冬にアニメ放送が決定された「魔法科高校の劣等生 追憶編」について、ライトノベル版では漫画版とは異なり、司波深雪の心情や四葉家について、もう少し細かく語られています。今回は、ライトノベル版の最後に奥付された短編小説を中心に、四葉家に焦点を当てた解説をしていきたいと思います。(ネタバレ注意です‼)
あらすじ
以前、主に漫画版の「魔法科高校の劣等生 追憶編」におおむね沿って、解説しましたがライトノベル版「魔法科高校の劣等生(8)追憶編」では、その最後に「アンタッチャブル―西暦二〇二六年の悪夢―」という短編が挿入されています。この短編では、司波深夜、まだ彼女が幼く司波家に嫁ぐ前の四葉深夜だった頃、妹の四葉真夜との関係性やその人物像について語られます。漫画版では、達也に対して感情が欠如していた深夜でしたが、幼いころは冷酷な人物ではなく、真夜もまた、アニメで度々出てくる印象とはだいぶ異なります。
ライトノベル版で明かされる真実①
西暦2062年、数奇な定めか追憶編の深雪と同じ年齢12歳の四葉深夜。真夜が台北(タイペイ)で誘拐され、人体実験をされたと報告されます。心配する悲痛な表情と明確な怒りをもって深夜は、四葉家の主要メンバーのいる会議室に入ります。詰め寄る深夜に四葉当主である父の四葉元造が深夜に告げたのは「真夜は深い傷を負っている。身体の傷も深刻だが、もっと心配なのは心の傷だ……。深夜、お前の魔法で真夜の心からこの三日間の実感を奪え。」という残酷な命令でした。
ライトノベル版で明かされる真実②
記憶を感情から隔離する魔法。つまり他人が経験したもののように、自身の経験したことの実感を奪う、妹の12年間の思い出を無かったことにする魔法。深夜にしかできない精神構造干渉魔法。魔法が施され、目を覚ました真夜にはもう、その記憶には、実感はありませんでした。「私の今までは単なるデータになっちゃったのね。私は昨日までの自分を姉さんに殺されたのね。」その言葉に言い訳も謝ることもできず、深夜は病室から逃げるように泣きながら去ります。
ライトノベル版で明かされる真実③
真夜の心の傷を癒すための魔法は、結果的には永久に塞がることのない姉妹の溝を作ってしまいました。壊れた真夜の心にトラウマが残らないように、父から受けた命令を遂行した深夜の優しさは、その思いとは反対に、真夜にとっては自分のこれまでの人生をただのデータに編纂されてしまったショックなものでした。そのショックですらも実感できない真夜には、後天的に豊かな感情の存在しない姿を生成してしまったともいえるでしょう。
ライトノベル版で明かされる真実④
この短編「アンタッチャブル―西暦二〇二六年の悪夢―」を読むと、達也に手術を施したという深夜がただの冷酷な人間ではなかったことがわかります。そしてその深夜の優しさによる悲劇は真夜の性格を変質させ、深夜と真夜、四葉と司波の関係が悪くなる契機になってしまいました。また、アニメ本編でも四葉真夜に、司波兄妹が敵対視をしている場面が見られましたが、こちらも何かこの過去と関係してそうな様子がわかりますね。
ガーディアンについて。補足解説
四葉家はこの真夜の誘拐事件を重く鑑み、一族で特に優れた魔法素質を持つ者には、専属の護衛役つまりガーディアンをつけることにしました。深夜のガーディアンだった桜井穂波、そして司波深雪のガーディアンである達也の役職がこの事件を機に誕生しました。
まとめ
結果として真夜を誘拐し、人体実験した者たち4千人は研究施設ごと、わずか30人の四葉家に壊滅されましたが、この悲劇の後、深夜は自分を罰するように精神干渉魔法の過剰行使を行い、20歳になる前に体を壊しました。四葉家と深夜、真夜の関係は、のちの達也たちにも影響を与えている様子もあり、今回取り上げたこの短編は、とても重要な内容でもありました。この短編は追憶編にも直接関係してくるお話なので、冬公開予定の追憶編でアニメ化されるのか気になるところですね。