兵藤和也といえば、カイジの前に立ちはだかる帝愛グループの会長・兵藤和尊の次男坊で、初登場は「賭博堕天録カイジ」で、カイジと村岡が「17歩」というギャンブルをやっていた際に現れ、ピンチに陥っているカイジに金を貸し付け、負ければ肉体で返すといった理不尽な取引をしました。その後、村岡との勝負に勝ったカイジに感心し、今度はカイジに対して勝負を挑みます。そんな、和也ですが、作中では「愛よりも剣」という和也が書いた小説が登場します。和也の価値観や人間の本質を表した小説なのですが、これが意外に物語とは関係なく面白いです。今回はその和也が書いた処女作「愛よりも剣」を紹介します。
目次
１．和也が小説を書くことを志したきっかけは人間不信！？
兵藤和也は、帝愛グループの会長・兵藤和尊の息子です。もちろん生まれたときからお金持ちで、周囲には自分に気を遣う人ばかりでした。そのような環境で、育ってきた和也ですが、その反面、自分に接する他人に対しては、父親の威光によって気を遣われていることを理解しており、他人からどう思われているのかもわからない孤独や空しさを感じていました。しまいには、友人と思っていた相手全員から裏切られ、それ以降、人の善意や美点を信じることをやめてしまいました。そんな人間不信がきっかけとなり、現在の和也の価値観を構成しているといえるでしょう。和也から見れば、人間の本質は私益と保身であるとみています。
そんな和也でしたが、ある日作家になることを決意します。理由としては、親の威光ではなく、自力で認められたいという思いからでした。それで執筆されたのが、和也の処女作「愛よりも剣」です。
２．「愛よりも剣」は和也が実際に行ったギャンブルが基になっている
「愛よりも剣」は、作中でカイジも読んでいるのですが、文章としては素人そのものだったのですが、文章の中に迫りくるリアリティが感じられるという評価がなされています。このリアリティを可能とした理由としては、「愛よりも剣」が和也が実際に執行したギャンブルを元にして書いた小説だからです。実際に、自分の目で見たことであれば、どれだけ文章がへたくそでも、見た人にしか書くことができない描写ができることでしょう。
３．「愛よりも剣」の内容は、借金を踏み倒した男女への罰
ここからは、「愛よりも剣」の詳しい内容を書いていきます。物語は、借金をしていた男女がヤクザの組長から金を盗んで逃げようとしました。結果、逃げることはできず、組長につかまってしまうのですが、この男女に組長が罰を科します。
罰の内容は、足部分に2カ所、胴部分に5か所に剣を指す穴のある2つの箱に男女がそれぞれ入ります。罰には、剣9本、鉄板9枚が使われます。男女は、それぞれ順番に剣を好きな場所に刺していきます。運が良ければ刺した場所に鉄板が入っており、助かるのですが、なければ体に刺さります。９本全ての剣を指し終わったら終了です。運が良ければ、全ての剣を鉄板が入っている部分に刺すことができます。
４．罰が執行されていくにつれて現れる人間の本性がすごい！
最初は、男が女を守るために、自分の方に剣を刺すように求めます。ここでは2人の愛が現われていましたが、1本の剣が男の体に刺さってから状況は一変します。あまりの痛みに女を守ることを忘れ、女に自分の方にも刺すように求めます。ここからは見るに堪えない私利私欲の争いです。なんとか自分は生き残りたいという願望から、相手側に剣を刺し続ける両者、この2人にはもはや愛などはありませんでした。このように窮地に陥ったときには、愛や信頼などは崩れやすく、その先には本質的な私欲や保身が顔をのぞかせるという内容でした。
まとめ
和也が書いた「愛よりも剣」は、作中ではさらっとカイジが読んで、次に行きましたが、この中には和也の価値観が含まれているだけではなく、私たちにも共通する人間の本質的な部分が垣間見えます。これを読んで「愛よりも剣」が気になったら、カイジとは別に読んでみてください。
