新作アニメ『CITY THE ANIMATION』は、『日常』で知られる漫画家・あらゐけいいち先生の原作漫画『CITY』を映像化した青春日常コメディ作品です。2025年7月よりテレビアニメが放送開始され、京都アニメーション(京アニ)が約6年ぶりに手掛ける完全新作ということで大きな話題を呼んでいます。普通の“CITY(街)”に暮らすちょっと風変わりだけどどこか憎めない人々の日常を、テンポ良いギャグと温かみのある描写で描く本作は、「『楽しい』が、あいことば」「笑いあり、ラブあり、ホロリあり」と公式に銘打たれており、笑えるだけでなく心にじんとくる魅力も秘めています。この記事では、『CITY THE ANIMATION』の魅力や見どころを余すところなく徹底解説します。原作ファンも未読の方も、本作の魅力を知ればきっと観たくなること間違いなしです。
目次
『CITY THE ANIMATION』とは?
まず、『CITY THE ANIMATION』がどんな作品か概要を押さえておきましょう。原作『CITY』は講談社の雑誌「モーニング」にて2016年から連載された、あらゐけいいち先生によるシュールな日常ギャグ漫画です。作者の代表作『日常』の系譜を継ぐ「ガールズ・ラン・コメディ」と称されており、一文無しの女子大生・南雲美鳥(なぐも みどり)を中心に、彼女の周囲に集う個性派な登場人物たちの日常がドタバタ劇として展開されていきます。原作コミックスは現在14巻まで刊行されており、アニメ化を機に2024年末から連載も再開されました。
アニメ版『CITY THE ANIMATION』は、京都アニメーションが制作を担当しています。京アニがテレビシリーズの新作を手掛けるのは約6年ぶりであり、しかも原作者が『日常』と同じあらゐけいいち先生という組み合わせから、「京アニ×あらゐワールド」にファンの期待が集まりました。物語は「この街、ただの街にあらず」というキャッチコピーが示す通り、何気ない日常の裏側で次々と起こる奇想天外な出来事を描いたオムニバス的構成です。大学生の南雲美鳥、その後輩のにーくら、不思議少女の泉わこという3人組を軸に、街の住人たちの予測不能なエピソードが展開していきます。笑いに次ぐ笑いの中にもほんのりとメッセージ性や人情味が感じられるのが特徴で、観終わった後には心が温かくなる新感覚の日常アニメとなっています。
物語の舞台と主要キャラクター
『CITY THE ANIMATION』には魅力的なキャラクターが数多く登場します。舞台となる街「CITY」で繰り広げられるドタバタ劇は、主人公の南雲をはじめとする登場人物たちの個性によって生み出されていると言っても過言ではありません。ここでは主要キャラクターと、そのキャラ同士の関係性や見どころを紹介します。個性的すぎる住人たちの関係性が絡み合い、どんな化学反応を起こすのかも本作の醍醐味です。
南雲美鳥:自由奔放なトラブルメーカー
南雲美鳥(なぐも みどり)は本作の主人公であり、物語の発火点になることが多いトラブルメーカーです。モンブラン大学モンブラン学部2年生の20歳。男勝りで大雑把な性格で、楽しいことや悪巧みに目がない一方、細かいことや地道な努力は大の苦手という典型的な楽天家です。趣味は競馬や麻雀というギャンブル好きで、常に金欠のためお金への執着は人一倍あります。そのため家賃を滞納してはアパートの大家(通称オババ)に追い回され、街を舞台にした珍騒動を巻き起こすのが日常茶飯事となっています。
南雲の魅力は、何といってもその破天荒な行動力と憎めない人柄です。高校時代は抜群の運動神経で各部活のエースを次々打ち負かす伝説的存在だった過去を持ちますが、現在は無気力でだらしない生活を送っており、いつもお腹を空かせては友人にタカっています。それでも根はピュアで仲間想いな一面もあり、怖がりだったりお化けが苦手だったりと弱点も含めてどこか放っておけない可愛らしさがあります。洋食屋「マカベ」でアルバイトを始めますが、毎回遅刻ばかりで店長を呆れさせるなど自由奔放そのもの。それでも南雲がいると周囲はなぜか賑やかになり、南雲の存在自体が場を明るくするムードメーカーになっているのです。
にーくら&泉わこ:息の合ったコンビネーション
南雲の隣人で友人となるにーくら(新倉)と泉わこは、南雲と共に行動することが多い女子大生トリオのメンバーです。にーくらはモンブラン大学1年生で南雲の後輩。18歳ながら南雲に対等に突っ込める貴重な人物で、常識人ポジションのツッコミ役です。高校時代から南雲の豪快な活躍に憧れており、ひょんなことから知り合って同じアパート「モクメセイ荘」の住人となりました。しっかり者ではあるものの多少腹黒いところもあり、南雲がお金をせびってきてもなんだかんだ相手をしてしまう世話焼きな一面があります。手作りのハリセン(紙の扇子)で南雲にビシッとツッコミを入れるのがお約束の芸で、ドタバタする南雲への最高の相棒(?)です。にーくら自身は将来カメラマンになるのが夢で、普段からカメラを持ち歩いている努力家でもあります。
一方の泉わこはモンブラン大学2年生で20歳。南雲たちとは年齢は同じですが、性格はマイペースで天然系、いわゆる不思議ちゃんキャラです。にーくらの部屋の押し入れになぜか住み着いてしまい、成り行きで3人組の一員に加わります。常にニコニコと笑顔を浮かべ、周囲のドタバタもどこ吹く風で楽しんでしまう大らかな性格です。黒いネズミのような謎の人形を「神様」として崇めたり、自分だけの変わった趣味(謎の雑貨集めや奇抜なデザイン画を描く等)を次々繰り出したりと挙動は読めませんが、その本質はとても純粋でポジティブ。「何に対しても楽しいが詰まっている」という彼女の視点は、『CITY』のテーマを体現しているとも言えます。南雲とにーくらが大騒ぎしていても、わこは無邪気に笑って2人の騒動すら面白がって見守っていることが多く、その飄々とした立ち振る舞いが逆に頼もしく感じられるキャラクターです。
この南雲・にーくら・わこのトリオの掛け合いは本作最大の見どころでしょう。破天荒なボケ役の南雲、それに鋭くツッコむにーくら、そしてマイペースに笑顔で場を和ませるわこという三位一体のコンビネーションが生み出すテンポ感は抜群です。会話の噛み合わなさやテンションの差から次々と生まれるズレたやり取りは、「ゆるくてじわじわ笑える」独特の空気感を醸し出しています。声優陣の息もぴったりで、3人が繰り広げる日常のやりとりを見ているだけでクスクス笑いが止まらなくなるはずです。
街全体がキャラクター? 個性派サブキャラたち
『CITY THE ANIMATION』に登場するサブキャラクターたちも、とにかく濃い面々ばかりです。舞台となる街そのものがまるで一つのキャラクターのように、生き生きとした住人たちで満ち溢れています。南雲たちが暮らす木造アパート「モクメセイ荘」の大家であるオババ(本名不明)は、その代表格でしょう。孫ほど年の離れた南雲を素手で取り押さえるほどの化け物じみた身体能力を誇る強烈キャラで、家賃の取り立てに命を燃やす姿はある意味作中最強です。南雲がどんなに逃げても壁を走って追いかけてくるオババとの追跡劇は爆笑必至で、本作の名物シーンとなっています。
南雲がバイトする洋食屋「マカベ」の店長・真壁鶴菱(まかべ つるびし)は職人気質ながら妙にノリが良いおじさんで、彼を中心とした真壁家もユニークです。真壁家の長男・立涌(たてわく)は高校生でサッカー部員ですが補欠で、密かに想いを寄せる少女に近づくため奇策を弄したりと青春しています。立涌の妹・まつりは中学生で親友のえっちゃんと勝手に部活動を立ち上げて遊ぶトラブルメーカーコンビです。また鶴菱の義父である謎の老人安達太良博士は、真壁家に恨みがあるらしく店の周囲にこっそり監視カメラを仕掛けていたりします。さらに安達太良家は大家族で、それぞれに濃すぎるキャラ設定(長女はドジすぎて皿72枚割りの記録保持者、双子の小学生姉妹はいつもケンカばかり、など)が笑いを誘います。
他にも、南雲たちが暮らす街の無料情報誌『週刊CITY』編集部では、新人編集者の轟くんが連載漫画『落胆くん』担当として奔走しており、その作者で漫画家の鬼カマボコ先生はいつもネタ切れで泣きながら締め切りに追われています。学校関係でも、南雲やにーくらの母校「CITY南高校」の生徒たち(立涌や、泉わこの妹でハッカー女子高生の泉りこ等)や教師までもが何かと一癖あり、街中で起こるイベント「CITYレース」では老若男女入り乱れて大騒ぎになるなど、街全体が舞台のドタバタコメディが展開します。まさに個性派揃いの住人たちが織り成す群像劇こそ、『CITY THE ANIMATION』の大きな魅力です。シリアスな悪役などはおらず、みんな何だかんだ憎めない人ばかりなので、観ていて嫌な気持ちになることはありません。それぞれのキャラが主役になれるくらい濃い存在感を放っており、「登場人物全員が主人公」というキービジュアルのコンセプトもうなずけます。お気に入りの脇役キャラを見つけるのも本作の楽しみ方でしょう。
『CITY THE ANIMATION』の名言・ギャグシーン
笑いを誘うギャグシーンや、思わず引用したくなるような名言セリフも『CITY THE ANIMATION』の見どころです。日常会話の中に不意に飛び出すシュールな一言や、キャラクターの個性が溢れた迷ゼリフは数多く、生粋のギャグ漫画らしく名言集が作れるほどです。ここではその中からいくつかピックアップして、その背景と魅力を解説します。
思わず笑ってしまうセリフの背景
前述したように、南雲美鳥が家賃の取り立てから逃げる際に叫ぶ「ひぇ~許してくださいオババ様!」という悲痛なセリフは、作品を象徴するギャグシーンの一つです。普段は強気で図太い南雲が、相手がオババとなると子供のように泣きを入れるギャップがコミカルで、その場面を目撃した周囲の住人まで巻き込んだ大騒ぎになる様子につい笑ってしまいます。このセリフから分かるように、本作ではキャラクター同士の力関係すら笑いのネタになります。南雲にとってオババは絶対逆らえない天敵であり、その関係性が一言の悲鳴に凝縮されているのです。
また、泉わこの「何に対しても楽しいが詰まっている」という言葉も印象的です。わこはどんな物事にも面白さを見出す天真爛漫さを持っていますが、このセリフには作品全体のテーマにも通じる深い意味があります。例えば南雲とにーくらが些細なことで言い争っている時でも、わこは傍らで「あはははは!」と笑い転げています。その光景に「この子は本当に世の中全てが楽しいと思っているんだな…」と周囲が呆れるほど。しかし皮肉や否定から入らない彼女の姿勢は、一周回ってとてもピュアで前向きなメッセージに感じられます。観ているこちらも「どんな騒動も楽しんだ者勝ち」という気持ちにさせられる、わこの名言と言えるでしょう。
作品に込められたメッセージ性やテーマ
ギャグアニメとはいえ、『CITY THE ANIMATION』にはさりげなくメッセージ性やテーマが織り込まれています。作品全体を通して感じられるのは、「日常の中にある小さな幸せや面白さを見つけよう」という前向きなメッセージです。南雲たちの生活はお世辞にも順風満帆ではなく、金欠や失敗や騒動の連続です。しかし彼女たちはめげることなく、毎日を愉快に乗り越えていきます。どんなドタバタも仲間と笑い合えば乗り切れるし、むしろ退屈とは無縁の充実した日々になっているのです。
わこの存在が象徴するように、「この世のどんなことにも楽しさは詰まっている」「笑い飛ばせる余裕さえあれば人生はきっと豊かになる」というポジティブなメッセージが本作の根底にあります。また、南雲・にーくら・わこの関係性に見られるように、金銭の貸し借りから始まった奇妙な縁でも、助け合ったり一緒に笑ったりするうちに本当の友情へと発展していくという人と人との絆も丁寧に描かれています。最初は打算的だった南雲が、次第に仲間のために一肌脱いだり、にーくらも南雲を放っておけず世話を焼いたりと、ゆるやかに絆が深まっていく様子にはほろりとさせられる場面もあります。本作は笑いの中にそうした気付きや視点の転換をもたらしてくれる、奥行きのある作品なのです。
原作漫画『CITY』との違いと魅力
アニメ化作品を見るときに原作ファンが気になるのが、「原作との違い」です。『CITY THE ANIMATION』は原作漫画の魅力を最大限に活かしつつ、アニメならではの表現や追加要素で楽しませてくれます。ここでは漫画版との比較から、アニメ版の魅力を考えてみましょう。
マンガ独自の演出がアニメでどう活かされる?
あらゐけいいち先生の漫画は、コマ割りや間の取り方、独特の描き文字(効果音)など、紙媒体ならではの演出で笑わせてくれるのが特徴です。アニメ版ではそうしたマンガ独自のギャグ表現をどう再現するかが一つの鍵でした。先述の通り京都アニメーションは「漫画をそのまま動かす」方針で臨み、コマでの間やテンポ感を映像で巧みに表現しています。例えば登場人物がずっこける瞬間の間(ま)や、シュールなオチの後の静寂など、漫画で笑いを生むタイミングをアニメでもしっかり感じ取れるよう演出されています。原作の1コマ1コマを尊重しつつ、背景でちょっとした動きを加えたり音響効果を足したりすることで、原作以上の笑いに仕立てている箇所もあり、ファンにはたまりません。
また、声が付くことでキャラクターの魅力が倍増している点も見逃せません。南雲の豪快な高笑いや、にーくらのキレのあるツッコミ、わこのマイペースなおっとり口調など、声優陣の演技がキャラをさらに生き生きと感じさせてくれます。漫画を読んでいたときには頭の中で想像するしかなかった掛け合いが、アニメではプロの芝居によって臨場感たっぷりに楽しめるのはアニメ化の醍醐味でしょう。特にギャグ作品ではセリフの間合いや強弱が笑いに直結するため、演技力の高いキャストによって笑いのキレ味が鋭くなっている印象です。
加えて、アニメ版では映像だからこそ可能な視覚的なネタも散りばめられています。背景のポスターに遊び心のある文字が書かれていたり、モブキャラの動きが実は何かのパロディになっていたりと、細部まで凝った演出があるので、一度見ただけでは気づかないネタを探す楽しみもあります。原作に無いアニメオリジナルの小ネタを発見すると、原作ファンでも思わずニヤリとしてしまうでしょう。このように、漫画の良さを活かしつつアニメならではの工夫を凝らすことで、原作既読でも未読でも二重に楽しめる作品に仕上がっています。
あらゐけいいちファンが注目すべきポイント
あらゐけいいち先生のファンであれば、『CITY THE ANIMATION』には特に注目したいポイントがいくつかあります。まず一つ目は、作者の過去作品とのさりげない繋がりです。原作コミック第1巻帯のコピーにあった『日常』主人公から『CITY』主人公へのバトンタッチイラストは有名ですが、アニメ版でも第2話に登場した「長野原大介先生」(漫画家役のキャラ)が『日常』の長野原みおとの関連を匂わせて話題になりました。こうしたクロスオーバー的な演出は明言こそされないものの、ファンなら「ニヤリ」とできるサービス精神です。あらゐワールドが地続きである可能性を感じさせる遊び心は、ぜひ探してみてください。
次に、石立監督をはじめとする京アニスタッフ陣の原作愛もファン目線で注目です。石立監督自身が『日常』に関わっていたことや、徳山珠美キャラデザがあらゐ先生の絵柄を徹底再現している点、音響でも『日常』経験者の鶴岡陽太氏が参加している点など、「あらゐけいいち作品を大切に映像化しよう」という熱意が随所に感じられます。実際、制作スタッフは背景美術や作画の細部に至るまで原作のタッチを研究し、あらゐ先生の世界観へのリスペクトを持って取り組んだそうです。このコラボレーションにより生まれたクオリティの高さは、ファンにとって喜びと安心感をもたらすでしょう。
さらに、原作にはない新規描き下ろしイラストや企画も要チェックです。京アニ公式サイトやSNSでは、放送に合わせてカウントダウンイラストやスペシャルイラスト(バレンタイン、暑中見舞い、年賀状など)が公開されており、徳山珠美氏と美術監督の山崎詩央里氏が手描きしたミニキャラのキービジュアル第2弾なども話題になりました。これらはアニメ化によって生まれた嬉しいおまけ要素で、ファンなら見逃せません。エンディング映像にも注目で、原作のコマを再現したようなユニークな映像演出やキャラクターたちの日常のワンシーンが垣間見える作りになっており、ファン心をくすぐります。
総じて、原作ファンがアニメで注目すべきは「いかにあらゐワールドをアニメとして昇華しているか」という点です。京アニの高い再現度と遊び心によって、あらゐけいいち先生の魅力がさらに広がった作品になっていますので、ファンも新鮮な気持ちで楽しめるでしょう。
まとめ:『CITY THE ANIMATION』がもたらす新感覚の日常と笑い
『CITY THE ANIMATION』は、あらゐけいいち先生独特の“笑える日常”を京都アニメーションの手によって見事に映像化した作品です。女子大生たちの日常を舞台にしながら、そこに潜む非日常な出来事をユーモアたっぷりに描く様子は、日常コメディの集大成とも言えるでしょう。極端にデフォルメされたギャグからクスっとくる小ネタまで、あらゆる種類の笑いが詰め込まれていますが、不思議とほのぼのとした温かさや青春のキラキラ感も同居しており、見終わった後には元気をもらえる作品です。
特に、南雲・にーくら・わこの掛け合いが生み出すゆるい笑いのテンポ感や、“街そのもの”がキャラクターのように躍動する多層的な構造、そして京アニの高品質なアニメーションと演出が融合した映像体験は、『日常』ともまた違った新感覚の笑いを届けてくれます。シュールだけど共感できる世界観に引き込まれ、気づけばCITYの住人たちのファンになっていることでしょう。
現在放送中の本作は、各話で毎回何かしらの事件(?)が起こりつつも基本は明るく楽しい雰囲気で進むため、気軽に楽しめて日々の癒しにもなるはずです。興味を持った方はぜひ実際に視聴して、その魅力を肌で感じてみてください。「楽しい」があいことばのこの作品は、観る者の日常にちょっとした面白さと発見をもたらしてくれる“魔法”のようなアニメです。新しい作品との出会いを求めているあなたも、きっと『CITY THE ANIMATION』で笑顔になれることでしょう。ぜひCITYの世界へ足を踏み入れて、その愉快な住人たちとのひとときを存分に楽しんでください!