初代ガンダムが放送されてから40年以上の長きにわたって国民に支持され続けているガンダムシリーズ、今年も劇場版作品として『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』やテレビアニメーションとして『機動戦士ガンダム 水星の魔女』など数多くのラインナップの映像作品が制作されています。最近になってガンダムシリーズに興味を持ち始めたという読者の方も多いのではないでしょうか?そこで今回は日本のアニメ作品を代表する名作中の名作、ガンダムシリーズの魅力と、本作がどうしてここまで多くのファンに愛され続けているのかという点について紹介していきたいと思います!ガンダムシリーズのそもそもの魅力を知ることで、今年放送される『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の魅力についても同時に知ることができますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
徹底してリアルな戦争を描く
まず「機動戦士ガンダムシリーズの最大な魅力は何ですか?」と聞かれた場合に真っ先に紹介しなければならない点は「ガンダムは普通のロボットもののアニメと異なり、圧倒的にリアルなロボット戦争ものを描いている」という点です。ガンダムシリーズの魅力といえばとりあえずはこの一点を抑えておきましょう。
善悪のない戦争
というのも、通常のロボットものアニメーションであれば定番なのが、悪の組織があって、その組織に主人公をはじめとする正義の味方が立ち向かっていくというのが王道の流れなのですが、ガンダムにはそもそも正義と悪がありません。というのも、ガンダム世界の争いは戦争なので、どちらか一方が悪いなんてことはそもそもないのです。この辺りの勧善懲悪なしの描写こそがガンダム作品の物語に深みをもたらしているのです。
人類のこれからを予言する
そして、ガンダムシリーズはシリーズを通して「宇宙世紀」と呼ばれる近未来の世界が描写されています。現代を風刺する描写だけでなく、現代社会がこのまま突き進めばどのような世界になるのか?というこれからの人類の未来についても真剣に我々に語りかけてくれる作品となっているのです。
SF設定がうまい!!
このようにガンダムシリーズは通常のロボットアニメとは異なり徹底したリアル描写で人気を集めました。また、リアルな戦闘描写や国家描写だけでなく、近未来の描写でも多くの注目を集め、ガンダムシリーズで登場したSF設定はのちの作品に多くの影響を残すこととなったのです。
ニュータイプ
特にガンダムシリーズのSF設定の中で圧倒的な評価を受けているのが「ニュータイプ」という設定です。地球の急激な環境悪化に伴い、人口の大半が宇宙へ移り住まなければならなくなってしまった世界で「ニュータイプ」と呼ばれる新人類を登場させたのが、ガンダムシリーズの工夫なのです。
ニュータイプが人類を支配する??
人類が宇宙に進出した世界の中で「人類が宇宙に進出した事によって、何らかの進化を遂げるのではないか?」という思想の元、宇宙に進出した人類が新たな感覚を有した、新人類である「ニュータイプ」という人々が登場し、人類を支配するようになるであろうというのがガンダムシリーズの今回にある思想なのです。
ミノフスキー粒子
また、ロボットアニメ最大の弱点である「なんで、ロボットで戦うの?」という疑問に対しても、ガンダムでは「ミノフスキー粒子」というSF設定で説明しているのです。
ミノフスキー粒子でMSの必要性を説明
ガンダムの世界では通信電波を妨害する「ミノフスキー粒子」というものが発見されており、遠距離からミサイルを使った戦闘ができなくなってしまったのです。そのため、宇宙空間でのロボットによる白兵戦へが主体の戦場となったのです。
リアルな設定とガンダム
このように、ガンダムシリーズは当時のロボットアニメでは信じられない程の複雑な設定を張り巡らせ、劇中のロボット同士の戦闘にリアリティーをもたらしているのです。敵も敵で戦争の相手ですから、絶対的な悪なわけでも無いですし、戦争に勝ったからといってハッピーエンドでは終わらないという、大人の味わいのあるロボットアニメーションであるといえます。
1980年代の社会を調べるとガンダムがより楽しくなる!!
ガンダムシリーズをより深く理解するためには、ガンダムシリーズがどのような社会状況の中で成り立った作品であるかを知る必要があります。ここからはそんなガンダムシリーズを創った時代ともいえる70年代後半から80年代初期の日本について紹介していきたいと思います。
戦争を知らない世代
1970年代後半は日本が戦争で負けてから30年以上が経った時代です。これまでは戦争を経験していた時代が、高度経済成長や東京オリンピックなどを担っていたのですが、その世代からバトンタッチして、戦争を知らない世代が若手として活躍をし出した時代なのです。
学生闘争と日米安保
当時の若者たちは日米同盟下の安全保障や当時の政権に対して強い反感を持っていました。そのため、学生であった若者を中心に反政府運動が活発化しており、学生闘争として政府への反発が起こったのです。この辺りの反政府の流れは、ガンダムシリーズの腐敗した地球連邦政府に対する宇宙移民者の反発と酷似していますよね。宇宙移民者の反乱も最後は鎮圧されてしまうのも、学生闘争と同じなのですから皮肉なものです。
「戦争とは何なのか?」距離を置いて考えた世代
このように70年代後半から80年代初期に活躍したクリエイターは、戦争というものを知らないからこそ、一歩引いて国について考え、積極的に行動を起こすことができた世代なのです。ガンダムの富野監督の他にも宮崎駿監督などもまさにちょうどこの世代なのですが、ジブリの宮崎作品もガンダムのような主張が描かれていることが多く、これらの主張はこの時代の文化人共通の主張だったと言えるでしょう。
そしてガンダムへ
このような、時代的な背景がありガンダムシリーズというはとにかく細かく戦争について描いているのです。戦争については知らないけれど、「だからこそ一歩引いて自分達の言いたいことを恐れないで言うんだ!」という70年代後半の若者たちの魂の叫びを描いた作品となっているのです。
ガンダムは画期的だった
これまでのロボットものの作品はあくまで子供に見せるものであって、若者の主張を描くためのものではないし、ましては子供の健全な成長を妨げるような、戦争のリアルな表現というのはタブーだったわけです。そのようなタブーがありながらも、恐れずに主張したいことを詰め込んだというがガンダムシリーズが当時画期的だった最大の要素であると言えます。
学生闘争では変えることのできなかった社会への絶望
そのようなことを考えると「なぜ、ガンダムシリーズにおいて敵方が悪く描かれないのか?」という疑問が解決しますね。というのも、ガンダムシリーズにおいて、半連邦である敵方の宇宙移民者たちには、監督や製作陣の人達が学生闘争を通して変えることのできなかったという負の感情が乗っかっているのです。製作陣にしてみれば失敗した過去の自分達なのですから、悪く書けるわけがないんですね。
当時の若者の怨念としてのシャア・アズナブル
特によく言われていることですが、敵キャラクターとして一番コアに描かれているシャア・アズナブルは監督の富野由悠季自身ですし、当時学生闘争で社会を変えることに失敗した若者自身の投影だったりするのです。だからこそ、当時のシャア・アズナブルというのは当時の若者たちに熱烈な支持を得ることができたのです。
ジオンではなく、連邦側の主人公
ように考えると、本作の主人公がジオン側でなく地球連邦政府側という設定がいかにおもしろいものか、お分かりいただけるでしょう。本来であれば半連邦側が敵の方が当時の世代にとっては良かったかもしれませんが、あえて自分達の投影である人たちが敵で、彼らが最後敗れてしまうという物語だからこそ、当時の若者たちにガンダムが刺さったのです。
現代社会とのリンク!!その後も続くジオンの怨念!!
それに、ジオン陣営はガンダムシリーズで滅びることがありません。何度連邦に倒されても、形を変えて何度でも敵として登場します。この辺りの戦いが終わることがないという描写も、現代社会をうまく反映しているといえるでしょう。
最新作でもぶれる頃のないガンダムの主張
このように、ガンダムシリーズでは現在ある大きな組織や当たり前とされる価値観に争うという意志に焦点を当てて制作をされています。そのため、一般のロボットと異なり随分と主張の多い作品となっているのです。このガンダムシリーズの特徴は今年放送される最新作でもブレることはないでしょう。
思想書としてのガンダム
そのため、ガンダムはただのアニメではなく、その時代ごとの若者の主張を描いた思想書のようなものなのです。今年のガンダムでは、どのような若者の主張が描かれているのか非常に楽しみですね。
まとめ
いかがでしたか?今回は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の発表を記念して、機動戦ガンダムシリーズの魅力について紹介していきました。日本ロボットアニメーションの金字塔とも呼ばれる本作が、いかにして若者に支持されているのかお分かりいただけたでしょうか?本作んも若者の主張のバイブスとしての役割は間違いなく、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に引き継がれると思われますので、必ず抑えておきましょう。