『Fate/Zero』は本編である『Fate/stay night』から10年前に行われた第四次聖杯戦争の様子が描かれている作品で、8人のマスターと8体のサーヴァントが登場しています。その中から今回はランサーのサーヴァントについて、その正体や作中での描かれ方などを紹介していきましょう。
時計台の魔術師ケイネスに召喚されたランサー
第四次聖杯戦争の様子が描かれている『Fate/Zero』は、衛宮士郎の育ての親である衛宮切嗣やセイバーといった『Fate/stay night』でお馴染みのキャラクターが登場しており、本編の前日譚が描かれています。今回はその中からマスターの一人であるケイネスが召喚したサーヴァント・ランサーについてピックアップしてみました。まずはどういったサーヴァントなのか、作中で描かれているランサーの言動や行動から簡単なプロフィールを紹介していきましょう。
騎士道に忠実な英霊の一人
『Fate/Zero』に登場するランサーは騎士道に忠実で、名誉ある戦いを重んじている英霊の一人となっており、セイバーのような騎士とは通じ合っている様子が描かれています。実際に生前においても騎士団の狩猟を敬愛して仕えていたとされており、忠義を重んじているキャラクターであることが窺えるでしょう。しかし自らの運命に抗うことができず、最後は嫉妬により主に殺されてしまったことから、聖杯戦争の戦いでは「主への忠節を果たして、勝利を捧げる名誉」という願いを実現するため、戦いに身を投じていくのでした。
マスターであるケイネスは信用していない?
過去のできごとから果たせなかった思いを実現しようと行動するランサーですが、マスターであるケイネスは彼を信用している素振りはありません。それはケイネスが召喚したランサーの生い立ちから最後までを理解しているためで、常に猜疑心を持って指示を送っています。また、ケイネスは別の聖遺物でライダーを召喚する予定でいましたが、盗まれてしまったことにより急遽ランサーを召喚することとなり、思わぬ誤算があるからこそ彼への信頼感を深めるに至っていないのかもしれません。
『Fate/Zero』のランサーの正体とは?
『Fate/Zero』に登場するランサーは、右目の下に泣き黒子がある美男子として描かれていますが、彼の正体はどういった人物なのでしょうか?忠義に重んじている騎士の中の騎士と言えるランサーですが、彼の真名や所有している宝具から、その正体について迫っていきましょう。
真名はケルト神話のディルムッド・オディナ
『Fate/Zero』に登場するランサーの真名はディルムッド・オディナとなっており、ケルト神話のフェニアンサイクルに表れるフィオナ騎士団随一の戦士です。「輝く貌」の異名を持つ戦士は二槍の使い手であり、右目の下にある黒子は異性を魅了する呪いを持っているとされています。その泣き黒子が災いして、殊勲の婚約者から主への裏切りを強制されており、悩みに悩んだ末、愛に応えることを選んだという逸話を持った英霊がディルムッド・オディナでした。
紅の長槍「破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)」
ランサーは所有している宝具は2つあり、紅の長槍「破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)」は、刃が触れた対象の魔力的効果を打ち消すという能力を持っています。そのため、セイバーのような魔力で編みこまれた防具や魔術、バーサーカーの魔術的強化といった武具から効力を奪うことができ、相手は物理的な防御力で対応させられる状態にすることが可能に。「宝具殺しの宝具」とも呼ばれますが、効果を発揮するのは「刃が触れている間だけ」となっているため、作中ではセイバーの「風王結界」が一時的にほどけるのみにとどまっています。
黄の短槍「必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)」
黄の短槍「必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)」は、相手に治癒不能の傷を負わせることが可能な宝具となっており、解除するためには槍そのものを破壊するかディルムッドを倒すほかありません。短期決戦よりも長期戦に向いている宝具で、相手がサーヴァント以外であれば、時間が経過していくにつれて出血死などの致命的効果に期待することができます。また、使い手であるディルムッドは「必滅の黄薔薇」で傷つくことはないため、非常に使い勝手のいい宝具と言えるでしょう。
『Fate/Zero』のランサーはマスターと上手くいっていない?
第四次聖杯戦争において、騎士道に忠実な有数な戦士として登場するランサーですが、『Fate/Zero』の物語ではマスターであるケイネスに献身的に仕えています。その他にも戦闘シーンではセイバーを好敵手と見定めて付け狙うなどの行動を見せていますが、マスターは正々堂々と戦うことを臨んではいませんでした。思惑がすれ違うことが多いランサーとケイネスの両者ですが、ここで2人の関係について深く迫っていきましょう。
信用を得られないものの献身的に使えるランサー
召喚者であるケイネスは最終的にランサーを召喚することになりますが、召喚したランサーの真名がディルムッド・オディナであることを知ると、彼の生前のできごとから信用することができませんでした。また、何よりもディルムッドの聖杯戦争に懸ける願いそのものを理解することができず、猜疑心を抱えたまま聖杯戦争に参加することになります。一方でランサーについても、サーヴァントとは「主に忠節を果たすための存在」としか認識していなかったため、ケイネスの内面を理解しようとしていなかった部分も問題点として挙げられるでしょう。
ケイネスの婚約者を魅了してしまう
『Fate/Zero』に登場するランサーのサーヴァント・ディルムッドは、その魔貌によってケイネスの婚約者であるソラウ・ヌァザレ・ソフィアリを魅了してしまうのでした。ディルムッドには己に科した聖約に「女性の命令を断らない」と言ものがあり、生前は主だった大英雄フィン・マックールの嫉妬で忙殺されてしまいます。第四次聖杯戦争でも同様に主の傍にいる女性を魅了してしまうことになりますが、『Fate/Zero』ではソラウはあえてディルムッドのチャームにかかっていたとされており、最後も「ランサーに愛させる」ことができなかった絶望が大きかったというように描かれています。
戦いにおけるランサーとは?
『Fate/Zero』では第四次聖杯戦争の様子が描かれており、各地でサーヴァント同士による争いが発生しているのも大きな魅力と言えるでしょう。そこで、ランサーは聖杯戦争の戦いの中でどのような立ち振る舞いや行動、戦闘を繰り広げてきたのでしょうか。騎士道に忠実な戦士であるランサーが、マスターであるケイネスとなめに勝利を捧げるという名誉を叶えるため、どのように行動していたのかを紹介していきましょう。
セイバーを好敵手として見定める
『Fate/Zero』の序盤で描かれているのがランサーとセイバーによる一騎打ちのシーンで、戦いは一時的に中断することになりますが、その渦中でランサーは彼女を好敵手として見定めることになります。剣を交える中で己の騎士道が燃え上がっていくようになり、セイバーもまたランサーと正々堂々決着を付けることを望むのでした。しかし、マスターであるケイネスも衛宮切嗣もサーヴァント同士による決着は臨んでおらず、2人の願いは悲しくも実現することはありませんでした。
最後は生前と同じ状況を体験してしまうことに
序盤での初戦闘から数日後、ランサーとセイバーは再び剣を交えることになりますが、2度目の戦闘ではマスター同士による戦いも裏で行われていました。サーヴァント同士の戦いは決着が着きませんでしたが、衛宮切嗣がケイネスの婚約者であるソラウを人質にとり、ケイネスに令呪を使用してランサーを自害させるよう脅迫します。騎士同士の戦いに水を差された2人は反発しますが、ケイネスは指示に従ってランサーを自害させます。ランサーは生前と同じく騎士として死ねなかったことを現世でも恨み、凄まじい表情と慟哭、呪詛を吐きながら消滅していくのでした。
まとめ
『Fate/Zero』に登場するランサーを紹介しましたが、物語序盤に登場してセイバーと刃を交えるシーンは迫力ある内容となっています。しかし最終的に騎士として退場することを叶えられず、戦いの中で死ぬことが許されなかった悲しいサーヴァントと言えるでしょう。『Fate/stay night』では、ランサーのクラスはマスターと思惑に恵まれないというジンクスが存在していますが、彼もまたその一人であるようです。