劇場版アニメーションとして日本史上最大のヒットを記録したアニメ『鬼滅の刃』や、現在でも世界中で根強い人気を誇る『ポケットモンスターシリーズ』、妖怪メダルの普及とともに爆発的なヒットを記録した『妖怪ウォッチ』など、 現在日本には数多くの「モンスターを題材としたアニメ作品」が描かれています。これらのキャラクターたちをひとくくりで「モンスター」と表現することに今違和感を覚えた読者の方も多いかと思いますが、このように人間ではないキャラクターたちは海外では一般的に「モンスター」と表現され詳しく分類される事はありません。そのことを踏まえると、日本のフィクション作品の中では「どうしてここまで多様なモンスターの分類が存在するのであろうか？」と思われた方も多いのではないでしょうか？特に本作『あやかしトライアングル』では、あやかしと呼ばれるキャラクターたちの他にも式神や鬼など、とにかく数多くのジャンルのモンスターが登場しますね。そこで今回は「なぜ日本のフィクション作品では本作のようにここまで多様なモンスターたちが描かれているのか？」という問題について詳しく紹介をしていきたいと思います。本作『あやかしトライアングル』に登場するあやかしたちについてさらに詳しく知りたいというファンの方はぜひともチェックしてみてくださいね！
日本にしかない「モンスター観」
「なぜ本作を始めとするフィクション作品に登場するモンスターたちがここまで詳しく分類されているのか？」という謎ですが、 実は本作のように登場するモンスターたちに数々の分類を当てられている作品はほとんどが日本初のものである場合が多いのです。
「あやかし」「妖怪」「式神」などなど、、
本作に登場するように、日本では人間以外の意思を持ったまか不思議な生物を表す言葉が数多く存在します。本作の題名にもなっている「あやかし」や「妖怪」「式神」などなど数々の呼び方が存在するのです。 フィクション以外の世界でも、日常のちょっとした不思議なことをお化けのせいにしたり、何か願い事をしたいときには神社に行ったりと私たちの生活の中で数多くのシーンにこれらのモンスターが登場しますよね。
なぜここまで多いのか？
なぜ、日本でここまでモンスターの分類が多くなってしまったのでしょうか？信仰と深く絡んでいる神様は「神様」と表記することに何ら違和感は無いものの、あやかしや妖怪、式神については一見全く同じものに見えてしまいますよね。実際に数多くの作品でもほとんど同じような扱いを受けており、具体的な違いが分からなくなってしまっています。
日本にしかない考え方が！？
実はこれらの謎は、そもそも日本に根付いている独特な「モンスター観」について紐とくことで解けてきます。ここからは日本独自に発達した日本人ならではのモンスター観について詳しく紹介していきたいと思います。
日本の「モンスター観」に迫る！！
そもそも日本に根付いている「モンスター観」とは何でしょうか？その謎を解き明かすためには、日本民族の信仰形態と文化について紹介をしなければなりません。ここからは日本の文化の特異点を紹介しながら、これらの文化がどのように日本のモンスター観へとつながっているのかという点について解説をしていきたいと思います。
神道の不思議
特に日本人の習慣と深く結びついている「神道」が我々のモンスター観に大きな影響を与えていると考えられます。神道というのは、皆さんが宗教と聞いて想像するキリスト教やイスラム教などの宗教と異なり、数多くの神様が登場する宗教です。そのため中には人間と同じように困ったことをしてしまう神様がいたり、人間にとって迷惑な存在の神様もいたりします。日本人は長らくこのようなバラエティー豊かな神様たちを信仰しながら文化を培ってきたのです。
「アニミズム」と古代日本
このように日常の至るところに神様が存在し、決して完全な存在ではない神様を信仰する信仰形態を「アニミズム」というのですが、日本人はそもそも様々なところに八百万の神々が存在し、それらの神々を祀ることで自然災害などの厄災から身を守っていきました。そのため日本人は「いたるところに人間とは異なる不思議な存在が存在する」という状態に慣れているのです。
大陸の文化とごっちゃになった？？
このように「アニミズム」の考え方に古くから親しんできた日本人ですが、中国との交易が盛んになると次第に中国から様々な文化が伝来することとなります。代表的なものは仏教や儒教などが挙げられますが、これらの神道とは全く異なる文化が入ってくることによって、次第に神道は様々な考え方を受け入れて進歩していくこととなります。
「神仏習合」でもはや何でもありに
特に仏教は神道と密接に関わるようになり、神仏習合と呼ばれる現象が発生しました。仏教であっても親と出会っても関係なく信仰しようというこの考えは、神様の数が無限に存在しどのような存在であっても祀ることができる日本人だからこそ、仏教と神道という全く異なる2つの宗教をミックスして新しい宗教として世に生み出すことができたのです。
多様な日本の「モンスター達」
このように、従来は日本古来の神々しか存在しなかった「日本のモンスター」も、中国から伝来した「モンスターや逸話など」がミックスされていくようになりました。
輸入されたモンスターたち
このように日本のモンスターというのは実は日本ならではのものだけではなく、中国を通して輸入された数多くの国際色豊かなモンスターたちも含まれていたのです。
神道が全ての始まり
このようなこともあり、日本のモンスターには全くコンセプトが異なるものが多々登場するようになりました。このようなバラエティー豊かなモンスターたちを受け入れることができたのも、従来から日本人が神道というアニミズム的な宗教を信仰していたからであると言えるでしょう。
キャラものが発達する土壌が既にあった
信仰を通して様々な国のモンスターたちが信仰の一部として取り組まれたからこそ、日本には数多くのキャラクターに触れる機会が生まれたのです。この辺りのモンスターに対する考え方の土壌がやがて、日本の多種多様なキャラクターを生み出す「キャラもの」の土壌になったと考えられます。
日本のモンスター達を整理しよう！
このように、日本に多種多様な種類のモンスターたちが登場するのは、古来から存在した神々以外にも数多くのモンスターたちを輸入してきた過去があるからだということがわかりました。ここからは日本に取り込まれた様々なモンスターたちをさらに詳しく紹介していきたいと思います。
あやかし・妖怪
本作にメインで登場するあやかしは一般的に妖怪とも呼ばれています。彼らは明確に分類があるわけではなく、人間に害を加える存在としてカテゴライズされているだけです。
なぜ『あやかしトライアングル』？？
そのため鬼や神様であっても人間を惑わすものであればあやかしとして分類されるのです。本作では数多くのモンスターたちが登場する以上、それらの分類のキャラクターたちを一括りに「あやかし」と表現しているのです。
鬼
鬼はもともと中国からもたらされた概念で、西洋でいうとゾンビのようなイメージの存在です。本来は既に死んでしまった亡骸などが動き出し人に危害を加えるものなのですが、日本では次第にその概念が揺らいでいき、人間が凶暴になりすぎてしまった状態や、人間の能力からかけ離れた力を持つ存在にも「鬼」という言葉を当てはめるようになりました。
神様
神は日本より古来から存在する概念で、日本人にとって最も親しみやすいモンスターであると言えるでしょう。一般的に神様というと世界を想像した創造主や人間を作り上げた存在のように語られることも多いですが、それは西洋の概念で、本来日本の神様は自然界に存在し人間を凌駕する力を持った不思議な存在として信仰を集めていました。
日本の神様はどちらかと言うとモンスター？？
そのため、神様というのは人間にとって良い事や悪いことをする制御不能の存在なのです。まさにモンスターという言葉を形容するにふさわしい存在であると言えるでしょう。
式神
式神も中国から入ってきた概念で、人間が自分の利益のために活用する使役神のことです。鬼や神様とは違って、精霊のようなイメージのモンスターですね。陰陽師が悪霊退治するときに折り紙に式神を憑依させ活用するシーンはあまりにも有名です。
海外だと一括りに「モンスター」
このように、日本ではモンスターと一言で言っても様々な種類のモンスターが登場します。一方で、海外ではモンスターのことをここまで詳しく分類はしておらず、あくまで「モンスター」として描がかれています。日本のように多神教の土壌がないので、そもそも神様がモンスターの一種であるという概念も理解ができないのです。
まとめ
いかがでしたか？今回は本作『あやかしトライアングル』を通して、日本の不思議なモンスター観について紹介をしていきました。ここまで多種多様なモンスターたちが描かれてきたのも、日本人が独自に培った独特のモンスター観が影響していると考えられます。本作を視聴しながらぜひとも登場する多種多様なモンスターたちに注目をしてみてくださいね。
