様」に
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
幼いころのキルヒアイスは「ラインハルト」と呼んでいたのに対し、軍に所属してからは「ラインハルト様」と呼ぶようなります。ラインハルトはいつの間にか様付けで呼ぶようになったと語りますが、これは彼の側近として支え続ける決意の表れでしょう。それ以前に一般市民と下級貴族という身分差があるため不自然ではありませんが、ラインハルトはどうしてもキルヒアイスから様付けで呼ばれることに違和感を覚えている様子です。
上司部下でも変わらない関係
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
軍人となってからは固く誓い合った親友同士といえど、公私関係なくラインハルトを敬い続けているキルヒアイス。立場からも上司と部下の関係にありますが、それでも2人は親友同士であることには変わりありません。言葉遣いは丁寧なままであるものの、ラインハルトはキルヒアイスを信用しており、キルヒアイスもまたラインハルトを裏切ることはありません。その様子は後宮に入ったアンネローゼとの再会からも窺うことができます。
自ら盾となってラインハルトを救う
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
帝国を簒奪してアンネローゼを取り戻すという大きな野望を成し遂げるため、キルヒアイスはラインハルトの手となり脚となって、障害となるものを取り除いてきました。そうしてついに帝国の実権を握ったラインハルトですが、リップシュタット戦役終結後に襲われることに。絶体絶命のピンチでしたが、キルヒアイスが身を挺して凶弾を代わりに受けており、それがそのまま致命傷となって亡くなるのでした。
墓標に刻まれたひと言
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
ラインハルトの身代わりとなったキルヒアイスは、ローエングラム王朝が建てられると大公の地位を与えられます。誰もがキルヒアイスの死を悔みますが、ラインハルトもまた大きなショックを隠し切れず、自失状態となってしまいます。やがて彼の墓標に「Mein Freund(わが友)」とだけ刻み、ただひと言だけながらも、ラインハルトのキルヒアイスへの想いが全て込められています。
キルヒアイスはどんな人物なのか?
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
キルヒアイスは21歳という若さで亡くなりますが、それまでラインハルトの側近として測ることができないほどの功績をあげてきました。それは周りの軍人も評価しており、彼の存在の大きさを物語っています。そんなキルヒアイスはどのような人物なのか、数ある登場シーンの中から性格や魅力がよく表れている部分をピックアップしていきます。
軍人には珍しい清廉潔白な性格
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
キルヒアイスはラインハルトの足りない部分を補うかのようなキャラクターで、激情家であるラインハルトに対し、キルヒアイスは温和で人あたりのよい性格となっています。また時に非道な行為を厭わないという姿勢を見せるオーベルシュタインの意見にラインハルトは同調気味なり、キルヒアイスはその内容に異を唱えていました。これはキルヒアイスの清廉潔白な性格があっての発言で、あくまでクリーンに進みたいという思いが表れています。
軍人とは思えないほどいい人
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
人あたりの良い性格を持っているキルヒアイスは、「ごみダメの中でも美点を見いだす」「生徒の長所を伸ばせる教師」といったように、ラインハルトから長所を評価されています。見た目からもいい人の雰囲気が出ていますが、実際に地球教徒たちの人に対して親切な応対をしており、やはり「いい人」だと評判になりました。しかし「いい人ほど長生きしない」と予言めいたことを言われており、その通りとなってしまいます。
アンネローゼ以外の女性には興味を持たなかった
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
長身でありながら容貌にも恵まれているキルヒアイスは、昇進が続いていた頃に女性たちから注目されていたことがあります。しかしキルヒアイスの心にはアンネローゼの姿しかなく、他の女性からアプローチされても意に介していませんでした。また他の女性の魅力を感じたこともなく、キルヒアイスにとってアンネローゼは理想の女性そのものと言えるでしょう。
友のために戦った熱い男キルヒアイス
出典: 銀河英雄伝説 ©田中芳樹/Production IG/徳間書店
キルヒアイスは21歳という若さで亡くなりますが、それまでラインハルトの傍に仕え続け、最後の最後まで彼をサポートし続けます。まさしく友人のために戦ったと評価することができ、全てはラインハルトとアンネローゼの三人で過ごした日々を取り戻すための生涯だったと言えるでしょう。高い人気を誇る人物なだけに、早期に物語から退場してしまったのは悲しいことですが、それこそがキルヒアイスの存在の大きさを物語っています。