『CITY THE ANIMATION』は、あらゐけいいち原作の漫画『CITY』をテレビアニメ化した作品です。日常の中に潜むシュールな笑いと個性的なキャラクターたちが魅力で、名言集として語り継がれるセリフも数多く生まれています。京都アニメーション制作による約6年ぶりの新作アニメであり、「『楽しい』が、あいことば」「笑いあり、ラブあり、ホロリあり」と銘打たれた青春日常ギャグ作品でもあります。公式紹介文でも「笑いあり(プププッ)、ラブあり(キュンキュン♡)、ホロリあり、住人たちが織りなす予測不能な平凡ライフ!ワクワクが連鎖するCITYへようこそ。」とうたわれており、ギャグ満載ながら心温まるメッセージ性も併せ持つ本作。その世界観やキャラクターの名言を、作品ファンがさらに楽しめる視点で徹底解説します。
あらゐけいいちの世界観とは?
『CITY THE ANIMATION』は、『日常』で知られるあらゐけいいち独特の世界観が全開の作品です。内容としては特定の壮大なストーリーがあるわけではなく、CITY(シティ)と呼ばれる街に暮らす人々の日常を描いたオムニバス的な構成になっています。しかし実際には個性が爆発したキャラクターたちが巻き起こす波乱万丈で奇想天外な騒動の連続であり、何が起こるか予測不能なシュールギャグの応酬となっています。まさに「あらゐ節」ともいえるナンセンスコメディの世界観で、頭を空っぽにして笑えるドタバタ劇でありながら、その笑いの中に知的な遊び心やメッセージ性を感じさせる点が特徴です。
アニメ版の監督・石立太一氏(『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』監督)は、本作について「ギャグではなくコメディー」だと捉えています。腹を抱えて笑うというよりはクスっとさせられる笑いの中にインテリジェンスを感じさせ、「見ている方の感受性を刺激したい」という思いがあると語っています。このように、単純なお笑いに留まらず考えるほど味わいが増すのがあらゐ作品の世界観であり、『CITY』でも読み進めるほど「面白みや味わいが増してくる」ことに監督自身が感嘆したといいます。
「日常」との共通点と相違点
『CITY』はあらゐけいいちの代表作『日常』としばしば比較されます。実際、作中には『日常』と世界観が共通しているような描写も見られます。原作コミックス第1巻の帯には「『日常』のあらゐけいいち最新作。このCITYの日常は、彼女が繋ぐ。」とのコピーと共に、『日常』の主人公・相生祐子が『CITY』主人公の南雲美鳥へバトンタッチするイラストが描かれていました。アニメ版でも、第2話に「長野原大介」という漫画家の先生が登場し、『日常』で漫画家志望だった長野原みおとの繋がりを匂わせるシーンが話題になりました。ファンの間では「同じ世界で物語が展開しているのでは?」という声も上がっており、細部に遊び心あるクロスオーバーが仕込まれています。
共通点としては、どちらの作品も「何気ない日常」を舞台に突飛な笑いを描く点、そして登場人物たちのリアクションや関係性から生まれるコメディである点が挙げられます。違いとしては、『日常』が高校という限られたコミュニティでのエピソード中心だったのに対し、『CITY』は大学生や街の住人まで幅広い年代が入り乱れる分、スケールが一段階広がっています。主人公格も『日常』では相生祐子ら数名でしたが、『CITY』では南雲・にーくら・わこの女子大生3人組をはじめとする「街そのものに住む人々」全体が主役と言える構成です。実際、石立監督も原作を読んで「この作品の主人公は“CITY(街)”なんだ……と受け取り、すごい!と感嘆した」と語っています。つまり、『CITY THE ANIMATION』では街ぐるみで巻き起こる騒動が描かれ、“CITY”という舞台そのものがドラマを生み出す点がユニークです。
また『日常』に比べると、『CITY』の方が若干キャラクターの年齢層が上がったことで、社会人やアルバイト、金欠エピソードなど少し現実的な題材のギャグも増えています。例えば主人公の南雲美鳥は常に金欠で家賃を滞納し、奇想天外な方法でお金を工面しようとしてはドタバタを引き起こします。そうした現実味のある悩みがベースにある分、大人ならではの共感を誘う笑いも含まれている点で『日常』との差別化が図られています。
石原立也や他スタッフとのコラボレーション
アニメ版『CITY THE ANIMATION』は、製作が京都アニメーション(京アニ)ということで大きな注目を集めました。京アニがテレビシリーズの新作を手掛けるのは約6年ぶりであり、しかも原作者が『日常』と同じあらゐけいいち先生ということで、「京アニ×あらゐ先生のタッグは最強だ」とファンも盛り上がりました。実際に監督を務めた石立太一氏は、2011年放送の京アニ版『日常』で副監督を担当していた経歴があり、満を持して同じ原作者の作品を今度は監督としてアニメ化する形となりました。
京都アニメーションの緻密な作画と演出は本作でも遺憾なく発揮されており、「漫画がそのまま動き出したかのよう」と言われるほど原作のテイストを丁寧に再現しています。スタッフ陣は「あらゐさんをびっくりさせたい」という想いで制作に臨み、当初背景美術などで新たな試みも模索しましたが、最終的には「漫画にしよう!」と徹底的に原作世界観を再現する方針に舵を切ったそうです。例えば「背景の線はキャラクターの線よりも細くする」など細かなルールまで設けて画面作りを統一し、視聴者には伝わりにくいほど細部にこだわっています。こうした京アニスタッフの職人芸と、原作者・あらゐ先生の世界観へのリスペクトが融合したコラボレーションは、本作のクオリティを飛躍的に高めています。
声優陣も京都アニメーション作品ではお馴染みの豪華キャストが揃い、小松未可子(南雲役)、豊崎愛生(にーくら役)、石川由依(わこ役)らが息の合った掛け合いを見せます。特に豊崎愛生さんは過去に京アニ作品『けいおん!』にも出演経験があり、本作で念願のメインキャストとして参加。「京アニさんとあらゐ先生の再タッグに一ファンとしてワクワクした」と語っています。音響監督の鶴岡陽太氏(『涼宮ハルヒの憂鬱』などで知られる)も迎え、音楽や音響面でも京都アニメーションならではの緻密さと遊び心が光ります。まさに制作スタッフ・キャスト一丸となって“楽しい”を追求した作品となっているのです。
CITY THE ANIMATIONの主要人物と名言
『CITY THE ANIMATION』には数多くのキャラクターが登場しますが、ここでは特に物語の中心となる主要人物と、その名言や魅力について見てみましょう。南雲美鳥・にーくら・泉わこの女子大生3人組をはじめ、彼女たちの周囲を取り巻く人々がドタバタ劇を繰り広げます。それぞれ強烈な個性を持ちながらも、不思議と憎めず愛らしいキャラクターばかりです。
わこちゃんの名言:何にでも“楽しさ”を見いだす視点
泉わこ(通称わこちゃん)は、モクメセイ荘204号室に暮らす20歳の女子大生で、南雲・にーくらと行動を共にする3人組の一人です。常にニコニコとマイペースで、周囲がドタバタしていても一人だけ飄々とした態度を崩さない不思議ちゃんキャラ。黒いネズミのような人形を「神様」として崇めたり、奇妙な趣味の雑貨をカバンに詰め込んでいたりと、挙動が読めない天然ぶりですが、その本質はとても純粋でポジティブです。
わこちゃんの魅力を象徴するのが、「何に対しても楽しいが詰まっている」という視点です。彼女はどんな物事にも面白さや喜びを見いだし、決して否定から入ることがありません。南雲とにーくらがワチャワチャ騒いでいる横で「あははははは!」と無邪気に笑い転げながら見守る様子は、まさに周囲の騒動さえ楽しんでいるようです。声優の石川由依さんも、わこ役を演じるにあたり「わこは自分を持ってブレない人。二人(南雲&にーくら)が暴れても真ん中でどっしり構えていて頼もしい」と評しています。もし世の中がわこちゃんのような人ばかりだったら世界は平和になる――そんな風に思わせるほど、ピュアでポジティブな名言メーカーと言えるでしょう。
劇中で特に印象的なわこのセリフとしては、例えば南雲たちの騒ぎを前に「楽しいねぇ~!」とニコニコ呟くような場面があります。どんな小さな出来事にも楽しさを見出すわこちゃんの姿は、『CITY』という作品自体が持つ「日常の中の楽しさ」を体現していると言えます。彼女の存在自体が作品の象徴であり、その名言や振る舞いから視聴者も「日常を楽しむヒント」をもらえるのではないでしょうか。
みんなで体育会系のノリを生むキャラクターたち
南雲美鳥(20歳)とにーくら(18歳)は、モクメセイ荘の住人で先輩後輩の間柄ですが、お互い対等にじゃれ合える抜群のコンビです。南雲は元・時定東高校の有名人で、運動神経抜群ながら無気力で金欠というギャップのある女の子。にーくらは高校時代から南雲に憧れていた後輩で、現在は南雲の悪巧みにツッコミを入れる良き相棒的存在です。この2人が揃うととにかくハイテンションなドタバタ劇が巻き起こり、時にはプロレスさながらの取っ組み合いツッコミに発展することもあります。
実は、アフレコ現場でもキャスト陣が「どんどん汗をかいていこう!」という体育会系ノリで収録に臨んでいたというエピソードがあります。にーくら役の豊崎愛生さんによれば、音響監督から「まずはのびのびとやってみる」という方針が示され、特にツッコミ役のにーくらは「笑わせるより笑われるタイプの笑い」で、とにかく必死に全力でツッコめばツッコむほど面白くなるキャラクターだと意識したそうです。豊崎さん自身、息が切れるほど全力で演じ、「現場のみんなで汗だくになるくらい体育会系のノリでやっていました」と振り返っています。その甲斐あって、南雲とにーくらのやり取りは画面越しにも勢いが伝わる痛快なものになっています。
作中でも、南雲の放つボケに対してにーくらが手製のハリセンで「コラーッ!」と突っ込んだり、時には南雲がにーくらにプロレス技を仕掛けたりと、まるで部活のノリのような汗と涙(?)のやり取りが展開されます。わきで見ている泉わこが「面白ーい!」と笑っているおかげで喧嘩にはならず、あくまで楽しいコメディとしてまとまるのもポイントです。また、南雲の大家であるオババ(立涌まつりの祖母)なども、超人的な身体能力で南雲を追い回す様子がまるでスポ根アニメのようだったりと、キャラクターそれぞれが全力でボケとツッコミを繰り広げるさまはどこか青春の汗臭さすら感じさせます。
このように、『CITY THE ANIMATION』のキャラクターたちは全員が主役。それぞれの掛け合いから生まれる名台詞や名シーンが作品を盛り上げ、視聴者にも「みんなでバカやれる青春っていいな」と思わせてくれます。南雲とにーくらのコンビが生む体育会系ノリの笑いは、本作の大きな魅力のひとつです。
作品を彩る名言ピックアップ
ここからは、『CITY THE ANIMATION』の中でも特に印象的な名言・名セリフをいくつかピックアップして、その背景にある笑いや意味を解説します。シュールなギャグからホロリとさせる一言まで、作品をより深く味わうために知っておきたいセリフが満載です。
爆笑必至のギャグセリフとその背景
- 「どうせやるなら一番楽しいやつがいい!」 – 第1話で主人公の南雲美鳥が放ったこの一言は、本作のテーマを端的に表す名セリフです。何か行動を起こすなら、退屈なものより一番楽しいことを選びたい!という南雲の貪欲なまでの楽しさ優先主義が表れており、視聴者も思わず「確かにその通り!」と笑ってしまう場面です。監督いわく、この南雲のセリフこそが作品全体のコンセプトでもあり、キャストにも「この言葉が『CITY』の概念です」と伝えたほど重要だそうです。南雲自身、直後に「楽しいことがいっぱいありすぎて選べねえ!」とも続けており、楽しさに目がない彼女らしいコミカルな悩みと言えます。
- 「(必死にツッコめばツッコむほど)それがコメディーになるタイプの笑い」 – これは作中の直接の台詞ではなく、にーくら役の豊崎愛生さんが語ったにーくらの笑いの本質です。にーくらは南雲のボケに振り回されてヘトヘトになりながらツッコミを入れるキャラですが、その全力すぎるリアクションこそが笑いを生むポイントになっています。劇中でも、にーくらが息も絶え絶えに「南雲さん勘弁してくださいよ~!」と泣き笑いで叫ぶようなシーンがあり、視聴者は彼女の報われない奮闘ぶりにクスッとしてしまいます。笑わせようとしているのではなく、真剣すぎて周りから笑われてしまう——そんなにーくらの健気さが滲む名言(?)と言えるでしょう。
- 「カポーン…(鹿威しの音)」 – 漫画家の鬼カマボコと編集担当の轟が向き合うシーンでは、お互い無言のまま沈黙が続き、間を埋めるように庭の鹿威し(水琴窟)の「カポーン」という音だけが響く…という異色の間(ま)コントが展開されました。セリフというより効果音ですが、その静と動のギャップに思わず吹き出してしまう名シーンです。緊張感MAXの二人の間で「いつ喋り出す?」「まだ沈黙?」とハラハラさせておいて、間の抜けた鹿威しの音がシュールな笑いを誘うという、アニメならではの演出でした。豊崎さんも「あの緊張感ある静のシーンが芸術的で好き」と語っており、音響まで駆使したギャグ演出が光る名場面です。
これら以外にも、『CITY THE ANIMATION』には思わず笑ってしまうギャグセリフが数多く存在します。南雲が家賃を取り立てに来た大家のオババに対して放った「ひぇ~許してくださいオババ様!」という悲鳴混じりの台詞や、南雲のバイト先の店長・真壁鶴菱の決めゼリフ「洋食屋だが蕎麦も茹でる!」など、その場のノリと勢いで生まれる瞬間芸的なセリフも魅力です。キャラクターたちが真剣だからこそズレた発言が際立ち、視聴者には忘れられない名言として心に刻まれるのです。
物語に込められたメッセージ性
ギャグアニメと思われがちな『CITY THE ANIMATION』ですが、その名言の中には作品のメッセージ性やハートフルな要素が垣間見えるものもあります。実はアフレコ開始時、石立監督からキャストに「テーマは“楽しい”」そして「CITYの住人たちは優しさで暮らしている」と説明があったそうです。豊崎愛生さんはその言葉を聞いて、「楽しくて優しい作品」というテーマを最後まで忘れないよう心掛けて演じたと語っています。つまり、本作には「日常の中に楽しいことを見つけて、人に優しく生きる」という暖かいメッセージが底流としてあるのです。
南雲の「どうせやるなら一番楽しいやつがいい!」という名言も、一見ただの能天気な発言に思えますが、裏を返せば「人生せっかくなら楽しいことを追求しよう」という前向きなメッセージです。さらに南雲は常々仲間思いで、困っている友人を放っておけない一面もあります。例えば物語後半、意外なキャラクター同士の友情や助け合いが描かれるエピソードでは、登場人物が何気なく発した「君がいてうれしい」という言葉にハッとさせられる場面もあります。笑いの合間にふと差し込まれるこうした優しさのこもったセリフが、作品全体にホロリとする温かみを与えているのです。
また、泉わこちゃんの存在もメッセージ性を語る上で欠かせません。彼女は何に対しても否定をせず「楽しい」を見出す人柄で、周囲を肯定して包み込むような優しさがあります。「世界はこんなにも楽しいことで満ちている」——そんな風に感じさせてくれるわこちゃんの言動は、視聴者にもポジティブな影響を与えてくれるでしょう。実際、石立監督も制作にあたり「スタッフやキャスト、音楽、音響…いろんな方々の“楽しい”を合体させた。それを受け入れてくれる作品の懐の広さに救われた。苦労より“楽しい”が勝っていました」と語っています。まさに「楽しい」が合言葉の本作にふさわしい製作姿勢と言えます。
『CITY THE ANIMATION』の名言たちは、我々に日常の中で忘れがちな大切なこと——笑うことの大事さ、仲間と過ごす楽しさ、そして人への優しさ——を思い出させてくれます。ギャグの奥に潜むこうしたメッセージを読み取れば、作品はさらに味わい深いものになるでしょう。
まとめ:『CITY THE ANIMATION』の名言がくれる日常の笑いと発見
『CITY THE ANIMATION』は、シュールな笑いに満ちたギャグアニメであると同時に、見終わった後に心にポッと灯がともるような不思議な温かさを持った作品です。南雲美鳥の「どうせやるなら一番楽しいやつがいい!」という名言にはじまり、泉わこの何事にも楽しみを見出す純真さ、にーくらの全力ツッコミが生む笑いなど、各キャラクターのセリフや行動が私たちに日常を楽しくするヒントを与えてくれます。
笑いあり、ラブあり、ホロリありのCITYライフは、決して特別な世界の物語ではなく、私たちの身の回りの平凡な日常とも地続きです。だからこそ、『CITY THE ANIMATION』の名言の数々は現実の私たちの胸にも響き、「今日一日ちょっと楽しいこと探してみようかな」という前向きな気持ちにさせてくれるのではないでしょうか。実際、作品を貫く合言葉は「楽しいが、あいことば」。南雲やわこたちが教えてくれるように、どんな日常にも小さな笑いや発見が潜んでいるはずです。
最後にもう一度、『CITY THE ANIMATION』の世界に思いを馳せてみましょう。シュールだけどどこか優しいあの街の住人たちの声が聞こえてきたら、あなたの毎日もきっと今までよりちょっと愉快で愛おしいものに変わっているはずです。「楽しい」をキーワードに、日常を豊かにしてくれる名言の数々を胸に刻みつつ、『CITY THE ANIMATION』という作品をこれからも存分に味わってください。今日もきっと、“一番楽しいやつ”があなたを待っていますよ!