週刊少年マガジンで連載されている『ランウェイで笑って』は、少年漫画としては珍しい服飾業界をテーマにした作品。しかし少年漫画らしい友情や努力といったテーマが描かれており、何よりファッションに興味がない人でも見入ってしまうほどの内容が大きな反響を呼びました。2020年1月からアニメ放送もスターする『ランウェイで笑って』について、今回は数々のドラマが展開される作中において、屈指の名場面を紹介していくことにしましょう。
目次
長谷川心と五十嵐の絆
服飾芸華大学の学園祭「芸華祭」において、長谷川心はモデル活動に専念するのか、それともデザイナーとしての道を進むのかの岐路に立たされます。五十嵐には感謝の気持ちがあるものの、モデルよりデザイナーとして生きていきたい想いが強くあった長谷川心。そのために全力を持って芸華祭で勝負に挑みますが、その直前、五十嵐に自作のスーツを手渡していました。そして当日、五十嵐は彼女が制作したスーツを着てショーを見にきており、長谷川心が感極まるシーンが描かれています。
モデル業を嫌がっていた長谷川心
181cmという高身長がコンプレックスだった長谷川心でしたが、五十嵐との出会いで向き合うようになります。しかしモデル業は自身にとって苦手なもので、そんな時に綾野麻衣から背中を押されると、デザイナーへの興味を強くしていくのでした。強引にモデルの世界に引き込もうとする五十嵐を苦手とする様子も散見されますが、本心では感謝の気持ちがあり、芸華祭のランウェイを歩く彼女の姿から窺えます。
長谷川心が作ったスーツを着た五十嵐
いつもはラーレフォーンのスーツを着て仕事をする五十嵐ですが、芸華祭では長谷川心から受け取ったスーツを着ていました。それはショーに向けて忙しい身でありながら、五十嵐のために作ったスーツであり、長谷川心にとって感謝の念などが込められたものでもあります。スーツを着てくれるか不安だった長谷川心でしたが、ランウェイで五十嵐の姿を見ると、作ったスーツを着ている彼女の姿を見て、感極まってしまうシーンが印象的であるばかりです。
藤戸千雪と長谷川心のタッグ
芸華祭では都村育人・長谷川心・綾野遠による対決が中心に描かれていますが、そこで注目すべきは、モデルとしても活躍する長谷川心。モデルとして活動するのか、デザイナーを目指すのかの岐路に立たされますが、藤戸千雪によって最後のチャンスを掴むことに。少なくとも都村育人よりは上の成績を収めれば、長谷川心がデザイナーを目指すことができます。そして藤戸千雪も、身長を理由にモデルの道を諦めさせようとする五十嵐を見返すため、2人はタッグを組んでショーに臨みます。
ショーのモデルは藤戸千雪のみ
長谷川心のショーでは、モデルを藤戸千雪のみ起用するという奇策に出ました。藤戸千雪がモデルとしての実力を披露するためであり、ステージ上に衣装を並べて、ランウェイ上での着替えを素早く行なうという過酷なものに。藤戸千雪の負担はかなり大きなもので、身長を少しでも伸ばすために高いヒールを履くなど満身創痍でした。しかし藤戸千雪は観客席からみていた都村育人に助けられ、与えられた役割をしっかりとこなしていきます。
芸華祭で繰り上がり優勝
ショー終盤では、長谷川心もモデルとして参加します。圧倒的な高低差のある2人のモデルがランウェイを歩いたことで、藤戸千雪の身長の低さが露呈してしまう結果に。しかし身長の低さを感じさせない存在感を放っていたため、観客席はもちろん審査員たちも息を呑むほどのパフォーマンスとなりました。そして長谷川心は最終的に2位となりますが、優勝した綾野遠が辞退したため、繰り上がりで優勝を果たすことになります。
我々はファッションの奴隷だ
『ランウェイで笑って』において天才的はセンスを発揮する綾野遠は、将来のトップデザイナーとして嘱望されている存在。それゆえに誰もが彼のショーを心待ちにしていました。ついに綾野遠の出番が回ってくると、モデルやフィッターなどのスタッフたちに声をかけます。「我々はファッションの奴隷だ」というセリフは彼の名言であり、どれだけファッションに対して向き合ってきたのかを感じさせる迫力のシーンとなっています。
高い実力を見せつけた綾野遠
結果的に言えば、審査員は満場一致で綾野遠が優勝に相応しいと評価を下しました。それほどセンシティブな衣装をデザインしただけでなく、ショー自体も日常と非日常を並べて歩かせるという策に出ており、他を圧倒するパフォーマンスだったと言えるでしょう。デザインの詳細な評価にしても、全体の奇抜なデザインのみならず、色使いにおける細かな配慮も見て取れることから、当然の結果にならざるを得ません。
叔母である綾野麻衣との勝負に負ける
1位を獲得するも優勝を辞退した綾野遠は、密かにトップデザイナーであり叔母である綾野麻衣との勝負をしていました。綾野麻衣に勝つことで、親の七光りなどではなく、自分の力を証明できると考えていましたが、時代の流れもあって敗北することに。勝利すれば独立して自分のブランドを立ち上げる予定ではいましたが、卒業後はそのまま叔母の経営する「Aphro I dite」で働くことになります。
都村育人に勇気をもらった藤戸研二
藤戸千雪の父親である研二は、モデル事務所「ミルネージュ」を経営する社長です。藤戸研二は自分の娘に自信を持っていましたが、千雪の身長が伸び悩むと、一旦彼女を事務所から退所させています。普段こそ気さくに振る舞っているおじさんではありますが、ミルネージュの経営が傾くと同時に、千雪への期待や自信を失っていくように。しかし、都村育人から「千雪はすごいモデルになれる」と言葉をかけられると、いつから自分の娘に自信を持てなくなったのだろうと、涙ながらに反省する様子が描かれています。
娘をパリに連れていってほしいと懇願
ミルネージュの経営が傾くようになったのは、社交場で千雪の方がシャルロット・キャリーよりも優れているという発言をしたのがきっかけです。世界のファッション業界におけるドンとも言える存在のオリヴィア・キャリーの目に止まってしまい、彼女の手によって業界で生きづらくされてしまうのでした。しかし藤戸研二はあらゆる手段を使ってミルネージュを存続させます。あと半年くらいの余命しかない状況下、藤戸研二は最後の希望として、都村育人に千雪をパリに連れていってあげて欲しいと懇願します。
自分の娘に自信を無くしていた
都村育人にお願いするよりも、柳田一や親友の航の力を使って何とかしようとしますが、それでも手遅れの状態にありました。必死で足掻いた先に見出した一筋の光明が、都村育人だったというわけです。全ての事情を彼に話した研二は、少し悩みつつも、千雪とパリに行こうとする彼の姿に驚きを覚えます。そして千雪は自分の力でパリに行く、それは彼女がすごいモデルになると思うからという言葉を聞くと、いつから自分の娘に自信を持てなくなったのだろうと、深く反省するのでした。
藤戸千雪が一番魅力的になれる服
身長が158cmで伸びとどまった藤戸千雪は、一度ミルネージュを退所させられています。その後も執拗に所属オーディションを受けており、全ては「ミルネージュのモデルとしてパリコレに出る」という夢を叶えるためでした。しかし何度オーディションを受けようとも、身長が大きな理由になって合格できません。そんな状況にある中、藤戸千雪は被服部唯一の部員である都村育人と出会い、彼に「一番魅力的になれる服」を作ってもらうのでした。
都村育人の服でオーディション合格
都村育人にお願いして作ってもらった「一番魅力的になれる服」は、藤戸千雪が持っているミルネージュブランドの服を寄せ合わせて製作したものでした。それまで追い返されるように扱われていた藤戸千雪でしたが、パリコレ出演経験を持つ雫は、彼女が歩く様子をパリ・コレクションのランウェイと重ねてしまいます。99%実現不可能な夢だろうと感じつつも、雫は1%の期待に賭けて、藤戸千雪に合格を出します。
心から良い表情になる藤戸千雪
オーディション合格を掴み取った「藤戸千雪が一番魅力的になれる服」ですが、その後も宣材写真を撮影する場面でも着用されています。様々な衣装を着て、様々な表情を見せる藤戸千雪でしたが、カメラマンは納得いかない様子。しかし藤戸千雪が都村育人に作ってもらった服を着ると、たちまち彼女が身にまとう雰囲気が変わり、ファインダーから覗き込んだ藤戸千雪の表情も、柔らかな笑顔となっていました。心から笑顔になっており、カメラマンもその様子を見て、幸せになっていることを感じています。
ランウェイで笑った藤戸千雪
ランウェイを歩くモデルは、基本的に笑ってはいけません。しかし藤戸千雪は初めてのランウェイを歩くと、折り返し地点でヒールが折れてしまった影響で転んでしまいますが、都村育人の仕掛けが発動します。会場はトラブルでざわつくのではなく、形が変わった服に見惚れてしまい、藤戸千雪も状況を誤魔化すようにして笑顔を見せるのでした。ファッションショーの常識を覆した瞬間で、タイトル名の回収ともなった印象に残るシーンの1つです。
都村育人との初めてのタッグに
主人公である都村育人とは、まだ出会って間もない時期ではありましたが、藤戸千雪は初めてタッグを組むことになります。とはいえ、ファッションデザイナーの都村育人ではなく、まだ柳田一のブランドのアルバイトとして関わったにしかすぎませんでした。ただこの時のできごとがきっかけで、都村育人はファッションデザイナーの夢を強くしていくことに。藤戸千雪もまた、モデルとしての夢を強く追いかけるようにもなります。
折り返し地点で転んでしまうも…
藤戸千雪は158cmと小柄なモデルであるため、高いヒールを着用して誤魔化すしかありません。しかし彼女が履いたヒールはランウェイの折り返し地点で折れてしまい、その影響で藤戸千雪はバランスを崩してしまうのでした。ただ都村育人が急ピッチでフィッティングさせた衣装は変形するように改良されたものだったため、逆に功を奏する形に。もしも藤戸千雪が転ばなかったら変形することもなかったでしょうから、偶然が重なってショーが成功します。
初めて買ってもらったデザイン
芸華祭において、都村育人は自身に置かれている境遇に絶望します。母親が体調を悪化させてしまい、芸華祭どころではなくなるだけでなく、高額な入院費が必要になってしまうのでした。夢を諦めざるを得ない状況になった都村育人は自暴自棄になりますが、そこで藤戸千雪の父親である研二から連絡が入ります。物語冒頭での「服を買い取らせてほしい」という話を再び持ちかけ、都村育人はもう一度デザイナーの夢を追いかけられるようになります。
資金難で苦しむ都村育人を救うことに
高額な入院費を支払う必要が出たため、芸華祭を諦めるのはもちろんのこと、アルバイトをしなければならない状況になった都村育人。しかし藤戸研二から「藤戸千雪が一番魅力的になれる服」を買い取りたいと再び申し入れられ、これが200万円という金額になるのでした。入院費の問題が解決することになり、都村育人は改めて芸華祭に集中できるようになります。
その後も都村育人を支援する藤戸研二
藤戸研二が都村育人を支援するのは、服を買い取っただけにとどまりません。芸華祭の後は高校を卒業して、やがて一人暮らしを決断した都村育人は、彼の好意に甘えて賃貸を借りることに。それはミルネージュの社宅として使われていた家で、最上階には藤戸千雪が住んでいるマンションでもありました。ただ、研二が都村育人を支援する理由は、自分の娘をパリコレに連れていってほしいという願いも隠されています。
都村育人初めてのファッションショー
芸華祭ではライバルたちとの戦いになりますが、同時に都村育人にとって初めてのファッションショーに。数々のトラブルを経て本番を迎える都村育人は、とにかく楽しもうという気持ちで臨みます。10着を用意して挑んだ初めてのファッションショーは、どれも会場を唸らせるものでした。次は何が出てくるのかという期待感にも満ちており、最後まで審査員を含めた人々を夢中にさせています。
世界を旅する服で勝負をした都村育人
都村育人が用意したコンセプトは、世界を旅する服というものでした。世界各国の伝統衣装の要素を取り入れながら、着る人に寄り添った服を仕上げており、着用したモデルからも好評を得ています。9着目まではワクワクさせる内容になっていましたが、最後の10着目に関しては、ファッションショーでは意外なシンプルな服を送りだします。10着目こそ都村育人というデザイナーの本質が現れており、誰もが着られる服を作りたいという彼の想いが詰まったものとなっていました。
綾野麻衣を唸らせたセンス
日本のトップブランドである「Aphro I dite」の綾野麻衣は、都村育人のセンスを称賛します。誰もが10着目にどんな服を持ってくるのかを期待していましたが、自身のブランド持つ彼女は、自分ならこうするという確固たる考えを持っていました。そして彼女もまた、都村育人の仕掛けに同意しており、以降から彼に注目するように。芸華祭の結果は堪えるようなものでしたが、都村育人の将来を考えれば、大成功だったと言えるでしょう。
まとめ
『ランウェイで笑って』ではファッションショーを中心に物語が動いていきます。ただ目標に向かって動く中で、様々なトラブルが発生して乗り越えていく様子もあり、名場面はショーだけにとどまりません。特に、都村育人と藤戸千雪が一緒にパリコレに出ようと誓い合う様子から、互いにノンストップで駆け上がっていく様子も見ものです。果たして2人が共演する日はいつくるのか?そしてそれまでに名場面がどれだけ誕生するのかが、とても楽しみで仕方ありません。