２０２２年４月から放送予定のアニメ、パリピ孔明は伝説の名軍師と呼ばれる諸葛亮孔明が、現代へと転移し、パリピなカルチャーに触れながら、もう一人の主人公である月見英子の世界的なシンガーソングライターになるという夢をかなえるために軍師として奮闘するという作品です。様々な計略を用いる軍師として知られる諸葛亮孔明ですが、それは創作である『三国志演義』のイメージが一般的に浸透しています。では、史実の諸葛亮孔明はどんな人物だったのかを紹介していきたいと思います。
目次
史実と三国志演義について
三国志の歴史は実際にあった出来事ですが、三国志演義は中国の明代に書かれた創作小説です。後漢末期から三国時代にかけての魏・呉・蜀の時代を元にし、劉備玄徳および諸葛亮孔明を主人公として描かれた小説で、基本的には人徳を持つ人たらしの劉備、超絶の智謀を持つ諸葛亮を軸に、敵陣営である魏の曹操が幹雄として描かれる物語です。その中では、創作ならではの要素がふんだんに取り入れられており、史実とは異なることも多いのです。
諸葛亮孔明の出身地・経歴について
出生地は定かではないものの、徐州琅邪郡陽都県で生活しており、幼少期に華北の戦乱を逃れるため、徐州から南の荊州へ、弟の諸葛均とともに移住。その際頼ったのが叔父の諸葛玄です。諸葛一族はなかなかスゴい一族で、兄の諸葛瑾は呉で孫権に重用され絶大な信頼を得て大将軍へと昇りつめ、同一族の諸葛誕は魏で、征夷大将軍に取り立てられるなど、三国でその名を大いに轟かせたぶっちぎりのエリート一族です。叔父の諸葛玄も豫章太守という役職に任命されています。
荊州にて学問を修める諸葛亮
荊州での生活が安定した後、諸葛亮は弟の諸葛均とともに学問を修める生活を送ります。諸葛亮はそこで、名士と呼ばれる知識人層のグループへと入ります。ただ諸葛亮は実践的な学問を重視しており、そこで取り扱う学問を真面目に取り扱ってはいなかったようです。自信過剰な一面もあり、自身を伝説の宰相、管仲や伝説の武将、楽毅に比肩するものと言っていましたが、それらを信じてくれるのは親友の崔州平や徐庶くらいのものでした。
孔明の嫁取り
この時期には結婚もしています。相手は当時の名士であった黄承彦の娘で「黄夫人」と呼ばれていた女性です。三国志演義では黄月英という名前で登場します。黄承彦は諸葛亮が嫁を探していると聞きつけます。黄承彦の娘は色黒の赤毛で、周囲からは醜女と言われていました。しかし、非常に才能に溢れる女性だったようで、その才覚は君に釣り合うと言われ、諸葛亮は黄夫人を娶ります。このことで「孔明の嫁選びを真似てはいけない」と囃したてられ、醜女を嫁に選ぶことを「孔明の嫁取り」と言うようになります。
諸葛亮孔明と三顧の礼について
劉備玄徳は諸葛亮孔明の元に３度赴き、その結果として諸葛亮は劉備の軍師として仕えることになります。それらのエピソードは劉備の人徳と諸葛亮の慧眼を示すエピソードとして語られることも多いですが、実際には大きな損得勘定があったのだろうと言われています。まず、諸葛亮が超絶の智謀を持っていたのは確かですが、清廉潔白というわけではありません。実際に劉備は諸葛亮の友である徐庶から、「あいつはひねくれものだから、劉備が直接行かないと話してくれないよ」と言ったことから、自ら足を運んでいます。
三顧の礼の裏のおはなし
この三顧の礼のエピソードですが、諸葛亮には彼自身の思惑がありました。そもそも、諸葛亮は大正義の曹操の元に仕えるという選択肢も、兄である諸葛瑾のいる呉に仕えるという選択肢もあったハズですが、彼はそれをせず、あえてわけのわからない弱小勢力の劉備に仕えることを決めます。魏には元来優秀な人物、同族である諸葛誕もいましたし、呉には兄の諸葛瑾がいました。これでは自分の才能が埋もれてしまう、自分の才能を活かすには新興勢力で大きな辣腕をふるうことが出来る劉備の元に仕えたいと思ったのだろうと言われています。諸葛亮は大きな野心と鶏口牛後の精神を持った反骨精神たっぷりの天才だったのです。あと、要求を断って折れるという流れは、名士が勢力入りする際に必要な儀式的な意味合いも強く、別に諸葛亮だけが特別というわけでもなかったようです。
三国リベンジャーズ
劉備はいろいろあって高い名声を持ち、自身の勢力を持ちますが、彼らはいわば東京リベンジャーズに出てくるカリスマヤンキーたちで、諸葛亮ら名士たちは進学校のエリート。普通なら決して交わらない連中です。しかし、国を運営するうえでエリートら名士たちを仲間にすることは、劉備にとって必ず必要なことでした。名士らの力なくして国を運営することなど不可能だったのです。そこで諸葛亮は、弱小勢力の劉備のブレーンとして働き、一大国家を築き上げることになるのです。東京リベンジャーズでは主人公らのヤンキー集団が、将来的には裏社会を牛耳る犯罪集団となりますが、ただのヤンキー集団に過ぎないヤンキーたちが何でそんな勢力になったのか。それは、稀咲鉄太という超絶エリートがブレーンにいたからです。史実の孔明は精霊潔白で達観した天才というよりは、稀咲鉄太のように野心を持った天才という方が適切かもしれません。
諸葛亮孔明と天下三分の計
諸葛亮が劉備に提案したとされる『天下三分の計』は、立地的に超便利かつ奪われたら致命傷となる荊州の地を、政治面で軟弱な劉表から奪い、肥沃で防備にも向く西方面の益州を支配することでした。北方面には大正義の曹操軍、東には第二勢力の孫権軍。この勢力に対抗するためには、荊州・益州を支配して孫権と同名を結ぶことが重要になる。つまり、大正義曹操軍は強くてまだ勝てないので、荊州・益州を確保して大勢力の三つ目になってから曹操軍に対抗するという策でした。しかし、劉備はこれを実行しませんでした。劉表は政治面では無能で、国を守れないのですが、劉備は劉表に取り立ててもらった恩があったためです。ただ、劉備はやれるものならやりかったけど、状況的に無理だったからやらなかったという説もあります。どうにしろこれが後に大ピンチを招き長坂の戦いにつながっていきます。
長坂の戦い～赤壁の戦い
三国志演義で有名な戦いである長坂の戦いは、荊州を曹操に抑えられてしまったがために孤立し、何とかして落ち延びる必要がありました。張飛や趙雲らの活躍で、何とか呉へ落延びた後、劉備たちは孫権と同盟を結び、かの有名な赤壁の戦いへと繋がります。そんな折、諸葛亮先生はどんな活躍をしたかというと軍事面では殆ど関わっていません。諸葛亮が活躍するのは、むしろそのあと赤壁の戦いの後に南方面を統治し、後に益州を統治する際にその手腕を遺憾なく発揮します。むしろ諸葛亮の伝説的な活躍は、劉備の没後。樊城の戦いから夷陵の戦いの後です。
樊城の戦い～夷陵の戦い
劉備たちは荊州の一部と益州を統治し、ここから天下三分の計は実現するかに思われましたが、そうはなりませんでした。樊城の戦いにて関羽が破れ、荊州を奪われてしまったからです。関羽は特に名士たちとの信頼関係を築くことが出来ず、孫権との同盟も亀裂が入っていました。その結果、関羽は破れ処刑され、関羽の弔いと立地的に重要な地を奪い返すために始まった夷陵の戦いでは、準備段階で張飛が部下に殺され、劉備軍は陸遜の火計により、国が滅びかねないくらいの歴史的大敗北をしてしまいます。この後、劉備は諸葛亮と李厳に託し病没します。実は、諸葛亮が本格的に軍を動かすのは、この頃からでそれまでは殆ど軍事に関わっていませんでした。
蜀漢の立て直しを図る諸葛亮孔明
夷陵の戦いで国家として滅びてもおかしくないほどの致命傷を負った後、諸葛亮は国の立て直しに尽力します。普通なら国が滅びてもおかしくない中で、諸葛亮は伝説的な手腕を発揮し、呉との関係修復、益州南部の平定、財政の立て直しをびっくりするほどのスピードで実現し、国を再生させます。夷陵の戦いの絶望的な状況から、短期間で国を立て直し、北伐まで行ったその手腕こそが諸葛亮を伝説的な存在にしているのだと思います。
北伐～五丈原の戦いにて病没
その後、国内を安定させた諸葛亮は五度の北伐を行います。そこでの有名なエピソードには泣いて馬謖を切るという悲しいエピソードもあります。しかし、５度目の北伐中、五丈原にて病に倒れそのまま病没。享年５４歳でした。
【パリピ孔明】史実の諸葛亮孔明まとめ
パリピ孔明に登場する諸葛亮孔明の、史実での活躍をまとめてみました！実際には諸葛亮孔明という人物が天才軍師として描かれるのは、三国志演義での印象が非常に強く、むしろ大きく活躍するのは劉備の没後というのは、割と意外に思う人が多いかもしれません。パリピ孔明での孔明は三国志演義の孔明に近いです。孔明が現代にいたらというコンセプトの作品ですが、史実や逸話を知るとより楽しめると思います！
