ラブコメのストーリーというと主人公の目の前にありとあらゆる都合の良い出来事がポンポン降ってきて、あれよあれよという間に主人公が数々の美少女に囲まれるという、いわゆるご都合主義な展開を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?あまりに都合の良すぎる展開が故に、ラブコメに抵抗感を持っている方も多いはずです。しかし、近年ではこのようなご都合主義だらけのラブコメは少なくなりました。ラブコメはラブコメでも設定の面白さを売りにした『五等分の花嫁』やストーリーに文学性を持たせた『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』などの一工夫を加えた作品が近年注目を集めています。そのようなストーリー重視のラブコメが重視される近年のラブコメ界の中で突如人気を集めた『女神寮の寮母くん。』がいかに異質な作品なのか。本作のストーリーを追いながら考えていきましょう!
目次
これぞベタ!主人公の語りからの導入!
本作では物語の滑り出しは全て主人公の孝士から簡潔に説明されています。近年ではストーリーの複雑化によって凝った冒頭を描くラブコメも増えていますが、そのような傾向の中でもわかりやすさを重視し、主人公に簡潔にまとめさせたというのが本作の冒頭での工夫なんですね。
究極の不幸から
更に主人公から語られる自身の過去というのがどうにも軽いんですね。父親に捨てられるというのは主人公からしてみれば非常に大きな事件だと思うのですが、本作では主人公が父親に捨てられたことを気にしているシーンは一切ありません。このあまりに軽すぎる冒頭というのも最近のストーリー第一主義的な作品傾向とは一線を画す作品であるというのがひと目でわかりますね。
テンポのいい導入
このように本作ではストーリーに重点が置かれておらずかなりテンポのいい作品となっています。本来のラブコメとしての役割である読者がいかにドキドキできるのかという点をストーリーではなく、画力で真正面から表現してやろうという作者の意思表示が1話目から出ているんですね。
脳みそを使わなくていい幸福
このように本作は基本的に脳死で楽しむことができるようになっています。最近の重厚なストーリーでの展開のラブコメを追うのに疲れてしまった読者だけでなく、さまざまな作品を楽しむ傍らに何か作品を追いたいという読者にもぴったりの作品となっているのです。
ご都合主義MAXの出会い!
このように本作ではストーリー性は潔く投げ捨てられていますので、ヒロイン達と主人公孝士の関係性はかなりのご都合主義的な展開によって進んでいきます。ご都合主義というと作品の批判に使われることもある単語ですが、本作ではそのようなご都合主義的な展開があることによって作品に登場するキャラクターの心理や見どころがわかりやすくなっており、ストーリーの考察ではなく作画を楽しむことに集中できるのです。
ヒロインとの関係性の提示
このように本作ではヒロインとの関係性やテーマが非常にわかりやすく提示されています。キャラクターの裏の心理や主人公自身が気づいていないような自身の考えに想いを巡らすというのもラブコメの楽しみではありますが、本作ではそれらの要素が少ないため、純粋にヒロインの作画を楽しむことに集中することができるのです。
作者の強い意志
このように本作では近年のようにストーリーなどで工夫をするのではなく、従来からのラブコメの手法であるベタなストーリー構成にして純粋な作画力で勝負するんだ!という作者の強い意志を感じますね。
とにかくテンポがいい!!
このように本作ではストーリーが軽快に作られているのでとにかくテンポよく読み進むことができます。重厚で心動かされるラブコメ作品ももちろん魅力的ですが本作のように消化のいいあっさりとしたラブコメというのも非常に味わいのある作品であると言えるのではないでしょうか。
これぞお約束!遅れて登場する幼馴染!
このように様々なラブコメ作品のテンプレを踏襲している本作ですが、唯一ヒロイン達の性格や設定に関しては近年のラブコメの流行に合わせている傾向があります。しかし、本作では流行の設定に沿ったヒロイン達だけではなく、昔ながらのラブコメのテンプレを背負った遅れて登場する幼馴染キャラクターも登場します。
ヒロイン像と昭和のお約束!
ヒロイン達が他の作品と異なり古くからのラブコメ作品のテンプレを踏襲しているというのはどういうことなのでしょうか?ここでは本作に登場する魅力的なキャラクター達の設定や孝士との絡みに注目して紹介していきたいと思います。
古き良きラブコメ文化
本作のストーリーは基本的に孝士とヒロイン達の間におこる数多くのトラブルを主人公孝士が自身のひたむきさによって切り抜けていくというストーリー展開になっています。中にはあまりにも問題が簡単に解決してしまうのでストーリーを楽しみに本作を手にとった方は肩透かしを喰らうこともあると思います。しかし、このようなあっさりとしたストーリー展開こそ昭和の時代からのラブコメのテンプレであり、お決まりなんです。
海外にはない!
このようなあっさりとしたストーリーが主体でページごとの絵を楽しむことが主体となっている作品ジャンルというのは、日本のラブコメ作品でしか見られず、まさに日本ならではのジャンルであると言えます。近年ではラブコメ作品はより複雑に感動する作品へと進化していますが、本来のあっさりとしたご都合主義モリモリのラブコメも日本ならではの作品として楽しんでいきたいですよね。
現代ならではの工夫も
ここでは本作は昔ながらのラブコメの特徴を継承した作品であると紹介しましたが、本作の魅力はただ昔ながらのラブコメの路線を継承しているということだけではありません。本作には現代のラブコメの傾向も色濃く反映されており、昔ながらのラブコメの面白さを残しつつも古さを感じさせないものとなっています。
ヒロイン主体のストーリー構成
本作は主人公孝士が主体となってストーリーを進行させることがなく、基本的に孝士を数多くのヒロインが振り回すことでストーリーが進行していきます。近年では『からかい上手の高木さん』や『五等分の花嫁』などヒロインがエネルギッシュにストーリーを進めていく作品の人気が高まっており、本作もそのような近年の傾向をうまく取り入れていることがわかりますね。
ラブコメは浮世絵だ!〜ラブコメの通な楽しみ方〜
このように本作は従来のラブコメの作風を大きく受け継いだ物語構成となっているため、最近の流行りの重厚な物語展開のラブコメをメインに楽しんでいた読者の方には少し物足りなく感じてしまうかもしれません。しかし、本作は楽しみ方を少し変えるだけ最近の流行りの重厚な物語展開のラブコメに劣らない面白さを楽しむことができる作品となっています。ここではそんな本作の楽しみ方を紹介していきます。
絵が主体の作品
まず、大前提として抑えないといけないのは本作が絵を主体として楽しむ作品であるということです。本作ではヒロインたちのこのようなシーンを描きたいという作者の意図があり、その意図にそってストーリーが組まれているのです。そのため、本作ではヒロインが最も可愛く見えるシーンがテンポよく登場する構成となっており、通常のラブコメがストーリー進行に使うコマをヒロインの可愛い絵を載せることに費やしているのです。
歌舞伎とラブコメ
このように、本作では可愛いヒロインの絵が大量に収録されており、ストーリーはそれらの可愛い絵を違和感なくつなげているだけのものに過ぎません。ちょうど歌舞伎が役者の最もかっこよく見えるシーンで止める(見栄を切る)ように、ヒロインの最も可愛く見える絵を描くことに重きを置いているのです。このように本作は歌舞伎のようにいかに美しい瞬間をつなげて作品構成をするのかというところに注目して作られているのですね。
ネタバレ注意!本作の注目エピソードを紹介!
さて、本作の傾向を紹介した上で、ここからは本作に描かれるエピソードのうちで特に注目なエピソードを紹介していきます。もちろんネタバレ注意なので、アニメ版をまっさらな状態で楽しみたいという方は飛ばしてくださいね。
孝士とあてなの関係
本作でも最も注目の関係といえばこの二人なのは間違いないのですが、長らくこの二人の関係は姉弟のようなものであると本人も含めて考えていました。しかし、物語の途中であてなは孝士に対する自身の気持ちが本当に弟に対する親しさなのか疑問を抱くようになります。本作ではこのようなあてなの心境の変化が細かく描かれているので、ぜひ注目してみてくださいね。
フレイとコスプレ
孝士がフレイと一緒にコスプレをするシーンも注目です。本作でも屈指の人気を誇るフレイのバリエーション豊かな服装を楽しむことができますし、孝士とフレイがさらに打ち解け、フレイの過去について少しだけ垣間見ることができるエピソードとなっています。特にフレイは自身の顔の半分を前髪で隠しているという点や、本名が未だに明らかになっていない点など、明らかに意図的に隠しているものがあるキャラクターであるのでフレイのエピソードは要注意です。
セレネとのまさかのファーストキス!?
孝士が初めてのキスを寝ぼけているうちにセレネに奪われてしまうシーンも注目です。このエピソードはセレネのほぼ初登場のエピソードですがわずか1話でセレネというキャラクターを理解することができるエピソードとなっていますので、作り手の工夫が非常に感じられるシーンとなっています。
まとめ
いかがでしたか?今回は本作の特徴やストーリー展開について詳しく解説していきました。本作のストーリー展開は昔ながらのラブコメの特徴を継承しながらも最近の新しいラブコメの傾向をうまく取り入れた作品であるといえます。近年登場した数々の魅力的なラブコメ作品の中でも特に工夫が光る作品となっていますのでぜひ目を通して見てくださいね。